《高校生である私が請け負うには重過ぎる》第18話 閑話からの休題

そんなネガティブな考え事をしているに、私はあの例の空地へとやってきていた。まあ、通學路なので通るのは當然なのだけれど。

そこにある電柱には相変わらず例のり紙が雨風にも負けずってあった。

そうだ、元々私はこのり紙に気付きさえしなければ、こんなことにはならずに済んだのだ。私の後のことを顧みない行に今更ながら後悔する。

んん、このり紙さえ、このり紙に気が付かなかったら! ってなかったら…!

「アンタ、何しようとしているのだ?」

私のすぐ後ろの方から突然低く暗い聲が聞こえた。あまりに突然だったので私は場も弁えずにんでしまった。私は振り向く。

「きゃあ!」

そこにいたのは、例の如く顔が隠れて見えていないが、恐らく驚いた私の姿を見てあきれ顔を浮かべているであろう、山くんがそこに立っていた。

「何を驚いて珍妙な聲を出している。普通に聲をかけただけではないか。出會った時から思っていたがアンタって意外と臆病者だな」

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「臆病者ということに関して否定はしないけれど、こんな薄暗い道で一人でいた時に突然後ろから聲を掛けられたら誰だってびっくりすると思うのだけれど」

「この程度で一々驚いてたらいくら心臓があっても足りぬぞ。これから私の助手として働くのだから、しっかりしてほしいものだ」

これから驚かなければならない依頼をこなしていかなければならないのか。幾多數多の依頼をこなしてきたであろう彼の心臓は主に鋼を主分として形されているようだ。

私の心臓は普通のと細胞で出來た普通のものなのでびっくりすることに慣れないといけないだろう。

ところで彼は何故こんな日も落ちかけているというのに、こんなところにいるのだろう?

というか今朝あんなことがあったと言うのに割と元気そうだ。流石、鋼の心臓の持ち主。そのことに関しても訊いてみたかった。

山くん、何でこんなところにいるの?」

「いや、あの理科教師が眠りたかったら家に帰って寢ろと言ったものだから、眠たかったから遠慮なく家に帰って寢たのだ。それで、起きたらこんな時間になってて、やることはないし暇だからこの町の散策をしてたのだ」

「…………」

「そしたらこの道を歩いていたらアンタがいたのだ。何をしてるのだろうと思って後ろから見てたら、り紙に手ばしてはがそうとしてたから聲掛けて止めたのだ」

私無意識にそんなことしようとしてたんだ。相當心が疲れてしまっているのだろう。

その前に彼は今凄く気になることを言った。眠たかった、だって?

「え、山くん……、眠たかっただけなの?」

「ん、ああ、アンタのけた依頼の疲れが取れなくてな、朝起きてもまだ眠たくて。全く……、學校行ったら行ったであんたが俺の名前間違えて大聲出さなきゃならないわ、クラスの奴らが騒ぎ出すわで、耳塞いでも五月蝿うるさかったものだから眠れなかったぞ。そしたら何という僥倖ぎょうこう。あの理科教師は良い仕事をしてくれた。おでぐっすり睡眠をとれた」

「え? 山くん、あなたは、イジメられてたん……だよ?」

「イジメ? ああ、そうだ。実はそのことに関してアンタに禮を言わなければと思っていたのだ。最初はアンタに名前を間違えられてマズいと思い大聲を出してしまったんだが、それが偶然にも功を奏した。クラスの奴等とは極力アンタ以外に関わりを持ちたくない。

関わりを持たないようにする一番の方法は人から嫌われることだ。あの件で私は隨分嫌われ者になったことだろう。これも全てアンタが名前を間違えてくれたおだ。まあ、私の助手としての初手柄、まあまあといったところだ。禮を言おう」

そう言い彼は口元をニカッと緩ませた。恐らく満面の笑みを浮かべているのだろう。

お禮を言われてこれほど嬉しくなかったのは初めてだ。彼はイジメられていたことに関して心を痛ませるどころかむしろ私を褒め稱え喜んだのだから。

ということは、機に突っ伏していたのは眠たかったので寢ており、そしてクラスメイトからの土下座コールの時頭を抱えているように見えたのは皆の聲が五月蝿くて耳を塞いでいたからなのだと今更理解した。

「何それ、イジメられて喜ぶなんてどうかしてるよ」

「ああ、イジメ大歓迎だ。何だったらこの世の人間全てが私のことを嫌いになってくれてもいい。その方が気苦労もないしな。ま、元々そんな苦労、したことなどないがな」

「…………」

呆れて言葉が出てこなかった。絶句。

彼の心臓は鋼で出來ているみたいなことを言ったけれど、それどころでは収まらない。全人類から嫌われてもいい? 一匹狼でもたかが知れている。

「あなた、そうやって今まで人付き合いを避けてきたの? 寂しくならない? いくら転校を繰り返しているからとはいえそこまでする必要はないんじゃない? 親さんが知ったら悲しむと思うけれど」

「フッ、人付き合い……友達……、私にとってはこの世で最も必要のないの一つだ。それに親が悲しむだ? 私は生まれた時から一人だ。だから一人でも生きていけてる。寂しくないかどうかなんて、今私が生きていることこそが証明になるだろう」

「え……?」

——一人? 生まれた時から? 彼には両親が——いない?

「おい、どうしたんだよ。急に暗い顔になりやがって、驚いたり悲しんだりして、忙しい奴だな」

「ごめんなさい。あなたの事も知らずにを言ってしまって」

「何自分のせいみたいなことを言っている。気にするな、私の家庭の事なんか。私にとって親なんて最初からいなかったようなものだ」

「お父さんやお母さんに會ったことないの?」

「ああ、父や母の顔は寫真でしか見た事ないな。知ってることと言えば、互いの名前くらいか。だが父のことはしは知ってるつもりだ。あいつから聞いた限りな」

あいつ? あいつって? 私は一瞬誰のことか思ったけれど、私が知るわけないと考えるのを辭めようとした時、記憶がフラッシュバックした。

「……いや、まさかね」

「どうした? アンタ、あいつって誰のことか知っているのか?」

「ううん、何でもない。友関係が皆無のあなたにまさか白臣塔なんて人が知り合いだなんて……」

「! 何 ︎ あんた、あいつに會ったのか!」

と急に彼が明らかに揺して私を問い質してきた。

「こっちに來い! 早く來い! 直ぐに來い! 私のそばから離れるな!」

と彼が私の腕を鷲摑みし強引に引っ張り、何処かへ足早に歩き出した。

「きゃッ! ちょっと山くん! 痛いよ! どうしたの ︎」

「五月蝿い! 騒ぐな! 黙って私に著いて來い!」

冷靜そうな彼がここまで取りしているなんてよっぽどのことなのだろう。もしかして私は関わってはいけない人と関わってしまったのではないだろうか。また後から後悔してしまうようなことをしてしまった。もうし先のことを考えて行しなければ。

「ところで山くん、私を何処へ連れて行くつもり? 流石にそれには答えてもらわなきゃ、親にも連絡いれないといけないし、困るよ!」

すると彼は、このような狀況でなければ、聞いたの子なら誤解しかねない場所と連れ出した目的を言ってきた。

「私の住んでいるアパートだ。今夜はそこで泊まってもらう」

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