「見て見て、あなた。私たちの子よ！」

「あぁ…お前に似てかわいいな」

「ふふ、でもこの目元なんてあなたによく似ているわ」

「これでレナもお姉ちゃんだな」

幸福を現化したような聲音が、その部屋に響いた。

それは、二人の會話ではない。

小さな軀から放たれる、産聲だ。

2002年、九月七日。

生まれたばかりのハナは、力いっぱいに自の生を証明していた。

ハナは、裕福な家庭で育った。

父は弁護士として功しており、彼への仕事の依頼は止まるところを知らない。

そして母は有名な生學者であり、斬新な視點から事へと切り込み、綴られる論文はその殆どが賞を賞しており、世界中に彼のファンがいた。

そんな二人の天才の間に、レナとハナは生まれた。

両親は、自の子供に深くを注いだ。

世の中に出ても恥をかかぬようにと、いころから英才教育を施した。

レナは両親から買い與えられた參考書をひたすらに読み込み、くして様々な知識をその頭に蓄えていった。

その恩恵を十分にけたのか、はたまた、天才の伝子の影響か、姉のレナは勉學においてその優れた才能を発揮した。

小中と、常にその績はトップ。

運は平凡な績だったが、両親にとっては我が子がテストで好績を修めることこそが、何よりも誇らしかった。

対して妹のハナは、勉強を得意としなかった。

というのも、両親が買いそろえた教材などには目もくれず、ひたすらに外で友人と遊んでいたからだ。

だが、両親は特に咎めもしなかった。それは、ハナがスポーツにおいて秀でた績だったからだ。

スポーツ大會などが催されれば、その表彰臺の頂上にはいつも満面の笑みを浮かべたハナが立っていた。

こうしてレナとハナは、それぞれ異なる分野においてその才能を発揮していた。

孤高の天才レナと、人厚いスポーツ萬能なハナは、近所ではちょっとした有名人だった。

そして、月日が流れ、レナが中學二年生に上がるころ。

──────ハナは、両親に厳しく叱責されていた。

育の授業にて、その肘を故障してしまったのだ。

「お前は勉強ができないんだから、スポーツもできないお前なんて誰も必要としないぞ」

「怪我なんてどうとでも防げたでしょう？どうしてこの子はこうも頭が悪いのかしら…」

「大、お前は昔っから勉強から逃げて、自分の好きな事ばかりして、恥ずかしくないのか」

「しはレナを見習ってほしいわ…」

呆れ返ったように叱責を続ける両親。

「…………はい、ごめんなさい…………」

それに対して、こう返す他なかった。

「またそう言って。ホントにわかってるの？」

「レナは頑張って勉強して中學験にも功してるのに、お前は運績だけでれただけなんだぞ」

「……ごめんなさい……………」

「全く、恥をかかされる父さんのにもなってくれよ」

「なんでレナはあんなに良く出來た子なのに、ハナは何もできないのかしら…」

心無い言葉は、ハナを衰弱させるのに十分すぎる毒を有していた。

両親はレナとハナに深いを注いで育てた。

ただそれは、二人の為ではなく、自分たちの面子や裁の為に他ならなかった。

レナは優秀に育った。

優秀な、二人の自慢のための道として、育った。

ハナは不出來だった。

両親は不出來なハナを憎んだ。

「自分たちの面汚しだ」と。