《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》晝餐

「なあ、譬聆って、どんなヤツなんだ?」

「あまり、良い噂は聞かないね」

晝休み。屋上で弁當を突きながら、コウジがマサタに問いかけた。

レンタとコウジとヒカリの三人は、決まって屋上で食事をとっている。

レンタはコンビニで購したサンドイッチを齧る。

カツサンドのサクサクとしたの音が、コウジの耳まで屆く。みずみずしいレタスの音も混じって、咀嚼音だけで空腹になりそうだ。

だが、コウジにも弁當がある。

寮室でヒカリが毎朝、弁當を作ってくれているのだ。

容は昨日の夕食の唐揚げ、だし巻き卵、プチトマト、ブロッコリー、そしてちくわである。

的には…どんな噂なんだ?」

ちくわを口に放り、コウジが問いかけた。

だが、コウジの意識は直ぐに、ちくわに持っていかれた。

そのちくわは、ただのちくわではなかった。

部分に、シソで巻かれたキュウリが詰められていたのだ。

噛み締めるほどに爽やかなシソの香りが鼻を抜ける。

その爽快は、キュウリの歯応えと相乗効果をなして、コウジの心と腹を満たしていく。

もう一つ、それをつまんで口へ運ぶ。

今度は、先ほどとはし異なる味だった。

爽やかで、し特徴的なその味の正は────梅だ。

ペースト狀にされた梅が、ちくわの下に潛んでいたのだ。

その爽やかな味は、口に殘った唐揚げのをリセットする。

そして、リセットされると言うことは、ゼロからもう一度唐揚げを味わえると言うことである。

そんな無限の循環を楽しんでいると、レンタが話を始めた。

「まず、この學園には、彼の支配下にある人がたくさんいるんだ」

「そうなのか」

「うん。彼ってああいう格でしょ?だから、人から恨みを買うんだよ。本人も無意識らしいけど。それで、怒った人たちが彼に決闘を挑んだり、闇討ちをしようとするんだけど、みんな負けちゃうんだ」

「そんなに強いのか?」

「まあ、學園で三番目に強いわけだからね」

それで、とレンタが続ける。

「彼は自分に歯向かった相手を徹底的に痛ぶって、罵って、自分の支配下に置くんだ。恐怖と苦痛で逆らえないようにしてるんだよ」

「なるほどな………」

「しかも彼、自分に楯突いた人をいたぶる時、自分で手を下さないんだ」

「どういうことだ?」

「楯突いた人と最も親しかった生徒にやらせるんだよ。そうすれば、二人まとめて支配できるからね」

「そんな……最低だな…」

「転前の學校でもそんなことをしていたらしいよ。まあ、所詮は噂だけどね。でも、信憑は決して薄くないね」

アツシのことを話していくたびに、コウジの中でのマサタへの不安は増していった。

「天のいじめっ子ってことね…」

呟くようにヒカリが言った。

「いいや、それとは違うかな。彼の行に適當な表現があるとしたら─────────────獨裁、かな」

ヒカリの言葉にレンタが返した。

確かに、話を聞く限りではそうだろう。

いじめとは、弱者の集団が自の優越や満足の為だけに他者を攻撃することである。つまり、複數の人間が個人をげることだ。

対してアツシのそれは、自に寇あだなす存在を返り討ちにした上で自分の支配下に置いている。それ即ち、個人の下もとに大量の人間が屈服させられているのだ。

本的なヒエラルキーの形が異なる。

畏怖の対象であるアツシに、逆らえる者はいないのだ。

それは、それだけアツシが強いからだ。

戦闘能力は學園で3番目、そして、支配力に関して言えば學園最強。

かなり手強いだろう。何よりも、負けた先が恐ろしい。

「マサタに………勝算はあるのか?」

不安が聲から滲んでいるのを、一杯気付かないふりをしながらレンタに問いかけた。

「どうだろう…。でも、那原くんの才華なら、勝ち目はゼロじゃないと思うよ」

「アイツ、大丈夫かな……」

コウジは心底心配そうに聲をらした。

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