《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》懇丹

コンコンコンと軽快な音が、三度連なる。

その後に、のある聲が響く。

「失禮します」

そう言って扉を開ける。

扉の向こうには小學生くらいの1人のと、長でスーツを著た。そして、無髭を生やした初老の男が立っていた。

「あなたが那原マサタ君ですね?」

スーツの、浜曷が言った。

「はい」

マサタはそう短く答えた。

ここは會議室。とは言うものの、ガラス片や飛沫。果はては切斷されたマサタの四肢などが飛び散っており、元來の見る影は無かった。

「それで……アニュッシュ學園に學したいと?」

「…………はい…」

マサタにとって、この返答は非常に難しいものだった。

それもそのはず。今まで散々學園に対して敵意を剝き出しにし、生徒を何人も傷つけたのだ。

それを今になって「學園にれてしい」など、勝手極まりない話である。

そんな返答を聞いた浜曷は、真っ直ぐにマサタの元へと向かった。

次第に詰まっていく理的な二人の距離は、マサタの心に存在している焦燥と不安を表す様だった。

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「な、なんでしょう…?」

思わずマサタはそう問いかけた。

その問いに対する浜曷の返答は、言葉ではなかった。

パシン、と、音が一つ響く。

何が起きたのか理解できず、目を白黒させる。

その途中で、ようやく自分の左頬の痛みに気がついた。

そう。浜曷はマサタの頬を平手打ち───ビンタしたのだ。

「ふざけるな」

「………えっ?」

「ふざけるな、失せろ」

その視線には、剝き出しの憎悪が込められていた。

「ちょっと、浜曷先生っ!?」

コウジが泡を食った様に言うが、浜曷は依然マサタを睨んでいる。

そのまま、浜曷は続ける。

「この學園には、才華の暴走によってまぬ形で他人を傷つけたという生徒もいる。いや、寧ろこの學園の生徒の大多數はそういった方だ」

コウジとヒカリの二人も例外ではない。無自覚的な才華の発によって他者に危害を加えてしまい、そこを學園に保護された。

だが、マサタは違う。

「そんな方々がいる場所に、貴様の様に好き好んで他人を痛ぶるような奴を放つわけにはいかない」

「で、でも…」

たじろぎながらもマサタは反駁しようとする、が。

「とにかく、私は貴様を認めない。分かったら失せろ」

きつく強い口調でそう言われ、何も言えなくなってしまう。

浜曷はマサタに背を向け、立ち去ろうとしていた。

そこへ、マサタは再びんだ。

「分かってます!」

そのびを聞いて、浜曷の足は止まった。

それを知ってか知らずか、マサタは続ける。

「でも!いや、だから!俺に罪を償う資格を!人を救う力を下さい!」

そうんで、90度の直角謝罪をして見せる。

それを見たコウジも、同じ姿勢をとった。

「俺からも、お願いします」

後ろ背のままで、浜曷は問いかけた。

「塚田君。貴方はなぜ、彼の味方をするのですか?」

その問いかけに、し戸う。だが、コウジは答えた。

「コイツは…悪いヤツじゃないと思うんです」

「………なぜです?」

「だって…他人を助けるために土下座できるヤツが、悪いヤツな訳ないじゃないですか」

「………………そうですか」

背を向けたまま、浜曷は靜かに呟いた。

そんな浜曷の肩を、初老の男、學園長である篠崎が叩いた。

「彼をれてやっても、いいんじゃないかい?」

「しかし…學園長……」

「見たところ彼は、反省しているように見えるがね」

「ですが……」

「贖罪の機會を奪うのは、たとえ神であっても許されない行いだよ。いくら彼を言及しても、彼に傷つけられた人の痛みが消えるわけじゃないだろう?なら、彼に正しく能力を行使できる狀況を與えるべきじゃないかい?」

そう言われ、不満げに食い下がる浜曷。

しの沈黙の後で、彼はその口を開いた。

「學園長がそう仰るのであれば、私にそれを卻下する権限はありません」

その言葉を聞き、マサタは顔を上げた。

その明るい面おもては、希に満ちたものだった。

浜曷は振り返り、ですが、と続けた。

「あなたを他の生徒と同様には扱えません。なくとも私は、あなたには特段厳しく接するつもりです。覚悟はいいですね」

「はいっ!」

そう答えるマサタの聲は、喜びを全く隠せていなかった。

その様は周囲に伝播し、コウジを筆頭に、その場にいる人間皆を笑顔にした。

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