《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》赴援
「レンタ!」
駆けつけた學園長室では、既に那原マサタとレンタが睨み合っていた。
薙刀を強く握るマサタと、大鎌を擔ぐレンタ。
そしてもう一人。盡ハナも、そこで戦斧を片手に立っていた。
部屋には2人のマサタの亡骸が転がっている。
殘っている最後のマサタも、疲弊を呈しているように見えた。
「鵞糜さんを殺したのは……君だね?」
レンダがそう尋ねた。
普段とは打って変わって、強く重いその聲は、レンタの殺意が表面上のものではないことを表していた。
「だったら何なんだよ…?」
マサタが返す言葉からは、怯えはじられない。
だが、どこか焦りのようなものをじさせた。
「“だったら何”って……。だったら君を殺すのに、躊躇が要らなくなるんだよ…っ!!」
レンタがそうんだ瞬間、またしてもレンタの姿が消える。それと同時に、天井と床がお互いに引き合うように大きく盛り上がる。
だが、そんな変化に気がつく頃には、レンダはすでにマサタの頭上にいた。
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そして、その存在に気付くよりも先にマサタのは床へと叩きつけられる。
「がはぁ……っ!」
苦悶の聲がマサタのかられた。
だがコウジは気が付いた。よく見ると、レンタが現れた場所の天井と床が大きく凹んでいるのだ。
「な、なんだ……あの才華…?」
コウジが思わず聲をらした。すると、アテスター越しに、ヒカリが答えた。
「レンタの核者はエウクレイデス。才華名は〈不可視疾走〉よ」
「それって、どんな才華なんだ…?」
「その容は…………大雑把に説明すると、ほぼ瞬間移ね。自分のいる空間を、速の約97%の速度で移させられるのよ」
速の97%という速度で移すれば、生はもちろん、あらゆる質は核融合を起こし、この近隣一帯が焦土と化すだろう。
それでもそうならないのは、レンタの才華にはもっと細かなメカニズムがあるからだろう。
ともかく、人間が知覚するよりも早いスピードで運することができれば、そもそもマサタに防壁としての3次元を展開される恐れがない。
このままなら、簡単にマサタを殺せてしまうだろう。
だが、コウジが想像するよりもずっと、マサタの生命力は、戦闘能力は、生への執著は、強かった。
床に叩きつけられたマサタは、すぐに自分の足元に3次元の壁を作り、それを両足で蹴り抜いた。
當然、蹴る力の倍の力が両腳にかかるため、は地面スレスレで一気に水平移を行う。これによって、上方からのレンタの斬撃を防いだ。
そして同時に、移先にいるハナへと攻撃を仕掛ける。
しかし、ハナの目的はまさしくそれ。
大きく戦斧を振りかぶり、足元へと飛んできたマサタへと振り下ろす。
マサタはそれを、またも3次元の壁で防ぐ。
地面と3次元で自分のを挾むように、3次元を展開する。
こうすることで、ハナの戦斧は完全弾衝突を起こす。
ハナが苦悶に表を歪める………………はずだった。
「……………なにっ!?」
その景に、マサタは思わず嘆の息をらした。
ハナの戦斧は完全弾衝突を起こし、大きく上方へと跳ね返った。
だがここで重要になるのは、ハナとその戦斧の重心は、戦斧の先端付近に位置しているということである。
そして、が運を起こす際、軌道を描くのは他でもない重心である。
つまり、ハナの握っている戦斧が跳ね返るということは、戦斧に位置している重心位置軸として回転を起こすのだ。
一気にハナの頭上へと戦斧が跳ね上がる。
それに伴い、ハナのは後方宙返りの様に回転を起こす。
その際に、マサタが展開した3次元の壁を踏み臺にし、一気にの回転を加速させる。
そして回転運を起こすということは、その力は半徑の大きさと速度の二乗に比例する。
加速をさせるということは、回転運をえた攻撃において非常に重要な要素である。
ハナは、落下しながらを“く”の字に曲げ、が地面に対して垂直になる直前に反らせ、そしてそのを再び大きく“く”の字に曲げる。
これを行うことで、の回転速度は一気に上昇する。
そしてそのまま、地面付近にいるマサタの顔面を蹴り抜いた。
「ぐゎはぁっ!」
マサタは大きく後方へと吹き飛ぶ。
後方へと縦回転をたは、頭を下にして腹部から壁に衝突した。
逃れることのできない苦痛が、顔を、を、鳩尾を襲う。
吐しながら、背中から地面に落ちる。
呼吸が止まり、肋骨が不自然に軋む音が聞こえる。
だが、そんな音よりも、ずっとよく聞こえる音が一つ。
ハナの足音だ。
まずい。きが取れない。どうする…?
焦燥と共に必死で思考を巡らせる。この狀況を打破できる一計を案じなければならない。
だが、マサタが思うよりも、ハナの歩行速度は早かった。
自分の顔を、ハナが覗き込んできた。
その表はなく、一切のがない様に見えた。
しかし、無いのはではなく、である。
きっと彼なら、何の躊躇いもなく自分を殺すのだと、靜かに確信した。
ハナが大きく戦斧を振り上げる。
自分と同じ境遇の人間を救うはずが、単なる自己満足で終わってしまったと、言葉もなく嘆いた。
そんなマサタの心中を他所よそに、ハナは戦斧を一気に振り下ろした。
だが、その衝撃がマサタのを伝播することはなかった。
代わりに、神的な景が視界を奪った。
「〈等重変換Equal Dead-Weight〉!」
年が、両手から白と黒の炎を出しながら、立っていた。
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