《桜雲學園の正不明《アンノウン》》29話 DOP vsテニス部 決著!

避ける、フレア、電気流して、フレア、エレキボール······

とめどなく繰り返される二人の攻防。

本來ならここで一度距離を取り、隙を伺ってフレアを放つところなのだが......

タレントはカードを介とすることでしか発させることができない。 これは授業の最初に教えられることだ。 電子機がないとメールを送れない、それと一緒で、カードがなければタレントは使えない。 もうし言うなら、カードにれていないとタレントは発されない。 だからカードは常に持っているし、ましてや、カードを投げる・・・・・・・なんてことはあり得ない。

それでも今、俺の前ではそのあり得ないことが起きている。

奈ころなが手に持っていたカードを投げる・・・。

ここまでは順調。

後はカードをキャッチして、奇襲を決めれば勝ち、決まらなければ負け。

一か八かの大勝負だ。

綿とまではいかないが、ある程度ちゃんと考えて出した唯一の勝機。

Advertisement

ただ一つ誤算があるとすれば、カードを投げたら俺に屆くと勝手に思っていたことだ。

カードが手元にない奈を放置しているだろうか?

部長である奈が負ければそれで終わりだ。

カードが俺に屆かないように妨害しないだろうか?

カードがなければ俺たちは何もできない。なすすべもなく、攻撃されて終わり。

今更ながらにこの計畫がだらけであることに気づいた俺だが、すでにカードは奈の手を離れ、空中で回転しながら近づいてきている。

當然、金髪の後ろに回っている俺にカードが向かっているということは途中で金髪の橫を通ることになる。

今の俺にできることは1秒でも早くカードが俺に屆くのを祈るだけ。

金髪は無防備な奈を攻撃するべきか一瞬迷う素振りを見せたが、カードの存在を無視できないと判斷したのか、カードに向けてタレントを発させる。

「エレキボール!」

金髪のタレントは綺麗に奈のカードに直撃し、軌道を変え、俺と奈から離れたところに向かってしまう。

やられた!?

やばっ、これって......

完璧に俺のミスだ。他にもっといい方法があったかもしれないのに。

このままじゃ......

『······しょうがないですね。まったくもう、景けい兄さんはおっちょこちょいなんですから。今回だけですよ?』

校舎裏という人気のない場所での戦いは、誰の目にも止まらず、テニス部の勝利で決まるはずだった。

・・の介がなければ。

『......エアロウインド』

奈のカードは重力に従って地面に落ち、そこでアス研の負けが決定するはずだった。

だがカードは落下せず、弧を描くようにして俺の手に収まる。

この場にいる誰もが予想し得なかった現象が起きたが、とっさにタレントを発させる。

「フレア!」

金髪は勝利を確信した顔だったが、一瞬で戸いに変わり、なんとか避けようとするがもう遅い。

結局、金髪はなにもすることができず、フレアが直撃。 これで俺たちアス研の勝利だ。

『Winner 明日ありと思う心の仇桜研究會』

俺たちの勝利を告げる機械の音が聞こえたと同時にDOP の終了を伝える放送が流れる。

『5時になりました。この時間をもって本日のDOP は終了となります。生徒の最終下校時刻は·······』

放送はまだ終わっていないが、正直どうでもいい。

最後はかなり焦ったが、なんとか勝利をつかむことができた。

これは素直に嬉しい。

でも何でカードの軌道が急に変わったのだろうか?

落ちるはずだったカードは急に軌道を変え、俺のところに向かってきた。

あの時、なんとなくだが風をじた気がする。

その風に乗ってカードが運ばれたような......

ふと視線をじ、上を見上げると3階の窓からこちらを見ている人がいた。

なんとなく子生徒のように思うけれど、顔がよく見えない。

この人が風を起こしてくれた人だろうか?

「景! ぼーっとしてないで、早く行くわよ」

早く早く、と余程今回の勝利が嬉しかったのか、満面の笑みで手を振る奈。

夕日に照らされた奈はとても輝いていて、ささいなことなんてどうでもよくなった。

「今行くよ、奈」

もう一度上を見上げるが、そこにはもう誰もいなかった。

今日は初めてDOP で勝った。

今はそれだけでいい。難しいことを考えるのは後にしよう。

奈の元へと行こうと駆け出した時、視界の端の方に窓ガラスに映った自分の、赤く染まった顔が見えた。

......これはあれだ、夕日のせいだ。

初めての勝利に気持ちが高ぶっただけだ。

俺は気持ちを誤魔化すようにまっすぐ前を向き、そのまま駆け出した。

    人が読んでいる<桜雲學園の正體不明《アンノウン》>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください