《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》魔手

「父さん…………?なんで………?」

驚いたハナの前に立ちはだかったのは、祥子だった。

「ハナに………何の用っスか……………?」

その膝は、よく見ると震えていた。

それでも祥子は、狀況が呑み込めないハナに代わって、父親との會話を図ったのだ。

「君は確か、椎名祥子さんだね?娘がお世話になったね。ご両親も心配しているだろうから、君はおうちに帰りなさい」

「自分の娘も心配しないクセに、人の子供の心配っスか?」

「そうだね。私は自分の娘も心配してやれなかった。だから、心をれ替え、ハナを迎えに來たのだよ」

「そんなに簡単に反省できんなら、何で今までちゃんとハナを見なかったんスか?」

喧嘩腰な口調で、祥子はハナの父に食いついた。

「ちょっと、祥子ちゃん!やめてよね!」

そんな祥子を、ハナが小聲で止めようとする。

「ハナは純粋すぎ。多分だけど、アイツ反省してないよ」

祥子はハナの言葉に反論する。それは、他でもないハナの為に。

「ああ。私が愚かだったから、ハナと向き合えなかっただけだよ。でも、今は心をれ替えた。お嬢ちゃんの心配は必要ないよ」

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しばらく見ていなかった父の笑顔は、どこか異様だった。

まるで、目の奧が笑っていないような……。

この覚が、祥子の言葉による先観なのか、それとも、ハナ自しているのかは分からなかった。

「ほら、ハナ。一緒にうちに帰ろう。それとも、隣のお嬢ちゃんも一緒に送ろうか?」

「……チッ。きしょ……」

父の発言に、祥子は容赦なく毒を吐く。

「お父さん………」

ハナが、か細く聲を出した。

「どうした、ハナ?」

その聲を聞き逃さなかった父が、急かすように問いかける。

「お父さん。私ね、帰りたくないよね。私ね、コレ…まだ持ってるんだよね……」

そう言って、ハナはポケットの中を取り出した。

そこには、皺だらけに丸まった紙があった。

それは、父が踏みつけた雑誌。

ハナが、努力の末に大々的に表紙を飾った雑誌だった。

「私が今までお父さんたちに踏みにじられた人生はね、こんな數分のお話しじゃ消えないんだよね。悪いけどね、信用できないね…………」

「そうか……………」

寂しそうに、父が応える。

ハナは、しの罪悪と共に立ち去ろうとした。

「ごめん…」

そう言い殘し、祥子の手を引く。

「………ハナ……」

心配そうな祥子の聲が、背後から鼓を貫く。

その聲には、振り返れなかった。

の心配する表に安心して、きっと涙してしまうから。

そしてそれ以上に、振り向けば、父の顔が視界にってしまうから。

見上げた空と駅舎の境目で、オレンジの空と目があった。

その空模様は、ハナと祥子ならなんだって出來ると、そう応援してるようで。

ハナは、祥子の手を強く握った。

誰も二人を、引き裂けぬように。

その時だった。

父の言葉が、二人を突き刺したのは。

「やれ」

父のその言葉と同時、スーツをに纏った大男たちに囲まれる。

「……えっ?」

同時、その男たちは、繋がれた祥子とハナの手を引き剝がす。

そして、ハナを父の車へと連れ込もうとする。

「きゃっ…!離して!」

「ちょっと!ハナを離しなさいよ!」

「椎名祥子。二度と娘に近寄るな」

父が、冷ややかな視線で祥子を抜きながら、そう言った。

「いやぁっ!離してぇえ!」

「ふざけんな!離せよ!ハナが嫌がってんだろ!」

「子供の我儘に付き合わされる親の気持ちにもなれ」

「今更父親ぶってんじゃねえよ!このクソジジイが!」

「まったく。ハナも大概だが、君も酷いな。類は友を呼ぶということか」

祥子は、大男らに取り押さえられてしまう。當然ながら、きは取れない。

必死に振りほどこうと抵抗するが、じろぎ一つできない。

その間にも、ハナと祥子の距離はみるみる遠ざかってしまう。

「ハナ!」

祥子がぶ。

「ごめんね、祥子ちゃん……。溫泉、行けないね…」

ハナは、泣きながら、悲しく微笑んだ。

二人なら、なんだって出來ると思った。

だが、それは間違いだった。

二人でも出來ないことから目を背け、出來ることしか見てこなかった。

ハナは車の後部座席に無理やり座らされ、同時にその扉が閉まる。

直後にエンジンがかかり、車はどこかへと走って行ってしまう。

「ハナあああああああああああああああああああああああああああ!」

が裂けるほどに、祥子はんだ。

そのび聲は、夜の渚に包まれ、どこかへと攫われてしまった。

まだまだ、やりたいことがあった。

二人ならいつか、幸せな何処かへと逃げ切れると信じていた…。

二人は學んだ。

大人は、下劣で、低俗であると。

子供は大人に勝てない。

そして、この社會を作っているのは、他ならない大人である。

大人は、自分達にとって都合が良いように社會を組み立てた。

そして、その都合の計算の中に、子供は含まれていないのだ。

自分さえ良ければ、他人なんて、ましてや子供なんて、どうでもいいのだ。

學校のいじめからは目を背け、待の悲鳴には耳を塞ぎ、家出した子供を平気で利用しようとする。

いじめを見ているだけでも同罪だというのなら、果たしてこの世にいじめをしたことのない人などいるのだろうか。

誰もがいじめを見ている。それなのに、誰も被害者を助けない。

いじめや待を苦に、踏切へ飛び込んだに同する大人はいるだろうか。

きっとそんな子供に同するよりも先に、電車を遅延させたことに対して憤る人間の方が多いだろう。

なんとけないことか。

なんと嘆かわしいことか。

自殺を減らそうともしない癖に、自殺した人間に対して憤慨や嫌悪をにする。

そんなに「他人の立場になって考える」ことは難しいだろうか。

そんなに「自ら命を絶った者は弱い」のだろうか。

そんなにも……………「子供は信用ならない」だろうか。

たった今、二人のの友は、一人の男の勝手で自己中心的な判斷のせいで、見る影もなく引き裂かれてしまった。

二人は決意した。

絶対に────────────────────大人を許さない、と。

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