《雪が降る世界》第22話 〜至高の一時〜
「あら、何そのネックレス。」
「。」
昨日の水族館が夢じゃないかって朝から自問自答してこれ見て現実だって分かった。瑠璃と同じネックレス。
あいつにとって、いい日になったかどうか。俺はめちゃくちゃ楽しかったけど。
あれが、もう最後だと、先生に言われて本気で泣きそうだった。いや泣いてないよ?でも俺に、頑張れるだけの活力をくれて、高校生らしいことさせてくれた瑠璃とはもう一緒に外で遊ぶなんてできないって斷言されると。なんかこう…蟠りが殘る。
選択は間違えてはなかったと思う。何よりも、イルカだけで喜んで、魚のことなんて全く知らない瑠璃がいっぱい笑ってくれてよかった。あの笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。今までいろんな人がスーパースマイルでよってきたけどどんな風に笑ってたかなんて覚えていない。それなのに、なんで。
「こま…顔赤いよ?」
「へ?!」
「白いからすっげーわかりやすい。」
そこはいらねぇ。白いからとか余計だ。喧嘩売ってんのか。
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「なんかもう…変。」
「なんだよ。好きな子?」
「は?!」
「見りゃ分かるわ。瑠璃って子だろ?俺と春瀬はあったことないけど。」
好き?俺が?冗談じゃない。だって瑠璃は…。
「う、くっ…。」
「え、え?!ちょ、誰かビニール袋!持ってきて!」
だって瑠璃は澪と同じなんだよ?駄目なもんは駄目…。わかってる。
「はぁっ、はぁっ」
やべぇ止まらねぇ。ビニール袋…!なんであんだけで過呼吸になるかな…。超苦しい…。
「こま…。」
んー…。誰かが呼んでる。あれ、今何の時間?
「目、覚めたか。もう部活終わったよ。」
「ん…。ここどこ?」
「保健室。加がお姫様抱っこで連れてきてたぞ。あいつも春瀬も今日は帰ったけど。」
…?もうそんな時間か。いやちょっと待て。
「お、お姫様抱っこ…?俺、そんなに小さいか?」
「まぁ加は一番高いからな。肩幅も広いし。とりあえず帰ろ。家まで一緒に行ってやるから。」
「ありがとう…。」
何が起こったんだっけ。瑠璃…。あぁ思い出した。…いや思い出すんじゃなかった。
「う、く…!」
「おいおい…。何があったんだよ。」
って背中をさすってくれる七海…。ごめん、ただこじらせてるだけ。
「今は、言えない…。」
「そうか。」
七海の無駄に詮索しないとこ好きだわぁ。よかった?このシチュエーションじゃ何とも言えねぇな。
ただこれが続くとがもたない…。
「こま、言っただろ?それでも大丈夫かって。」
「あぁ、言ってたな。」
「もし、大丈夫じゃなかったら。」
「うん。」
「もし、大丈夫じゃなくても、お前は1人じゃない。いいな?」
「…?」
「だから、加もいるし春瀬もいるし、もちろん、俺もいる。誰もお前が壊れそうになった時、見捨てるやつはいない。」
「…。」
「安心しろ。」
こいつ、ホントに同級生か?言ってることが深すぎるって…。
「…そっくりそのまま返す。」
「ん?」
「七海だって、俺と大差ないだろ。多違いはあるけど。」
「そうだね。でも、俺がこま達にSOSを出した、その時は。」
「うん。」
「もう、今までの俺じゃ、いられないかもしれない。」
うん家庭事的なやつか?なんで結論だけ言うんだ?過程を言ってくれ。そこまで賢くないよ。しかもそこまで崩壊するくらいなのか…。
「じゃ、また明日。」
「おう。」
不思議と心が落ち著いていく…。大のオーラってすごい。
ってか七海、いつか話すって言ってるやつ結局話してないよな。さっきの下りでいけるかと思ったが…。さすがにガードがいか。
お、瑠璃からLINE來てる。げ、結構前じゃん。もう寢てるか…?
あ、澪からも電話ってる。何、今日なんかあったの?
一応かけ直しを…。
「もしもし?なんかあった?」
「なんかあった?じゃないよ…。倒れたって加君から。大丈夫?」
お前らいつの間に連絡先換してんだよ。どんだけ仲良くなるの速いんだよ。
「…あぁ、平気平気。澪はどう?」
「まぁ今のところ元気にやってるよ。大丈夫。」
「そう。よかった。次行くのは多分來週になると思う。」
「了解。」
今週はバイトのオンパレードだからな…。奇跡的に今日はなかったが。なんでれてなかったんだろう。いつかの自分に聞いてみたいものだ。
お、なんか注文いっぱい來てる…。口コミか?まぁまた作るわ。今日は、うん…。もう休みたい。學校行った意味な。
念のため加に連絡しとこ。
'今日ありがと。'
'大丈夫か?!'
