《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》還収
「何でしょう…?」
「貴方の記憶を修正します」
「…な、なんですか……それ…?」
「貴方と鵞糜さんは、転する以前から流があったそうなので、その記憶を復元すべきかと」
「…………そうだったんですね……」
薄々と気付いていた。
いや、サナエと一戦をえたあの時、彼にぼんやりと言われただけで、マサタが思い出したわけではないのだが。
事実、彼の顔を見ても、彼の聲を聞いても、懐かしさも違和もなかった。
本當に、忘れさせられていたのだろう。
「記憶の復元って、どうやるんですか?」
「HUMMINGの才華で、復元が可能です。ですが、その際に復元した記憶を、再び験します」
「………………どういうことですか?」
「例えば、彼に毆られた記憶があれば、毆られた箇所が、毆られた通りに痛みます。我々は、貴方達が何をしてきたのかを全く把握していません。そして貴方自も、復元されるのがどんな記憶であるかを知りません。それでも、貴方は記憶の復元をみますか?」
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「そ、それは………」
マサタの返答は、で詰まった。
彼との記憶が、果たして自分にとってプラスに作用するのだろうか。
しかし、自分の知らない自分の記憶が存在するのも不愉快だ。
だが、あの日、彼が言ったことを信じるのなら、俺と彼は………………。
マサタは、サナエの口から放たれたあの言葉を信用していた。
「やはりお前は………×××だな」
「…………記憶を……戻したいです………」
「いいんですね?」
「………はい」
これから観る自分の記憶に、自分は平靜でいられるのだろうか。
それは自分自でも分からない。
何を観るのか知らないのだから當然だ。
だが、そう答えるしかなかった。
たとえどんな記憶が戻されたとしても、誰も恨まずにいる。
そう決めたのだった。
「では、學園長室へと向かいましょう」
「………………はい……」
その足取りは、軽やかとは程遠いものだった。
不安や恐怖がに纏わり付き、理的な質量を持ってのきを阻害するような、そんな覚だった。
ギギギと、悲鳴を上げながら扉が開く。
応接用の機とソファが綺麗に配置され、その向こうには木製の機とゆったりと座れそうなチェアが向かい合っていた。
ソファの上に、銀髪のが一人鎮座している。
部屋に存在する唯一の人間なので、自ずと視線は彼へと向かってしまう。
するとは浜曷の方へと駆け寄ってきた。
そして、そのまま浜曷に抱きついた。
「……おねーちゃん、あそぼ…!」
聖アニュッシュ學園での教育は、基本的に中學生以上を対象としている。
それは、才華を持つ者の多くが13〜18歳までにその能力を発現するからである。
だが、中には彼のような例外が存在する。
見るところ彼の齢は10歳と言ったところだろうか。
中學生の勉強をするには早すぎるように思える。
そんな彼に、浜曷が言った。
「仕事中にその呼び方はしないように言ったはずですよ」
「……ごめんなさい…」
「次から気をつけてくださいね、HUMMING」
浜曷は優しくその名を口にした。
HUMMING、彼は學園で唯一の記憶に関與する才華を持つ者である。
そして、彼の才華を用いて、失われたサナエとの記憶を取り戻す。
HUMMINGの才華は、マサタ本人が忘卻した記憶を復元することは出來ないが、HUMMING自が消した記憶ならば復元することが可能である。
マサタの中にあるサナエの記憶は、HUMMINGがサナエが転する際に彼に対して才華を発することにより、マサタの記憶から抹消されている狀態にある。
つまり、失われたサナエとの記憶を、HUMMINGは復元することができる。
「HUMMING、彼の記憶を復元して下さい」
「…………わかった……」
HUMMINGはしマサタの目を見つめてから、そう言って彼の元へと歩んでいった。
マサタの正面に立ったHUMMINGは小さな聲でこう言った。
「……………おてて…………出して………」
「お、おう。こうか?」
それを聞いたマサタは、両掌をHUMMINGへ向けた。
「うん…………ありがと…………」
HUMMINGはその手を摑み、力を込める。
だが、いが込める力は非常に弱かった。
「………じゃあ……いくよ…………」
「ああ、任せた」
二人でアイコンタクトを取った直後、HUMMINGが呟く。
「………開華……〈海馬牢籠recollection modificate〉……」
その言葉と共に、HUMMINGのアテスターが眩く輝き、同時に圧倒的な浮遊がマサタのを襲った。
続けてHUMMINGが言葉を続ける。
「………………recaptu.RE.call……」
瞬間、全をあらゆる覚が駆け巡った。
「…あ、あぁ……」
痛み、み、痺れ、暖かさ、冷たさ、目眩、らかさ、さ。
しかし、それだけではない。
あらゆるもまた、全を満たしていった。
悲壯、絶、喪失、劣等、不安、多幸、安心、優越、親近、達、期待。
それらの全ては、サナエとの記憶に由來するものだった。
サナエと共にいた時間を、一分一秒殘さず、全てを思い出していく。
「…俺は………アイツの……」
瞬間、一気に全から力が抜ける。
サナエとの記憶を全て復元し終え、殘ったのはHUMMINGの才華による強い倦怠。
だが、そんな狀態でありながら、マサタはそのと口から言葉を紡いだ。
「鵞糜サナエに……會わせてください…」
【1章完】脇役の公爵令嬢は回帰し、本物の悪女となり嗤い歩む【書籍化&コミカライズ】
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