《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》撞著

必死で、悲鳴を殺した。

悲鳴を上げれば、ハナが不安がってしまう。

切り込んでいくたびに、脊髄反で右手が止まってしまう。

そのの生理的反にすら抗って、左手を切り続ける。

やがて、大量のと共に左手が切り離された。

ハナは、今なおそれを大事そうに、寂しそうに、摑んで離さない。

それが、ただのの塊に過ぎないとも知らずに。

レナは、今度は止帯を取り出し、左腕の二の腕に巻き付けた。

肘や膝から先に大きな傷を負った際に、その関節から先に、止帯や紐を巻いてはいけない。

肘から先には尺骨と橈骨、膝から先には腓骨と脛骨の、二本の骨が存在している。

そのため、肘や膝から先に止帯や紐といった止処置を行っても、効果が表れにくい。

肘や膝から先に大きな傷を負った場合、腰から膝(大骨)、肩から肘の間(上腕骨)に止処置を行うべきである。

は、必ずしも傷口に近ければ良いというものでもない。

尤も、直接圧迫止法の場合は話が別だが。

Advertisement

レナは、自の二の腕に止帯を巻き終えると、流が止まったのを確認し、歩き始めた。

右手に攜えたスナイパーライフルを一度地面に突き、コッキングレバーを押し下げ、弾丸を裝填する。

本來は自の目前に銃口が存在することなど、あってはならない。

だが、そんなことを気にかけていられる狀況ではなかった。

今、レナのかしているのは、極めて純度が高く、且つ高溫に熱せられた怒りだ。

「さあ。ハナの落とし前、著けてもらうわよ」

左手の痛みが徐々に薄まっていく。

それは闘爭心や、戦闘の興によるアドレナリンの分泌のせいだろう。

きっと、私一人ではアレには勝てない。

それどころか、片手を失った私はスナイパーライフルを撃つこともできないだろう。

だが、それが何だというのだろうか。

そんなことは今、関係ない。

アレは私の妹を傷つけ、私はアレを殺したい。

ただそれだけだ。

それだけで、十分だ。

レナの目からは、次第にが失せていく。

今日が人生最期の日であっても構わない。

私は、この世でただ一人だけ、ただの一人も代わりのいない、大事な妹の為だけに戦う。

それが、それだけが──────────────────────私に出來る全てだ。

「アンタは………どうしたいの?」

のない眼で、アレを見上げる。

その言葉に答えるように、排斥対象が咆哮を上げる。

「何言ってるのよ…」

遠くをむようなその眼には、もう何も映っていない。

「……………それじゃあ…………行きましょう」

まるで無気力なその聲に反して、レナはスナイパーライフルの銃口を真っすぐ排斥対象の眉間に向け、引き金を引いた。

銃口が悲鳴を上げ、右肩に絶大な負荷がかかる。

激痛が右肩を襲い、一瞬諦めかける。

だが、諦めない。

否、最初から諦めているため、もう諦めることなんて出來ない。

私はただ、ハナの傍に居たいだけなのかもしれない。

右肩から視線を上げ、排斥対象の眉間を見る。

無傷だった。

心が、ミシミシと音を立てて軋んでいる。

これで証明されただろう。

私は絶対に、アレには勝てないのだ。

ハナが気を失った今、才華を使うことも出來ない。

銃弾が通じないとなれば、もう希はないだろう。

それでも、レナは戦うことを止めない。

また銃を地面へ突き、次の弾丸を裝填する。

そして、裝填を終え、駆け出す。

このままあの場所にいては、腕の攻撃がハナにまで及ぶかもしれない。

しでもハナから離れ、しでも時間を稼ぎ、しでもアレにダメージを加える。

それらは全て、ハナの為に。

きっと私は死ぬだろう。

だがその時は、アレも道連れだ。

「いいわ。連れていってあげる」

レナはし口角を上げて、遠い目でそういった。

迫る腕を、あるいは躱し、あるいは撃ち抜きながら、その憎らしい顔面の元へと駆けて行く。

引き金を引くたびに、全に強い衝撃と激痛が走る。

何度か撃の反で後ろに転んだ。

その度に急いで姿勢を立て直し、再び駆け出した。

「やっぱり強いのね…………」

呟くようにそう言い、駆け抜ける。

眼前まで迫った腕を、ナイフで切斷する。

だが、切斷されても尚活を止めない腕は、再び狂いなくレナを狙う。

今度はその腕を、スナイパーライフルをバット代わりに振り抜いた。

「………………いいわね…………。それ……………」

その劣悪な見た目とは裏腹に、応用が効くその腕が羨ましくなってしまったのだろうか。

また一言。

レナはぼそりと呟いた。

    人が読んでいる<異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください