《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》看破

「……………時間を…る……?」

レンタの口から放たれた言葉に、コウジは一瞬呆けてしまった。

だが、そんな様子を気にも留めず、レンタは続けた。

「そう。でも、結構制限のある才華だよ」

「…制限?」

「うん。鵞糜がびさんの才華は、の時間の流れに対して“緩める”“止める”“巻き戻す”のいずれかが出來るんだけど、それが出來るのは『刀で貫いた』だけなんだ」

「いや、待ってくれよ。鵞糜はさっき、ペンライトを猛スピードで飛ばしてたんだ。今言った能力じゃ、そんなこと出來ないんじゃないのか?」

「ああ。それかい?それはね、時間を“止めた”んだよ」

「え?でも、時間を止めただけじゃ、あんなきしないだろ」

「良いかい?時間には二種類あるんだ。の形狀や狀態に関與する主観的時間と、の運や位置に関與する客観的時間の二種類がね。鵞糜さんはその二種類も使い分けられるから、計6通りの使い方があるんだ」

例えよう。木から林檎が落ちたとする。

その林檎が落下途中でサナエの刀に貫かれ、時を止められたとしよう。

主観的時間を止めれば、林檎はそのまま落下を続け、地面とぶつかる。

だが、通常の林檎と大きく異なる點は、どれ程強い力を與えても、その林檎には全くの影響が無いという點だ。

ロードローラーで轢こうと、濃硫酸を垂らそうと、核分裂爐に落とそうと、サナエ自が能力を解かない限り絶対に傷一つつかず、反応一つ起こさない。

微粒子一つとて、取り出すことはできない。

これが主観的時間の停止による効果である。

次いで、客観的時間を止めたとしよう。

客観的時間を止めると、林檎はその座標からかなくなる。

だがそれは、単にかなくなるだけでは無い。

我々から見た林檎は───────1400km/hで西へと移するのだ。

の客観的時間が止まれば、座標が固定される。運する時間すらも止まるためだ。

それはつまり、“地球の自転からも置いていかれる”ということになる。

観測者である我々がき、林檎は宇宙空間の座標レベルで固定される。

そうすると、我々が林檎を置き去りにしているにも関わらず、あたかも林檎が高速で移しているように見えるのだ。

「時間作か……」

苛立たしげに、マサタはサナエを睨む。

「左様だ。我は此この才華を〈司刻刀ジゴクトウ〉と呼稱している」

「じゃあ、俺も教えてやるよ。俺の超能力。てめえらの言い方なら『サイカ』っつーのか?俺の能力は─────」

「“次元転移”……だな?」

サナエの聲が、マサタの言葉を殺した。

「…なんだと?」

マサタはその顔面を嘆のに染めている。

「貴様の才華は次元を変える能力だ。違うか?」

「てめえまさか…見抜いたのか……!?」

「彼程あれほど見せ付けられれば、厭いやでも察する」

「ははっ。その通りだよ。俺の能力は次元を変えることが出來る」

マサタは乾いた笑みを浮かべながら肩を竦めた。

「………なるほどね」

レンタは得心がいったように頷いていた。

レンタ、コウジ、ヒカリの3名は、近くのアトラクションのレールの上からサナエとマサタの行く末を見守っていた。

「どういうこと?次元が変わると何が起こるの?」

理解の追いつかぬヒカリとコウジは、未だに頭を捻っていた。

「────────ミンコフスキー時空って知ってるかな?」

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