《高校生である私が請け負うには重過ぎる》第22話 センス

についた水滴を湯冷めしないように丹念に拭き、髪をドライヤーで乾かした後、眼鏡を掛け、下著をつけ、制服に著替えた。的にはサッパリとしたけれど神的にはまだサッパリとはしていなかった。

扉を開くとそこにはベッドの上で頬を痛そうにでながら橫になっている彼がいた。重力の関係でフードが下がりもうしで彼の顔が見えそうになっているけれどそれでも見えない。男子が子のスカートの中が見えそうで見えないというもどかしい気持ちがしだけ理解できた気がした。

すると私に気が付いた彼は起き上がり、開口一番こう言った。

「漸く出てきたかこの隠れ馬鹿力

酷い、酷過ぎる。私だってびっくりしたよ、初めて出したよあんな力強い平手打ち。まさか男の子を気絶させてしまうくらい力が出ていたなんて思わなかったよ。

「能ある鷹は爪を隠すとはよく言ったものだ。まさかそんな力をめていたとは……我が助手ながら、恐れった」

「褒め言葉としてけ取っておくけれど、それよりも何よりも山くん、さっきのあなたの行はどういう事だったのかな? 出掛けて行って帰ってくるまで隨分と早いお帰りじゃない? まさかとは思うけれど、こういう事を何処かで企んでいて、私をお風呂に行くように催促したんじゃない? そういうの良くないとおもうけどな」

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「む。見當違いにも程がある。アンタの貧相なに興味などない」

「じゃあ、説明してくれる? 洗い浚い、余すところなく、徹頭徹尾」

「リサイクルショップなんて私の腳なら往復で二分も掛からない、だから私は直ぐに帰ってこれた汗だくの狀態でな、三十分ぐらい待ったけどアンタがいつまで経っても出てこねぇから風呂の扉をノックした、だけど返事がないから溺れ死んでるのではと危懼して扉開けたらアンタが真っで突っ立てた、そこからの記憶は曖昧で憶えてない以上」

話し始めてから終わりまで約十秒で言い終えた。早口過ぎて聞き取れないところがあったけれど要約すると彼は私を心配してくれて安否を確認しに來た、と言ったところだろう。

嗚呼、そんな人に対して反的とはいえ私はあろうことか気絶させてしまう程の力で平手打ちをしてしまったなんて。よく見れば彼の顔にはまだ私が叩いた手の痕が痛々しく赤く腫れて殘っていた。何故だろう、端から見れば彼の方が悪い筈なのに。何故だろう、私は彼に謝りたくてたまらない。

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「ごめんなさい、そうとは知らずにいきなり引っ叩いちゃって…」

謝ってしまった。本當に私は押しに弱いと言うか、甘いと言うか。

「まあ、不可抗力だったとはいえ、私も悪いことしたと思う。それに関しては謝ろう」

彼も謝ってくれた。何故だろう、何だかとても嬉しい。そして清々しい。

「あと安心しろ。帽子とフードでよく見えなかったし浴室も湯気が立ち籠めてて余計視界が遮られていた。アンタのはほとんど見えてなかった」

と彼は言うけれど、何だか彼の口調はし殘念そうに聞こえた。そこら辺はやっぱり男の子なんだなと改めて思った。

「じゃ、もうケンカは終わりね。さ、著替えるから買ってきてくれたパジャマ頂戴」

「は? パジャマ? 寢巻など買ってきてない。寢巻だったら私のものを貸してやる」

「え? 何言ってるの? あなたパジャマ買ってきてくれたんじゃないの? 自分が気になるからって言って……」

「ああ、俺が気になるって言ったのは寢巻の事ではない。とにかくつべこべ言わずこれ著るのだ」

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と言い彼が私に差し出したのは、パジャマどころか上著一著もりそうにない程の小さな黒のビニール袋だった。この瞬間、私は嫌な予がした。

私は黙ってそれをけ取り中にっていたものを取り出す。すると中から出てきたのは、かなり扇的なデザインのブラジャーとパンツだった。は黒一でどちらもレース編みになっており部と首が見えてしまいそうなくらいけていた。