わ、思った以上に返信早い…。暇人かよ。'あぁ'
俺ネタだめだなぁ。あんだけで倒れてちゃこれから順応できねぇ。下駄箱にってる手紙とか。機の中もあるか。
ただの紙切れとか言って捨てたら可哀想だしな。ホントにどうしたらいいんだろ…。
「こま、顔悪いよ?昨日は真っ赤だったのに…。」
「昨日の夜も今日の朝もご飯食べてない…。あぁ…。」
「ちょ、七海達んとこ行くよ!」
「はぁ?」
もちろんガタイのいい加に勝てるわけもなく…。強引に連れてかれた。
「あ、おはよ。無事か?」
「朝ご飯持ってない?」
「えーと…。晝は持ってるけど…。春瀬、持ってないか?」
「サンドイッチ食べる?」
な ん で 持 っ て ん だ。
「すげえ、さすが王子。めっちゃ味しい。」
こんなの俺じゃ作れない…。久しぶりかも、バランスいいご飯。俺も料理できるけど。やっぱ家政婦クオリティ。尊敬するわ。
「瑠璃ー。ごめん、なかなか來れなくて。」
「あっ、ううん、別にいいよ!來てくれてありがと。」
なんつーか…安心するな…。元気そうで。
當然そんなことはないんだが。
「それ、學校に付けて行っていいの?」
「駄目に決まってんだろ。」
「えっ。」
「けど、その…夢じゃないかってくらい、楽しかったから。外せなくて。」
うわぁ何言ってんだ俺は。確かに全然間違えてはないんだが…。なんというか、もぞもぞするな。
それからどれくらい経ったかは知らない。無言の靜寂とそれ以上の安堵…。こんなに居心地が良かったのはいつぶりだろうか。いや、初めてか?
限られた時間、希を持てない人がもつこの力強さは、一なんなんだ。何か、俺にも、きっと七海にも分からない人間味なんだろうか。學力で補えない何か。そんなの、難しすぎるだろ。
「璃久、大丈夫?顔悪いよ?」
「え、あ…いや、何でもない。」
「そう?私、ずっとここにいるから、苦しかったら來てもいいんだよ?」
「…っ、あ、うん。ありがとう。」
それ言うの逆だ…。なんで俺が相談するんだよ。お前よりは自由だから…!
ってか苦しかったら、なんて…。そんなこと言うなよ。もっと來るわ。
「今日は學校どうだった?」
「どうって…。お腹空きすぎて死にかけた。」
「えっと、璃久食だよね?」
「まぁ2食抜いたからな。」
「ちゃんと食べてください。」
「いろいろあんだよ…。」
「そっか。私より先に死んじゃ駄目よ!」
「おう。」
やばい泣きそう。
いや待て。俺は瑠璃の余命、知らない。ウル…なんとかって結局理解できなくて。これ聞いて大丈夫か…?
「…変なこと聞くけど、瑠璃ってさ。」
「今年だよ。」
「ん?!余命…?」
「だって璃久鈍いもん。変なことなんて余命くらいでしょ。」
鈍い…?違うそこじゃない。
今年?今年って澪もじゃん。俺どうしたら…。
「でも璃久が來てくれるようになってからすごく楽しい。ぬりえしてるみたい。」
「意味分かんねぇ。」
つまりモノクロからカラフルになったってことか?それなら俺もだよ。
「俺も有彩がったのは嬉しい。」
「よく分かんない…。」
あ、そうだよな。だってハコフグ知らなかったんだもんな。ごめんごめん。
「いいな…。あれ見て、制服來た人達が帰ってる。私も制服著てみたい…。」
「セーラーとか?」
「學ランの子バージョン的なやつ。」
???
「そんなの見たことねぇが…。上著だけ、著てみるか?まぁ俺もセーラーだから本は無理があるけど。」
「ほんと?!著たい!」
制服にそこまでときめくのは恐ろしいな…。
「わぁ、意外とおっきい。」
「だって俺男…!」
「あ、そっか!」
可いかよ…!寫真撮ってやるか。
カシャ──…
「へ?!何?」
「いいじ。」
「SNSとかやめてね?」
「なわけ。俺だけのもの。」
「またそういうことをサラッと言う…!」
「ははは」
これはダメだ可すぎる…!くっそ楽しい。
「璃久も!璃久もって!」
「ん?何に?」
「寫真!」
ここに來てツーショットか…。なんかいろいろツッコミ所はあるが目を瞑るとしよう。
「仕方ねぇなー。」
カシャ──…
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