《不老不死とは私のことです》學式編 10話
蒼樹様と短く業務連絡をし(どうせ詳しい所は父から伝わる)、私たち、クロエ、柚様の3人は、こじんまりした応接室の1つへと場所を移した。
蒼樹様が「あとはお若い者同士で」(お見合いかっ)とかなんとか言って、彼の書斎から私たちを追い出したからだった。そして私は、これまで知らなかった蒼樹様のお茶目な一面に揺を隠せそうにない。
この応接室は、広い本邸の中でも、柚様たち西園寺家の人間の生活スペースに近い一室なので、逆に私たちのような使用人との対面に使用してもとやかく言われないのかもしれないが、こじんまりとしていても侮るなかれ。調度品の一つ一つには恐ろしい程金がかかっているし、揃えられた茶も一切手を抜いていない。
ぶっちゃけこのソファ一つ売っぱらうだけで、我が家の4人が1年楽しく暮らせるだけの価値があると思う。
一言二言、挨拶をわした後に、柚様はこちらに笑顔を向けた。
「今日からよろしくね!」
柚様とは、馴染といってもいいくらいにい頃から顔を合わせているので、対応もフランクだ。
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「はい、よろしくお願いします」
「…………」
そっぽを向くドラゴンに、柚様はほんのし眉を下げて悲しそうな顔をした。
「……申し訳ありません、後ほど躾ておきます」
「俺、雀に構ってもらえるのは大好きだよ!」
そうかい、私は大嫌いだよ。
それから、話題は間もなくこれからの予定へと移った。
本日の予定は、車にて學園島直結のモノレール駅まで行った後、モノレールに乗り換えて島となる。一応、モノレールの改札より向こうは、學園でこれから學ぶ、未な異能者たちの安全とを守るために生徒と、その他厳選された大人しかれないのが決まりだ。
いくら異能者社會の権力者たる蒼樹様でさえ數ヶ月に1度の視察をねじ込むことで々だろう。一応、この厳重さには訳があって、年々その全數が頭打ちとなっている、異能者を海外勢力から守るのが主な目的らしい。
學園が発足するまでの一昔前までは、各自家での訓練で、拉致監どころか、人売買まで橫行していたようだから、厳重にならざるを得ないのだと思う。
「本日は、寮及び明日の學式準備になります」
「うん、分かってるよ。私は、雀ちゃんと同じ部屋だったよね?」
「基本はランダムに決定されるようですが、こちらは手を回させて頂きました」
部屋が同じなのとそうでないのとは出來ることに大分違いがある。
「食事は、あらかじめ説明されている通り、基本は食堂で朝晝晩とることが出來るようですが、寮にはキッチンも完備されていますので、何かご要があればお作りします。お申し付けください」
寮の間取りは、各個人の部屋と、2人共用のキッチン、リビングダイニングといったところ。すなわち2LDKだ。
ついでに私という家事萬能(自分で言う)メイド付き。何それ私が住みたい……いえ、ある意味住むけど。
「うん、分かったよ。……それとね、1つお願いがあるんだけど、いいかな?」
割と伝えたいことはハッキリというたちの柚様が言い淀んだお願い事に、心躊躇しながらも、私は表を変えずに答えた。
「何なりと(何でもとは言ってない)」
だってさぁ。「何なりと」って言うけど、出來ることと出來ないことがあるんですよっ!
心臓移植のために心臓が必要だからちょーだい、くらいなら再生するんでいくらでも持ってけドロボー!なテンションで差し出せますけど。
例えば弟しいから、燕をちょうだいとか言われたら、流石の私も刺し違えてでも燕を守る自信がある。
しかし、柚様の“お願い事”はそんな事では無かった。
「その言葉遣いヤメない?」
「と、言いますと?」
「うん、それだよ。だって雀ちゃんはメイドさんとして著いて來てくれるけど、周りにはそれは言わないんだよね?……ってことは、周りの人は私たちを友達同士だって思うと、……思うんだけど」
「確かに、そうでございますね」
「そういう時に、友達通しで丁寧過ぎる言葉遣いはきっと怪しまれると思う!」
「なるほど……一理あります」
「ます?」
「一理あり─、ある」
「でしょう?だからよろしくね、雀ちゃん!」
「かしこまり─、分かった。柚様」
「柚様じゃなくて柚、ね!」
「……ゆず」
何これ、染み付いたもののせいで、案外難しいんだが。
「零くんは……」
柚様─、柚がクロエの方を向いた。零って誰かと思ったら、クロエの事でしたね。下の名前って使わないと忘れちゃうよね!
「俺は別にいいよ〜。そんなに柚サマ?柚?と話すこともないと思うしねぇ」
「う、うん。……そうだよね!」
あまりに失禮な態度に、クロエの足をギュッと踏んでおいたけど、喜ばせただけだった。そして言葉遣いはむしろ最初から崩れていた。お仕置きすらご褒になる変態の躾方ってどうすればいいんでしょう。誰か教えてクレメンス!
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