《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》明答

教室の扉を開けると、視線が一斉に自分に向いた。

その視線は、すぐに黒板の方へと戻っていくが、戻らぬ視線が三つ。奴らだ。

こちらを見てニタニタと下卑た笑みを浮かべている。

…………また、今日もか。

人は、日頃から行っていることには慣れるものだ。

そうして環境に順応することで、ここまで人間は繁することができたのだ。

だがこれには慣れない。慣れてはならない。慣れさせてくれない。

奴らはマサタの反応を楽しむために、毎度異なる容で加してきた。

あるときは言葉で、あるときは道で、またあるときは無関係の他人を利用して。

その日は、放課後に掃除で使われたバケツの水を、頭からかけられた。

自分を見る誰もが、自分を蔑み、嗤笑した。

『普通』になれなかった人間は、他人から忌み嫌われ排除される。それがまさしく自分だ。

で毆ろうとするを、理で以て抑止する。

噛み締めた奧歯からは気味の悪い音がした。

そんな中、3人の中の1人が言った。

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「これででもキレーにしとけよ」

と言いながら、使い古されてボロボロになった雑巾をマサタへと投げつけた。

目を瞑り、顔を伏せ、飛來する雑巾に備えた。

だが、それが顔を濡らすことはなかった。

顔を上げると、目の前に大きな鏡ができていた。

マサタは、無意識に3次元空間でそれを防いでいたのだ。

そして3次元で防いだということは、投げつけられた雑巾は完璧な跳ね返りを起こすということ。

完全弾衝突を起こしたその雑巾は、投げた生徒の顔面に直撃した。

「……は?」

誰もがその狀況を飲み込めなかった。

マサタは鏡に映った自分の顔を見た。

けなく、慘めで、憐憫する気も失せるような姿をしていた。

反撃するのが怖くて、「反撃できない」という立場に甘んじている自分の顔は、醜いという言葉では形容できない。

このままで良いのか?

現狀を変えられないのではない、最初から変える気なんてなかった。

やれることは全部やったのか?

自分には変えられる力が最初からあった。なのに、守り方と逃げ方だけを模索していた。

「…………やってやる」

そう呟き、マサタはいた。

そう呟いた2分後には、3人の男子生徒は床に突っ伏していた。

雑巾を投げた生徒は、二度と他人様にを投げつけられないように両腕を。

便所で自分を踏みつけた生徒は、二度と他人様を踏み躙らないように両腳を。

そして、自分を罵り続けた生徒は、二度と他人様をその舌と言葉で傷つけないように首を、それぞれ刎ね飛ばした。

今のマサタの心の中には、不安も後悔も無い。

そこにあったのは、ただただ莫大な責任だった。

これだけの力を自分だけの為に使ってはいけない。

この能力を使って、世界中で自分と同じ境遇にある人間を救う。

それが今は大罪であっても、自分のような人間を生まない為なら仕方のないことだ。

そう腹を括った。

マイノリティーが認められない社會を解し、マイノリティーを容認できる社會を再構築しなくてはならない。

そのためには…………。

「─────────今のマジョリティーを全員殺さないと…」

特定のコンテンツが悪であると子供に教育する親がいるなら、その親とそんな教育をけた子供を一人殘らず殺せばいい。

そうすれば、もうこの世から差別やいじめは消えるのではないのだろうか。

自分一人の勝手な価値観で他人を誹謗するような人間だ。いない方が世の中のためだろう。

これから先の世代を生きる人々のためなら、犠牲は必ず付きまとう事だろう。

倫理観や道徳心はいらない。

なぜなら、奴らに道徳心がないから。

正義はいらない。

なぜなら、奴らが悪で自分こそが正義だから。

マサタは、責任と覚悟を背負った。

だがその責任は、今のマサタにはあまりにも重かった。

だからマサタは、我慢と過去を捨てた。

軽になった今のなら、空も飛べそうだった。

マサタは世界を変えるために、教室を後にした。

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