「一日つけた下著をまた明日まで付けるなんてアンタだって気持ち悪いだろう? 私とてそんなと一緒にいたくない。気持ち悪い事この上ない。そいつは目に付いたものを適當に選んで買ってきた。著れれば何でも良いだろう?」

適當に選んできた割には悪意をじる。私は聲を荒げて反論せずにはいられなかった。

「良い訳ないでしょ! こんな厭らしい下著著れないよ! そもそもあなたのパジャマを借りる事自まだ頭の中で整理できていないし!」

「それじゃ、私もそろそろ風呂ってくるから、それまでに著替えておけ。私の寢巻はクローゼットの右から七番目にかけてあるからな」

彼はそう言い逃げるように浴室に這っていった。がしかし、何かを思い出したかのように再度顔を出して彼は鬼の形相(多分していた)でこう言った。

「絶っっっっっっ対にここは開けるな……? 風呂にっている時ほど無防備な狀態はないからな。素顔見た瞬間眉間に風が開くと思え?」

その臺詞を言う暇さえなかった私の立場はどうなるのだろう。それだけ言うと彼は顔を引っ込めて浴室に再度這っていった。

ふう、さて折角彼が買ってきてくれたのだし、この下著をに付けない訳にはいかない。先ずはパンツから……。

「こんなけのパンツ穿いたことないよ……」

思わず獨り言がれる。本當に彼は何を思ってこの下著を買ってきたのだろう。しかもリサイクルショップの中古品なので勿論この下著は元々誰かが前に穿いていたもので……。

「………」

いけないいけない。そんな事を考えだしたら余計に穿くのが躊躇われてしまう。もう早く穿こう。

彼の浴時間がカラスの行水並みに短いかもしれないし。

私は自分が穿いていたパンツを下ろし彼の買ってきたパンツを穿いた。私が元々穿いていたパンツは白のショーツで上部に青の小さなリボンがあしらわれたものだったのだけれど、無論その素材で出來たものはけてはいないわけで、つまり平たく言うとこのパンツを穿いた瞬間通気が格段に跳ね上がった。

かなりスースーする。今の季節が春で良かった。冬などの寒い季節には絶対に穿きたくない。

次はブラジャーだけれどこれはこれでかなり刺激的だ。もうほぼ付けるが意味ない。だってけてるんだもの。先ず付けれるかどうか心配だ。自慢じゃないけれど私の房は人よりも大きい方だと思う。下著を買う時にはいつもどんなものを選ぶべきか悩んでいるのだ。このの栄養がもうし脳味噌の方にいってくれればどれほど嬉しいことか……。

制服のブレザーをぎ、その下のブラウスもボタンを一つ一つ外し上半下著姿になった。既につけていたこれまたシンプルな白の飾り気のない地味なブラジャーも外しけブラを先ずに宛がってみた。

……あれ? 意外とピッタリ? 私はブラ紐を肩に掛け後ろのホックも付けた。ピッタリだった。偶然にも。全くきつくない、かといってぶかぶかというじでもない。完全に私の囲にフィットしていた。通気は相変わらず抜群だけれど。

こんな偶然は有り得るのだろうか。今思えばパンツを穿くときもすんなりと穿けた。まさかとは思うが、彼は目測で私のスリーサイズを測っていた瞬間があったのだろうか。それも服の上から。改めて本當に彼は凄い。どれ程の鋭い観察眼を持っているのだろう。別の意味で鋭い時もあるけれど、そういった意味での鋭さは関心が持てる。けれどの子のスリーサイズを見るというのにはちょっと悪い意味で心させられるよ。

次に私は彼に言われた通りクローゼットを開け、右から七番目の服に手を手を掛ける前にクローゼット全を見て思わず目を見開いた。そこには勿論彼の言った通りの位置に彼が就寢する時に著ているであろう灰白のスウェットが掛かっていた。一目見て分かった。

