《高校生である私が請け負うには重過ぎる》第17話 白い塔

「お、知っているかな? 喋らなくとも表の変化で読み取れた。それで、そいつは今何処にいるんだ?」

まさかこんな山くんに負けず劣らず不吉で怪しい雰囲気を放った人から彼の名前が出てくるなんて思わなかった。揺してしまい表が顔に出てしまった。

どうすればいいだろう、顔に出てしまった以上彼のことなど全く知らないなんて言えなくなってしまった。取り敢えず、クラスが同じだと言っておこう。

「彼とはクラスメイトです。ですがそれだけです。彼のことはそれ以上知りません」

「ふぅ~ん、まあいい。あいつがこの町にいることは分かってるんだ。気長に探すさ」

この人は山くんとどういう関係なのだろう。彼をあいつだとかこいつ呼ばわりなんて、仲がいい友達みたいじゃない。

でもこの人は私や山くんなんかより明らかに年上だ。若くても々二十代後半だろう。

そんな年上の友達がいるのだろうか? そもそも山くんは人との接を極力避ける人だ。そんな彼に知り合いがいるとも思えない。

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「あの、ちょっといいですか?」

そう考えるとこの人のことが気になり出し、帰ろうとした彼を呼び止めてしまった。

「ん? 何だい? 急いでいるんじゃないのか?」

「あなたに訊きたいことができました。あなた、一何者なんですか? 山くんとはどういった関係なのでしょうか?」

「んん……、君はさっき奇鬼のことはクラスメイトだけの関係だって言ったよね?

もしかしすると俺に噓ついてる? 何でただのクラスメイトを庇うようなことをするんだい?本當は奇鬼のこと何か知ってるんじゃないのか?」

彼のことを下の名前で呼んだ。完全に彼のことを何か知っている! この人が何者かは解らないけれど、いい予がしないのはハッキリと、確かに、理解することが出來た。

「ええ、クラスメイトだからだと思います。申し遅れましたが、私、山くんのクラスで委員長を務めさせていただいている、海野蒼と申します。委員長として、クラスメイトのことを庇うのは當然のことです。私のクラスの生徒達に危険が脅かされるようなことがあってはいけませんから。あなたも例外ではありません。もし私のクラスメイトに何かしようものなら私が許しません!」

「んん、言い切ったね。完全に論破されたな。これは話し掛ける相手を間違えた。見た目通り君は聡明な頭脳をお持ちのようだね、眼鏡っ娘ちゃん」

と言い、彼は私から目を逸らすようにして巨を翻し向こうに振り返った。そして、こちらを見ることなくこう言った。

「俺の名前は白臣塔しらおみとう。君に倣い職業も言いたいところだけど、諸事で名乗れなくてね。別に覚えてもらわなくてもいいよ。けど俺は君の名前を憶えておく。何故なら君はあいつに似て俺の一番苦手なタイプの人間だからね」

捨て臺詞とも取れる言葉を殘しながら男はのそのそと歩きながら去って行った。

あいつとは景浦君の事だと思うけれど、私と彼のタイプが似ている?

あの人の視覚から脳へはどのような報が伝わっているのだろう?

でもまあとにかく、當面の危機は何とか解決へと導かれたようだ。でも所詮はその場しのぎといったところである。

白臣塔。年齢、職業不詳の不吉な雰囲気を纏ったあの男は、きっとまた私の前に現れるだろう。その時はきっと今回のようにはいかないだろう。細心の注意を払い彼に挑まなくては。

よく考えてみれば、山くんと出會ってから今日まで毎日ろくなことがない。一週間前まではごく普通の何処にでもいる子高生のこれまた普通過ぎる學生生活を送っていたと言うのに。

高校では珍しい転校生である山くん。

その彼にひょんなことから借金を負ってしまい返済するために助手に半ば強引に任命されてしまったこと。

クラスメイトによる山くんに対するイジメ、クラス會議。

そしてついさっき、白石塔と名乗る怪人との邂逅。

々なことが起こり過ぎて頭が付いていかない。こんな狀態で私はこれから先山くんの借金返済と學校での勉強や仕事を両立できるのだろうか。お先真っ暗どころかすぐ目の前が既に一筋のすらる隙なく真っ暗である。

勝手に思わなくてもいい事を勝手に想像し、勝手に落ち込んで、私は帰路へとつくのだった。

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