《桜雲學園の正不明《アンノウン》》11話 石崎兄妹

図書棟からの帰り道。

もう遅いので家に帰ろうと校門に向かっていると、そこには咲みさきが待っていた。そのきれいな顔に笑みを浮かべて。

そう、笑みである。以前、どこかで見たことのあるような·····あれ? いつだっけ?

「景けい兄さん、ずいぶんと遅かったですね」

「えっ、まあ、図書棟に行ってて······」

「朝のことを覚えていますか?」

朝? 朝は····早い時間に起きて····ご飯食べて····志穂菜しほなのことを待ってて····あっ、思い出した。

「そうですね、景兄さん。でも、放課後は時間がありますよね?」

「えっ」

「ありますよね?」

「は、はい。あります」

「よろしい」

「???」

「志穂はわからなくてもいいですよ。時間もないことですしそろそろいきましょうか」

今日の放課後は長くなりそうだ。

(03話參照)

やばっ! 忘れてた。

別に一緒に帰る約束とかはしてないけど、連絡くらいはするべきだったかな。

「景兄さん」

すっ、と咲が近づいてくる。

どうしよう。謝るべきか。

「ごめん、べつに朝のことを忘れていたわけじゃないんだ、その、えっと······」

「景兄さん!」

ドンッ

「えっ?」

怒られると思ってめていると、咲がおもいっきり抱きついてきた。

「そんなことはどうでもいいんです。もう怒ってません。私は ·····私はただ、景兄さんが居てくれればそれだけでいいんです。ただ ·····それだけで」

たった5年、されど5年、俺たち兄妹にはこの5年間は長かった。

俺はいつも通りに昔のようになれると思ったけど、それは違った、この5年間で俺たちはあまりにも変わりすぎた。

俺は咲の気持ちをわかっていなかった、いや、わかろうとしなかった。

咲は不安だったんだ。母が死んで、俺と父が都心へ引っ越し、直子なおこさんは居たけど、やっぱり寂しかったんだ。

そんなときに俺が帰ってきて、安心したのだろう。でも、まだ不安だった。また居なくなってしまうのではないかと危懼した。

そんなときに、俺が連絡もなしに來ないのだからすごく心配したのだろう、居なくなってしまったのではないかと。

俺は ····俺は何てことをしたのだろう。

「俺は兄、失格だな。妹の気持ちに気づけなくて、泣かせてしまうなんて」

「ぐす·····そんなこと·····ぐす·····ありません·····ぐす」

「ごめん、本當にごめん」

咲の髪を優しくでてやる。

「怖かったんです····ぐす····昨日からのことは····ぐす···全部夢だったんじゃないかって」

「そんなことはない、俺はずっと咲の側にいるよ」

「約束····ですよ」

「ああ、今度は破らない、絶対に守るよ」

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