《桜雲學園の正不明《アンノウン》》34話 お化け屋敷研究會 (1)

「さあ、出発よ!」

奈が張り切った調子で手を高く掲げる。

楽しそうな奈とは対照的に、俺の隣にいる志穂奈はうつむいたまま一度も聲を出していない。

ガッチガチに張していて、右手と右足が一緒にでている。

今にも泣きそうな顔でプルプルと震えているのはまるで小のようだ。

「志穂奈、大丈夫か?」

「ウ、ウン。ダイジョウブ、ダヨ?」

どう見ても大丈夫じゃなさそうだ。

(······景、気をつけてね。······絶対に······離れちゃ、ダメ)

海崎と同じように風花さんも耳打ちしてくる。

何をそんなに気を付けなければならないのだろう。

(······奈が、暴れるのも······大変だけど······志穂奈は、逃げ出しちゃう······から)

なるほど、確かに今の志穂奈の様子を見ていると、いつ逃げ出しても不思議ではない。

そこまで怖いなら帰ってもいい気がするんだけどな。

「志穂奈、怖いなら帰ってもいいんだぞ? 俺は一人でも大丈夫だし」

「こ、怖くなんてないよ。それに景くんを一人になんてできないよ」

(志穂奈の方こそ一人にできないよ)

そう思ったのは俺だけではないはずだ。

「じゃあ、私たちはこっちからるわ」

しばらく校を歩いていると、普段俺が授業をけている生徒棟に著いた。

ここには教室の他に、家庭科室、多目的室、そして俺がなにかとお世話になっている生徒會室がある。

生徒棟は北口と南口の二つの扉かられて、し縦長な構造の建だ。

俺たちは今、北口の扉にいる。

「じゃあ、俺たちは南口からればいいのか?」

「ええ、そうよ。さあ風花、私たちが一番乗りよ!!」

「······お~~」

強引に引っ張られている風花さんは、やる気がまったく見けられない掛け聲と共に校舎の中へと消えていった。

「俺たちも移しようか」

このまま突っ立っていては時間がなくなるので、後ろで魂の抜けかかっている志穂奈に聲をかける。

「ウ、ウン。メザセイタダキダヨ!」

「志穂奈、本當に大丈夫か? ダメそうなら無理しなくても······」

「ダイジョウブ、ダヨ」

明らかに大丈夫ではない。

でも、ここまで言われると無理やり連れて帰るのも気が引けるし。

何かが起きないように俺がしっかりと見守ってやんないと。

「ほら」

上の空でぼーっとしている志穂奈の手をとる。

普段なら絶対にしないけど、今はこんな狀態だし大丈夫だよな?

そのまま手を引いて、校舎の南口へと向かう。

最初からこんな調子で大丈夫なのか?

俺はまだまだ始まったばかりのお化け屋敷のことに不安を覚える。

何も起きなければいいな······

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