《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》逆鱗

マサタはその手に握られた薙刀で、サナエの攻撃を弾く。刀を弾かれたサナエの腕は上方へ持ち上がり、両手足が長方形を作るように大きく広がる。

そしてマサタは再びんだ。

「〈境界超越Manifold Breaker〉!」

ぶと、広がったサナエの四肢を貫くように3次元が作られる。サナエの両手足は完全にホールドされ、マサタが能力を解除するか、サナエの四肢が切斷されない限り、きは取れない。

このままでは、サナエは簡単に殺されてしまう。

しかし。マサタはとどめを刺さなかった。

代わりに、ゆっくりと歩み寄ると、その倉を摑み上げて恫喝どうかつした。

「てめぇ!俺の剣が何だってェ!?」

眉間にしわを寄せ、聲を荒げる。

「てめぇがどんだけ偉いのか知らねえが、俺の剣を貶す奴は絶対に許さねえ」

そう言うと、マサタはサナエを毆った。一発一発に憤慨と憎悪を込めて。

頬に、腹に、顎に。強烈な衝撃は、しずつ彼を壊していく。

だが、強がっているのか、はたまた彼の攻撃に威力が無いのか。サナエは顔を上げると、侮蔑するように嘲笑して見せた。

そして言った。

「敵が無抵抗な狀態で希有けうにして勝つなど……己が無力さを告示こくじ為する様なだ。罵詈雑言ばりぞうごんを浴びるのも道理だ」

それを聞いたマサタは、先よりも力を加え、より頻繁にサナエを毆った。

「くそっ!くそっ!バカにしやがってェ!このクソアマがァ!」

すると突然、マサタは毆ろうと振り上げていた手を止めた。

そしてそのまま、サナエに背を向ける。

それは単なる戦闘放棄ではない。いや、ある意味『戦闘』を『放棄』した。

彼はそのまま、地に転がった薙刀を拾う。その鋒をサナエの元に突き立てる。

「殺す。てめぇは生かしてはおけない。てめぇみてぇな奴が、不幸な奴を生むんだよ。死ね」

その言葉の不思議な圧力に、誰もがけずにいた。

しかし、コウジはその沈黙の中で、どこか違和を覚えていた。

単純な言葉にするのは難しいが、とにかく何かがおかしい。

彼の考えが読めない。しかしそれ以上に、行があまりに非合理的に過ぎるような気がするのだ。

だが、そう考えている間にマサタは今にもサナエの首を斬り落とそうとしている。

首元に突き付けられた刃が高く上がる。

それは「もうすぐサナエは死ぬ」という未來を示唆している。

が。刃がを切斷することはなかった。

代わりに、金屬が金屬を弾く甲高い音が響いた。

そしてそれ以上に大きな…………銃聲。

「……………は?」

マサタは反的に外力の作用した方向を見ていた。

だが、それはマサタだけではない。その場にいる全員が銃聲のした方向を見ていた。振り返り、銃聲の方向を見ていた。

コウジはその銃聲を轟かせたのはヒカリであると推測していた。だが、ヒカリは発砲どころか銃をホルスターから抜いた形跡すら無かった。

代わりに、ヒカリは自の項に手を當てていた。

そして呟くように言った。

「遅いわよ。レナ」

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