《高校生である私が請け負うには重過ぎる》第27話 準備

彼の姿を見失って暫くして彼から攜帯で連絡があり「遅い」と一言お叱りをけた。

相変わらず無茶を仰る。男子の腳力に子である私が追いつける筈がない。しかも恐らく彼の腳力は一般の男子高校生の比ではない。五十メートル六~七秒臺で走れているのではないだろうか。陸上競技部にれば間違いなくエースになれるレベルだと思う。

余談はさて置き、彼からある場所で待っているので早急に來るように指定された。その指定された場所が何と隣町にある料品店だった。私達のいる町から隣町までは車でも二十分は掛かる距離だ。そんな所まで走って行った彼の持久力が凄い。冬頃に行われる育の持久走の授業が楽しみだ。

流石に走っていける距離ではないので、私は電車を使って隣町まで向かった。

電車を降りスマホに搭載されているマップの機能を使い彼の待つ料品店の名前を検索しその場所へと早々に赴いた。ここまで時間にして約十五分から二十分くらい掛かってしまっていただろう。待たされるのが嫌いな彼のことだ、きっと腕組みをして足をバタバタとさせながら歯ぎしりをして待っているのだろう。そう思うと自然と足取りも重くなっていく。

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彼が指定された場所へと到著。彼はお店の口付近の壁でもたれ掛かりながら待っていた。

「遅かったな。ほら、早速これに著替えるのだ。この店の試著室で著替えて來るといい」

思ったよりも怒ってこなかった。電話口ではあんなに怒っていたのに。

彼に渡されたのは面接や就職活の時に著て行くような用スーツ一式だった。

アイロン掛けされたように皺一つなく綺麗にクリーニングされて幾帳面に畳まれていた。昨日に引き続いてまた家事スキルの高さをまざまざと見せつけられ若干凹みつつあったけれど、私はお店の中に這り試著室でスーツに著替えた。

スーツのは黒で余計なストライプなど一切っていなく落ち著いていた。勿論言うまでもなくサイズはピッタリだった。

制服を持ち外に出ると山くんは「フム、助手のじが出ていいではないか」と微妙な褒め言葉を贈ってくれた。喜んでいいのかどうか解らない。

「それでは行くぞ。アンタにやってもらいたいことはこれからだ。その事は歩きながらゆっくり話そう。付いて來い、従順なる我が助手よ」

そう言い彼は何処かへ向かって歩き出した。私はいつもの如く彼の一歩後ろを付いて行く。ほんの二十分前まで取るも取り敢えずと言うじで急いでいたのが噓のようにスローペースだ。一この空白の二十分の間に何があったのだろうか。

「よし、そろそろ目的地に到著だ」

「え? 早くない? まだ歩き出してから三分も経ってないけど……」

「だからだ。これは嬉しい誤算だった。まさかこんな近くにあの店があったとはな。ほら、あとこれとこれをに著けろ」

彼に手渡されたものは黒縁の眼鏡とワイヤレスイヤホンマイクだった。何故こんなものまでに著けなければいけないのか未だに理解不能だけれど今は黙って従うしかなった。

イヤホンマイクは當たり前だがすんなり付けることが出來た。

けれどこの眼鏡にはし抵抗があった。いくら彼でも私の視力までは把握できていないだろうと思ったからだ。恥ずかしい話私はい頃から重度の近眼で眼鏡なしでは歩くことすらままならないのである。

私は自分の眼鏡を外し彼から渡された眼鏡を目を瞑りながら恐る恐る掛けた。

目をゆっくりと開くと――視界良好。

遠くで走る車の車種までしっかりと確認できる。

「どうだ? 目の見え合に変わりはないか?」

「……気持ち悪い」

「ん、何だ? そんなに度がキツかったか? う~ん、私の勘も鈍ったものだ」

「そういう事じゃなくて……、もういいよ。樸念仁なんだから……」

「何なのだ一……」

何なのだはこちらの臺詞である。

もう気持ち悪い気悪い気味悪い!

スリーサイズならまだ目測で測れるかも知れないけれど視力に関しては私の測定票でも見ない限り解る筈がない! 鳥が腕全に浮き立っているのがスーツ越しでじられるほどだった。

「さて店の裏手に著いたぞ、これからアンタにしてもらう事を一度だけ話す。聞き逃そうがそびれようが二度と言うつもりはない。何処で誰が聞いているか分からないからな。イヤホンを付けていない片耳でよく聞いておくのだ」

「話は聞くけれど山くん。それは私がこの格好をしていることに関係があるの? それに私が今から這るお店ってどんなお店なの? さっきから頑なに教えてくれないけれど」

「大ありだ。関係しかない。あと店に関しては這ってからのお楽しみだ。いいか、これからあんたは俺の指示通りにいてもらう。指示はその耳にしてあるイヤホンから送る。店にっても妙な行はするな。私が指示したことを忠犬の如く従え。絶対に勝手な行をするな。あと店に這る前……いや今からでいい、その眼鏡のヒンジのところにボタンがある。押しておけ」

言われた通りヒンジのところを探ると僅かな出っ張りがあった。押すと、ピピッという小さな音が鳴った。まるでビデオカメラの録畫が始まったような音だった。

「その眼鏡には々細工を施してある。ブリッジのところに超小型のカメラが仕掛けてある。さあ、制服は預かっておくから行くのだ。アンタなら出來る、委員長の中の委員長だろう?」

結構気になることを結構サラッと言い私を微妙な応援で送り出した。私は彼に制服を預け這ってからのお楽しみだと言ったお店の裏手から出てそのお店の前まで來た。

なんとそこは——寶石店だった。

この瞬間私は彼が今までに発した言葉や行を思い返していた。

下見……諸々の準備……重要な任務……私にさせた正裝……眼鏡に仕掛けられたカメラ……。

私は悟ってしまった。彼は――強盜をする為に現場の下見を私にさせようとしていたのだ。

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