《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》

戦況は、圧倒的な劣勢。

數えきれないほどの腕は、一本一本が強力な破壊力を有しており、それらは切斷されても活を止めない。

故に、腕に対して刃による切斷攻撃はあまり効果がない。どころか、敵の戦力を拡散しまい、こちらが追い込まれてしまう。

有力な攻撃方法は、コウジの〈等重変換Epual Dead-Weight〉で消し飛ばすか、ヒカリの〈自在周波數FREEQUENCY〉で放線を照するか、マサタの〈境界超越Manifold Breaker〉で異次元に飛ばすかである。

そしてそのいずれも、実行に移すのは難しい。

だからと言って、それは【排斥対象イントゥルージョン】の駆除や地域住民の保護を放棄していい理由にはならない。

才華を持ち、且つ人々の記憶から抹消された彼らにできるのは、「死を認識されない兵士」であり続けることだろう。

「そっちはどうね?」

背中越しにハナが訪ねる。

「ギリ大丈夫だけど………ちょっとヤバいかも……」

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苦しそうな笑みを浮かべながら、リオが笑う。

腹部に微かな裂創をけているようで、制服の上からじんわりと赤いシミが広がっていく。

「ああっ!もうっ!うざったいよね!」

迫りくる腕を薙ぎ払いながら、後ろ向きにゆっくりとリオへと近づく。

そして、彼のすぐ傍へと到著すると同時、リオの肩を持ち、んだ。

「お姉ちゃん!〈為一不二─定圧神通熱Temperature〉!」

んだ瞬間、が一気に上空へと飛び上がる。

ハナとレナの才華が同時に発することで、気圧と気溫は二人の意のままにれる。

その才華によって、足元の気圧を急激に上昇させ、頭上の気圧を急激に低下させる。

その圧力差により生じる風は、二人のを吹き上げるのには十分すぎる力を有していた。

だが、そんな中空にさえも、その腕は迫る。

「…………くっ!」

苦悶の表を浮かべながら、ハナがその腕を切り落とす。

だがその切斷された腕でさえも、慣力により上空へと上がり続ける。

そもそも、中空の自分たちに追いつける速度で迫ってきた時點で、切斷という選択肢は悪手であった。

「チッ!」

舌打ちしながら、リオが自の刀を取り出し、その峰で迫りくる腕を下方へと叩き下ろす。

だが。

「あがぁッ!」

その作が傷口にも響いたのか、苦痛にその表が歪む。

「り、リオちゃん!大丈夫なのね!?」

慌てたように、そして心配そうにハナが問いかける。

「……うぁあ……んぁぁあ……」

リオはそれに対して、言葉では返事が出來なかった。

酷く苦しげにうめき聲をあげるだけだ。

その時だった。

リオの顔にりが見えたのだ。

いや、この表現には語弊があると言えるだろう。

リオの顔は最初からっていた。

そこに更にりが増したのだ。

────────────────────理的に。

頭上を見上げる。

そこには、すぐ近くまで迫った腕があった。

それに気が付くとほぼ同時に、アテスターから聲が響く。

「ハナ!上よ!!」

自分たちは中空。既に躱せない距離まで迫っている。

無論、今からあれを切斷することもできない。

もし切斷できたとしても、それは重力にしたがい、自分たちのもとへ降ってくる。

自分たちよりも速く、腕が上方へと移した時點で、視野にれておくべきだったのだ。

腕が、頭上で待ちけている可能を。

遠方から飛來した弾丸が、腕を貫く。

レナが援護として狙撃してくれたのだろう。

だが、それも効果を示さない。

切斷や破壊には至らないようだ。

…………………ああ、終わった。

瞬間、腕の先端。

人間の掌のようなそれが拳を握り、ハナとリオを毆り下ろした。

その圧倒的な撃力は、剎那、視界を白く潰す。

上昇時の倍の速度で降下し、やがて2人のは著地する。

著地と呼ぶにはあまりにも凄慘なそれは、衝突や墜落と揶揄する方がきっと適當だ。

激痛がを駆け抜け、訳が分からないほどが軋む。

を駆け抜けた鈍痛は、四肢の末端まで行き渡ると、固定端反をしたかのように再びの芯へと返ってくる。

きはおろか、に力を加えることすらもできない。

にどれだけのダメージが加わったのかは分からない。

なくとも今言えることは────私はアレには勝てないということだろう。

レナの心配するび聲が、アテスター越しに響いてくる。

何を言っているかは理解できない。

それでも、良かった。

良かった。

噓でも、形だけでも、裁上だけでも、姉が私を心配してくれて、本當に良かった。

腕が暴れながら、周囲の建を破壊していく。

その腕に橫薙ぎにされたビルが、まるで木の枝のように折れ、大量の瓦礫が頭上から降りしきる。

その瓦礫の下敷きになったハナは、朦朧としていく意識の中で、最後に大きく聳えるそれを見た。

ああ、これが………………………死か。

瞬間、ハナの意識は斷絶されてしまった。

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