《不老不死とは私のことです》學式編 20話

◇◇SIDE:??◇◇

分かれ道で、彼の姿が見えなくなるまで手を振っていた。彼を含む3人が向かったのは、方向からしてこの學園島きっての高級ホテルだろう。

本人はハッキリと言わないけど、良いところのお嬢様だって分かるもんなぁ。傍から見て、俺達はどう寫っているのだろう。

の好き好きオーラは目に見えて伝わって來るので疑う余地も無いが、釣り合ってるかどうかが心配になる。……間違ってもお育ちは良くないもんな、俺。

ピリリリリ。

しだけ凹みそうになった時、仕事用の端末が鳴った。表示を見れば、上司の名前が出ている。

「(闇の霊よ……)」

心の中で慣れ親しんだ存在の名前を呼び、を発させる。

闇の霊と聞くと何だかイメージが悪い気もするが、司るのは単にと記憶。その質は人類の敵である異形種と相容れない、人間の味方であり善。

まあ要するに、気のいい隣人なのだ。

したのは効果範囲の事を他人が見聞きした場合、その事柄への関心を奪い、ゆっくりと記憶を破壊する

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記憶を破壊されるってなかなか大事だけど、そもそもその記憶への関心も奪っているので、後から記憶の齟齬に気づかれることも無い。

字面を見ればわかる通り、かなりの難易度を誇るので習得するまでかなり大変だった。結構便利だけどな。

が正常に作しているのを確認してから通話ボタンを押した。

「はい」

『遅いぞ』

被せ気味に聞こえてくるのは妙齢のの聲。本人も、この聲を裏切らないくらいには人だ……格が良いとはお世辭にも言えないけど。

「無茶言わないでください。これでも盜聴防止に気をつかってるんですよ」

『だとしても、オマエならあと5秒は短出來ただろう?』

……うっ。確かに、出たくない気持ちと葛藤したことは否定出來ない。

『……フッ。まあいい、仕事だ。出れるな?コラプサー、、、、、ちなみに、返事はハイかイエスだ』

「実質一択じゃねえか!?」

あまりの橫暴っぷりに思わずけない聲が出た。橫暴、いくない絶対。

『當たり前だろう……お前に話をする時點で、他の奴に任せるのは難しい案件だからな』

「そりゃそうでしょうけど」

ALICEにおいて俺は最年。だが、一応的な扱いをされてるもんで。

なぜこうも勿ぶった真似をするかと言えば、俺も未年。政府直屬とはいえ、日の目を見ることがあまりない組織なので、あまり大っぴらに未年が働いてるとは言い難いのだとか。

今の調子でこれでは、人がちょっと怖い気がする……主に、こき使われそうとかそういう意味で。

「で、詳細は?」

納得いかない気分ではあるけどイエスと言わない訳にもいかないので話を進める。それに、全く気分が乗らないかって言えば、実はそうでも無いからな。

『結構は本日の夜12時。敵は魔薬の者、つまり売人だ。闇ルートで結構な異能者と繋がりがあるらしいから気をつけろ』

「魔薬か」

麻薬ではなく、魔薬。一般人の間では未だに麻薬の方が主流だと聞いてるけど、異能者にとってお馴染みなのは後者の方だ。

効能は様々。

単に気分が良くなるだけのものがあれば、服用したものを洗脳できるまでに神を壊すもある。

前者は特に副作用も無いので止されては無いけど、後者は言わずもがな。

とはいえ、取り締まりにおいて最も厄介なのは

『ちなみに、今回のブツは強化系統のものだな。無論違法の』

「!!」

最も厄介な、強化系統。

合法のものは軍でも使用されているらしいけど、副作用が強く、まず一般が扱える代ではない。

違法はその數倍の効力を持ち、またその分副作用も強くなる。最悪命を落とす危険もある。

『しかも、これは未確定の報だが、【パライソ】である可能が高いらしい』

「それは……控えめに言って最悪だな……」

【パライソ】。悪名高き、強化系統魔薬の最高峰。効果は軍の適用しているものの數十倍。

だが。

「飲んだら必ず死ぬ劇薬をするなんて、どこの頭おかしい野郎だよ」

『大方、闇奴隷にでも使っての人実験か、捨て駒覚悟の強化か。いずれにせよ、ロクな用途じゃないことは確かだ』

高すぎる効能の代償は、不可逆的な死。効果時間が過ぎれば極限まで強化された筋は斷裂し、破裂する。

使われた現場では側から赤い花が開くように、の花が狂い咲く。それは真っ赤な花畑がどこまでも広がる凄慘な空間。

だから、楽園パライソ。の海を楽園の花畑に例えるとは、名付けた人間も相當狂っている。

「それは……許せないな」

『ああ、頼む。正直、この案件に対応出來るのはお前を含めた鋭の數人だけだからな……お前一人でも抜けられると

正直キツイ』

「ああ、敵の中に服用者がいる可能があるからですか」

『そうだ。まあ、これ自が高価なものだ。だから、追い込まれたとしてもそうそう売人たちも手を出すことは無いだろう。一応念の為だ』

「……了解」

ここで、上司の聲が辺りをはばかるように低くなった。

『それと、回収できた死及び犯罪者たちはいつも通り、佐々木の研究所に回す。それでいいか?』

「……はい、それでお願いします。いつもすみません」

「構わない、約束だからな。……今度こそ何か見つかればいいな」

付け足された言葉には、これ程手がかりを探し続けていても、何も分かっていないことに対する憐憫が滲んだ。

この上司ではないが、俺が10年も過去に執著し続けることを止めようとする人もいる。それは純粋に優しさからなのだろうが、それでも諦めることはできなかった。

「いえ、諦める気はありませんから」

「そうか。……奴は既に死んでいるかもしれないぞ?」

何度もそれは言われた。何せ10年前を最後に、その痕跡は途絶えている。奴が殺したとされる死は俺の両親で最後だった。

でも。

「奴は生きてます、必ず」

が出なくても、証拠がどこにも無くても、あの亡霊はきっと世界のどこかでのうのうと生きている。

そして、どこかで俺の両親、、、、のような無慘な死を作り続けているに違いない。

「いつかどこかで、化けの皮を剝がしてやる。その時は……」

俺が奴を殺す時です。その為に全てを捧げてきたのだから。

そう口に出したその瞬間、何故か脳裏に柚の顔が浮かんだ。

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