何故右から掛かっている服を數えることなくその服がパジャマかと解ったと言うと、答えは単純、その他の服が全て黒だったからである。

パジャマを含めてクローゼットには十二著くらい服が掛かっていたと思うのだけれど、その他の服は全部彼が學校に來るとき學ランの下に著ているフード付きの黒のスリムパーカーだった。全く同じ、彼が今ここで著ていたものと全く違わない。パーカーの中から黒のスラックスも裾の部分が顔を覗かせている。學校が無い時はこのズボンを穿いているのだろうか。そしてそれぞれの上下一式の真下にはもうここまで來るとお約束。黒のキャップが十一個綺麗に並べてあった。

怖い。怖過ぎる。判を押したようにここまで同じを揃えなければならないその妙なこだわりが解らない。

そして何故スウェットだけ灰白という微妙なにしたの? そこはせめて灰とか近いにすればいいのに。

逆に考えてみれば、他の服が同じものだからせめてパジャマくらいは違うにしようと思ったのかもしれない。それだったら明度の関係で白にすれば良かったとふと思ったのは私だけだろうか?

まあ、気にしても仕方ない。早く著替えよう、もうそろそろ彼も上がってくるころだし。

著替えた。やはり彼と私は長差が二十センチもあるので彼のスウェットは大きい。袖とズボンの裾が余ってしまい裾に関してはやや引き摺るように歩かなければならない。

私がスウェットに著替えて數分後、山くんが漸く浴室から出てきた。何だかんだで彼も三十分くらいお風呂に浴していた。私が浴していた時間と大して変わらなかった。

相変わらずフードと帽子は欠かせないようだ。お風呂に這る前と全く変わってないので、浴したのかどうか怪しいけれどそんな事は全くないだろう。

橫切った時に石鹸のいい香りがほんわかと香った。

他に変わったところと言えば服が洗濯済みか否かである。いや、それは多分解らない。何せ同じ服で、時間も経ってるだろうし。

「さて、そろそろ寢るか……、もうすぐ十一時だしな」

「うんそうだね。って山くん、意外と早寢なんだね」

「逆にアンタはどれだけ遅い時間に寢てるのだ。本當ならもう十時には床に就いてる。と言うかは寢てる暇などないのだ。いつ依頼の電話が來るか分からないからな」

「う~ん、こんな時間に外に出歩いてまであのり紙を見ている人はいないと思うけどなぁ……」

「そんなこと分からぬであろう。あの高校にだって不良の一人や二人いるだろう? そんな者たちが夜中に出歩いてたって不思議ではないのだ」

「あの高校は県でも有數の進學校だから、もしいたとしてもその一人は景浦君なんじゃないかと思うけれど?」

「あ?」

シンプルな「あ?」だった。けれどツッコミにしてはとても凄みが効いていてし恐怖をじたので、

「ごめんなさい」

気づいた時には謝っていた。シンプルな「ごめんなさい」。

「ベッドはアンタに譲る。電気消してさっさと寢る。明日も早いぞ」

「ああ、ごめんなさい。じゃあ、電気消すね。お休みなさい山くん」

彼は何も言わずに、ソファの上で靜かにしていた。

そのまま眠りについたようだった。私は部屋の真ん中にある電燈の明るさを調節する紐を引っ張り部屋の電気を消して床に就いた。

しかし、私は彼のベッドの上で橫にはなったけれど中々眠りにつくことが出來なかった。

自分の家のでなければ眠ることが出來ないという訳ではなく、実際私はそういった事は一度もないのだけれど。

とにかく今日はこの部屋でんなことがあり過ぎた。學校で起こった出來事なんてもうほぼ薄れて記憶から無くなりかけているくらい。

今日の一日を一言で言うならば——山奇鬼という人がどういう人格なのかを概ね把握することが出來た一日。と言うべきだろう。

彼の助手になった日にも言ったと思うが、彼の助手となった限りは彼のことを識しる必要があるのだ。彼のことを知らずして助手は務まらない。そして今日私が知った彼の人格は一言で言い表すのは難しい。

なので、次章から一つずつ整理していこうとおもう。

皆さん暫くの間お付き合いして下さい。お願いします。

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