《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》

しばらくして、ハナも運を再開できる程度には回復した。

だがその頃のハナの運能力は、姉のレナにも劣っていた。

ハナは、人間としてのステータス全てにおいて、レナに追い越されてしまったのだ。

それからというもの、両親のハナに対する扱いも日を重ねるごとにぞんざいなものへと変わっていった。

「早く食べなさい。いつまでも私たちを待たせないで」

「…………はい…」

ある日の夕食。ハナ以外の家族は、すでに夕食を済ませている。

「食べ終わったら食も洗いなさい。全く、本當に鈍のろいんだから…」

「ごめんなさい…」

「謝るくらいなら早く食べて」

「…………………はい………」

母はきつくハナを睨んだ。

その視線をけながら、皿に盛りつけられた料理を黙々と胃袋へと押し込んでいく。

すると、レナが母に聲をかけた。

「お母さん。食洗い、私がやるよ」

「いいのよ、レナ。ハナが遅いのが悪いんだから」

「で、でも────」

「レナは頭が良いから『適材適所』って言葉、わかるでしょ?人には分相応ってものがあるのよ。低能な人は有能な人と同じことをさせてもらえないの。それと一緒で、有能な人間が無能な人間と足並みを揃える必要なんてないの。わかるわよね?」

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母は、淡々とレナへと話していく。だが、その言葉の一つ一つは全て、ハナへと向けられた侮辱だった。

「レナは優しいのね。でも大丈夫よ。さあ、部屋でお勉強しなさい。テストも近いでしょ?」

「う、うん………」

「ほら、ハナ。いつまでもお姉ちゃんに甘えてないで、しは自分のことくらい自分でやりなさい。レナは勉強で忙しいの。ハナみたいに暇じゃないの。早くして」

「……………はい…………」

機械的に返す返答と、繰り返す咀嚼運は瞬く間に夕食の味を劣化させていく。

「じゃあ……おやすみなさい…」

レナが勉強のために自室へ向かう。

リビングの扉を閉めるとき、ハナはレナと目が合った。

その憐みの視線は、深々とハナの抜いた。

否、きっと憐みなどという上等なものではない。憐みの皮を被ってはいたが、その本質は冒涜と侮辱に他ならない。

そんなおおよそ人としての尊厳を失ったような家庭ではあったが、ハナの人生全では希が無い訳ではなかった。

それは────────────學校である。

友人と他のない會話をする休み時間は、ハナにとって家庭での出來事を忘れられる唯一の時間だった。

その日の授業の話、擔任の教師や部活の顧問の愚癡、話題のファッションアイテム、新発売の菓子、人気の俳優、テレビドラマ。

話題は多岐に渡るが、そのいずれでも腹を抱えて大笑いできる位には楽しい時間を過ごしていた。

ある日の休み時間、ハナたちは仲の良い四人組でショッピングへ行くことが決定した。

ハナの家庭は裕福であるため、與えられる小遣いも決してなくなかった。

待ちに待った當日、四人で街を散策した。

い服を買い、街中で四人の寫真を撮り、見栄えの良い食べを買い、充実と呼ぶに相応しい時間を過ごした。

そして、四人で街中を歩いていた時だった。

「そこのキミ!ちょっといいかな?」

背後からそう聲を掛けられた。

ハナは目鼻立ちが整っており、スタイルも良いため、所謂ナンパをされることもなくなかった。

今回もその類だと思い、手短に斷ろうと振り返った時だった。

背後に立っていたのは、スーツ姿の若い男だった。

その両手はハナの方へと突き出されており、見ると名刺が握られていた。

「株式會社Read Me編集部の山本って言います。君すごくスタイルいいし、顔も整ってるから、良かったらウチでモデルとかやってみない?」

そう。スカウトだ。

このご時世に時代錯誤なことをしているなと思いつつも、その名刺を手に取った。

すると両脇から友人が顔をのぞかせた。

「ハナすごいじゃん!それめっちゃ有名な雑誌だよ!」

「そ、そうなの……?」

「うん!絶対けた方が良いって!」

その言葉に背を押されたハナは、そのまま事務所のモデルとして活を開始した。

整った目鼻立ちと抜群のスタイル、そして秀でた運神経とコミュニケーション能力は仕事に大いに役立ち、見る見るうちに仕事は増えていった。

両親に部活と噓をついて活をする日もあった。

最初は誰も気が付かないような小さな寫真しか載らなかったが、次第に寫真の大きさは大きくなっていき、表紙を飾ることも増えてきた。

ラジオ番組などのオファーも増え、その度にマネージャーと大喜びをした。

部活の時間だけでは足りなくなり、學校も次第に休むようになっていった。

撮影中は自分がまるで別人になったようで、日々のストレスを忘れられた。

このまま、この仕事で生きていくことも不可能ではないだろう。

そんな、新たな人生の航路を切り拓こうとしていた時だった。

いつものように撮影を終えたハナは、見慣れた我が家へと帰宅した。

「ただいまー」

玄関扉を開ける。

すると、目の前には、仁王立ちした父と、こちらを厳しく睨む母の姿があった。

「ハナ、これはなんだ…………?」

父は右手を突き出した。

その右手には雑誌が握られていた。

ハナが────────────────大々的に表紙を飾っている雑誌だった。

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