《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》愚視

「それでは、教室に案します」

「あの、鵞糜さんは…?」

「鵞糜さんは現在、醫務室にて療養中です。意識も取り戻しましたが、暫くは安靜にするべきとの診斷結果でした」

「そうですか……」

マサタは心配そうに返した。

ホワイトルームでの生活を終えたマサタは、決闘の前にSSクラスの教室へ向かうことを許された。

というのも、決闘の対戦相手がマサタを教室へと呼び出したのだ。

あの後、記憶の処理を施され、そのままホワイトルームへと促されたのだった。

「これからあなたには、決闘の相手との顔合わせをしてもらいます」

「俺の決闘の相手って…誰ですか?」

「名前は、譬聆ひれいアツシ………あなたの不倶戴天の敵と呼べるでしょう」

そんな會話をしていると、教室の扉が見える。

それを開けた向こうでは、普段通りに學園生活をする生徒たちの姿があった。

「おお!マサタ!ホワイトルームから出たのか!?」

嬉しそうに手を振る黒髪の年は、その蒼紫の瞳でこちらを見ている。

「塚田先輩!お様で出られましたよ!」

『うわぁああ!』

そう言って二人はひしと抱き合う。

関係が完全に不明である。

「じゃあ、そろそろ決闘だね」

「準備はできてるの?」

赤い髪を後ろで括った年と、肩口で茶髪を切り揃えたが會話に混じる。

平佐名レンタと城嶺ヒカリである。

「そういや相手は?」

「えっと、『譬聆アツシ』さんでした」

瞬間。空気が凍る。

事態が飲み込めず、マサタは3人の顔を伺う。

だが三人とも俯き加減で、何も言わなかった。

しかしそれは、言う理由がなかったからかもしれない。

「俺が━━━━━どうかしたのかァ?」

左肩を叩かれながら、そう聲をかけられる。

振り返ると金髪の年が立っていた。

「あー。お前、那原か」

「すみません、どなたですか?」

「譬聆アツシ。おめぇの決闘相手だよ」

「えっ…………」

アツシは依然として、その青い眼でこちらを見ている。

「んだよ。鵞糜殺りかけたって聞いたのに、クソザコみてえな面してんな」

「…は?」

「聞いたぜ、おめぇイジめられてたんだろ(笑)?そりやそうだよな、オレがお前のクラスメイトならそうするわ(笑)」

半笑いでアツシはマサタを罵った。

「お、おい!譬聆!それはないだろ!」

たまらずコウジが諌めようとする。

「はァ?なんで俺が気悪いキモオタに気ィ使わなきゃいけねぇんだよ」

アツシは反省のを示さぬどころか、納得できない様子で反駁を始めた。

「人の趣味に口だ────」

「いいんです。塚田先輩」

言いかけたところで、マサタがコウジを制止した。

「良いわけあるか!マサタは悔しくねえのか!」

「良いんですよ…。だって、こんな偉そうなナルシストを、ボコボコにしてやれるって考えたら………………面白いじゃないですか」

見ると、マサタは楽しげに笑っていた。

否、楽しげと呼ぶにはその表は邪悪すぎた。

復讐の機を心待ちにするような、そんな逆儀に塗れたような顔をしていた。

「學園の許可の下で、才華を使って好き放題カス野郎をぶちのめせるんですよ。こんな最高なこと…………他にないでしょ?」

「勝てると思ってンなら、隨分とメデたい頭シてんだなぁ…」

マサタとアツシが挑発を重ねる。雙方の視線がぶつかり、火花が散る。

剣呑な雰囲気が場を満たしていく中で、その二人は全くじていなかった。

しかし、そんな空間は容易く雲散霧消した。

その沈黙を裂いたのは、人間では無かった。

天井に設えられたスピーカーから、チャイムが響いたのだ。

「まァ、俺に負けンのは當たり前だからよォ、慘めに負けて、Cクラスでまた雑巾代理でもしてろよ」

見下したアツシが吐く。

「テメェは帰りがけにボールペンと原稿用紙を大量に買え。負けた言い訳の原稿は長えに越したことはねえからな」

マサタは、自を侮辱するアツシに痺れを切らすでもなく、余裕そうに答えた。

決闘は明日。マサタは教室を立ち去った。

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