《高校生である私が請け負うには重過ぎる》第21話 解せぬ

時刻は午後九時半。かなり遅めの夕食を食べ終え、彼が自分の分と私の分の食を洗っているところで、彼がこんなことを訊いてきた。

「ところで、あんたは今夜その恰好で寢るつもりか? 流石にその恰好のままじゃ眠れないだろう? というか私が気になって眠れぬ」

そう私は本來家に帰る筈だったのだけれど、彼に連れられ直接ここに來たので、朝自宅を出た時のままの恰好――つまり制服姿だったのだ。

「いや、大丈夫だよ。別にパジャマじゃなくても眠ることは出來るし」

「む? 年頃のがそのような橫著するな。寢巻くらい著て眠るのだ」

この部屋に來てから解ったことだけれど、彼は妙なところで気が利いているというか、優しいと言うか、たまに気を遣ってくれるのだ。それが普段の冷たい態度とのギャップもあってか、この上なく嬉しかった。

「この時間帯だと、リサイクルショップくらいならギリ開いてるか……」

「え そんなのいいよ! そんな事でお金使わないで!」

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「私が気になると言っている。取り敢えず急いで行ってくるから絶対に外に出るなよ」

と念を押し、彼はまた出て行ってしまった。また私は一人になってしまった。

どうしよう。何もすることがない……。

先ほどから言うようにこの部屋には必要最低限のしか置いてなく、娯楽などが一切なのだ。テレビも、トランプも、本も、一切合切。

そんなことを考えていたら、突然部屋のドアが勢いよく開かれた。

「きゃっ 」

あまりに突然すぎて若干ソファから腰が浮いてしまうほど飛び跳ねてしまった。そこには、息を切らして呼吸を整えている山くんがドアの隙間から顔だけ出していた。

「ど、どうしたの 景浦君!」

「ハア……ハア……あァ……! 言い忘れたことがあったが……、風呂だったら勝手に湯を張ってってもらって結構だ。その方が私が帰ってきた後直ぐにれる……。帰ってきた頃には汗だくだろうからな……!」

それだけ言うと彼は扉から顔を引っ込めて、扉を閉めて再び行ってしまった。

何事かと思ったらそんな事だったのか。無駄にびっくりして余計な壽命をめてしまった。

けれどおですることが出來て良かった。お風呂にることだ。

男子の部屋に泊まる子がお風呂にらない訳にはいかない。流石にそれは彼に失禮だし、はしたない。

私自も嫌だし例えその日一日汗をかかなかったとしても必ずりたい。潔癖癥という訳ではないのだけれど、きっとること自が義務化してしまっているのかもしれない。

私は早速ソファから立ち上がりキッチンの隣にある小部屋に向かった。きっとそこが洗面所だろう。ドアを開けるとそこは思った通り洗面所だった。意外だったのはこのアパートの洗面所はお風呂とトイレが一型しており、所謂いわゆるユニットバスになっていた。

気になっていたのだけれどこのアパートは造りといい部屋の大きさといいまるでホテルみたいだ。

——もしかしたらここは昔ホテルだった場所を改裝した建なのかもしれない。そう考えるのが妥當だろう。古びたアパートでユニットバスなんて中々ないもの。

浴槽はアパートの雰囲気に合わせてか蛇口とシャワーが一となった洋式のバスタブだった。私は蛇口を捻り出てきたお湯の溫度を確認する為手を差し出す。

うん、丁度いい。この溫度でお湯を張ろう。その間にこのユニットバスの構造も確認してみよう。

バスタオルとタオルは共に何の飾り気もない白で丁度二人分計四枚あった。幾帳面且つ綺麗に壁に掛けてあり洗濯もしてある。

そう言えば部屋も割と綺麗だったし、料理も出來るしその後の洗いも汚れ一つ無かったし一人暮らしをしているとはいえ彼は家事スキルが非常に高い。これではもし彼が將來結婚したとしたらお嫁さんの仕事が全て奪われてしまいそうな気がする。家事をすること自の仕事だと言ってもいいのに。あんまりだ。

「……………………………………………………」

どうでもいいか。私が結婚するわけでも無いんだし……。お湯がいっぱいになるまでもうし時間が掛かりそうだ。引き続き観察をしてみよう。

この部屋の広さ的にはまあ、二人以上で這るにはかなり狹いかも知れない。バスタブが大きくて部屋の三分の二程を占拠しているからだ。用を足す時は理的に肩を窄める必要がある。それくらいトイレとバスタブの距離が近い。勿論洗面臺との距離も近く人一人やっと這れるくらいの隙間しかなかった。設計ミスもいいところだ。

ボディーソープとシャンプーは何故か両方とも用が置かれていた。洗面所の下の戸も失禮して調べさせてもらったけれど詰め替え用も用のそれだった。私的には嬉しかったけれど彼がこれでや頭を洗っているなんて意外の『い』の字しか出てこなかった。

気が付いたら湯船にお湯がなみなみ張っていた。急いで止めたけれどこれではる時に溢れてしまう。水道代を勝手に増やしてしまった。申し訳ない。

そんな事より彼が帰ってくる前に早く浴を済ませよう。眼鏡を外し髪を束ね著ていた制服と下著をいだ。

……までは良かったけれどここであるものが無いことに気付いた。風呂桶が無い。これでは掛け湯が出來ないしを洗った時に石鹸を洗い流せない。

一人暮らしだから掛け湯という概念がなくなってしまったのだろうか。う~ん……。

シャワーを使おうにもバスタブと一化しているから取り外しができない。う~ん……。

「あんた風呂長いな。いつまでっているのだ?」

「へ……っ 」

突然後ろから不意に話しかけられたので振り返る。

そこには當たり前のように山くんが立っていた。解っていることとは思うが今私は一糸纏わぬ姿に、生れたままの姿に——全になっているのだ。

「な……! う…… うぅ…… 」

「ん、どうした? 何か蟲でもいたか? たまに出るのだ、ボロボロだからなこのアパート——」

「きゃああああああああぁぁぁ 」

「うぐっっ…… 」

私は彼に思い切り平手打ちをかましてしまった。掌の手首に近い位置のところが當たってしまったためどちらと言えば掌底に近い形で彼を引っ叩いてしまった。

相當な力が出てしまっていたのか彼の百七十五センチという高校一年生としてはやや高めのが橫に向かって傾くほど宙に浮きドアが開いていたのでそのままの居間の床に叩き付けられた。

彼はあまりに突然の衝撃に耐えられなかったのか気絶してしまってかなくなっていた。

それよりも見られた! というか何故見られた 有り得ない! 有り得ないよ

の子の浴中に平然とした顔(見えてないけど)で浴室に這ってくるなんて! 非常識にも程がある。今すぐに気絶した彼を叩き起こしてこのことについて徹底的に問い詰めたいところだけれど、私はまだ湯船にすら浸かっていない。

私は仕方なく掌を使い掛け湯をし湯船に浸かった。や頭を洗うのは湯船の中で行った。顔が耳まで終始真っ赤だったのは恐らくお湯の溫度が高すぎた所為でも長くお風呂に浸かり過ぎた所為でもないことに後から気が付いた。

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