《雪が降る世界》第29話 〜最期のお願い〜

「大晦日の前って何もねーよなー。」

「「「そりゃお前だけ凡人だから。」」」

俺と七海は仕事じゃないけど予定まみれだし。春瀬は海外に行くらしいし。

「加って蕎麥食べるのか?」

「逆にこまは食べねぇの?」

「基本夜は抜いてるからなぁ。」

「それも節約目的?」

「いや小學生の時からずっと。」

「育ち盛りにそんなことするからチビなんだろ。」

「やめてくれ。」

久しぶりに、公園に來たかもしれない。常にバイトだったからなぁ。正社員っていいね。まぁまだ全然ではあるが。七海のおかげで飛ぶように売れてるらしい。俺もよく聲かけられる。もちろん応答はしない。

こんなに目立つ見た目だし見つけやすいのは分かるけど一応高校生だ。犯罪に巻き込まれねぇように。だいたいみんなおかしいって。同じ人間なのに…。そんなに珍しいかよ。確かに七海は珍しいが。外國に行けば俺みたいな奴はたくさんいるだろ。

「こま、これ可い。」

「やめて。」

モデルになって加が関わってこないわけがない。いじられっぱなしだ。今月のはお正月イメージで袴だったのに七海がかっこいいから俺が可く見えるとのこと。ふざけんじゃねぇ。じゃあいつも部活でも可いとか思ってんのかこいつ。俺と七海を比較するな。顔面偏差値が天地の差だろうが。 

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「寒いな…。」

「なんでこんなとこで喋ってんだよ…。」

「移するか?」

「どこにだよ。店がほとんどいっぱいだったからここにしたのに。」

「「「こまの家。」」」

「また?」

「みんなコーヒーでいい?」

「ココア。」

「レモンティー。」

「ブラック。」

「わりぃ春瀬、ココアは常備してない。」

お前…もう高校生だよ…。子じゃないんだから。もっと大人の階段登りな。

「てかさー、澪君大丈夫なん?」

お前…デリカシー叩き込んでもらえよ。

「なわけ。」

「え。」

「黙っとけ。加に分かる世界じゃねぇ。」

なんか、すげぇ嫌な予がする。今まで加の勘が外れたことないからなぁ。

「ごめん、病院行く。」

「え、どうした?」

「電話鳴ってる。」

「俺、行こうか?」

「…お願い。春瀬と加は待ってて。」

七海さすがブレねぇ。これが縁ってやつか。

電話…澪の先生じゃない…!

「瑠璃…!」

「璃久っ、信號見ろ!焦るな!」

「無理無理無理無理!」

──が宙に浮くような気がした。

あれ…、どうなった…?

「危ないだろ?!…落ち著け、もうすぐだから。」

「え?え?何?」

「俺が引っ張ってなかったらあの世行きだったっつの。」

赤だったらしい。よかった、先に逝くとこだった…。

「外で待ってる。」

「ありがとう。」

中から聞こえるのは先生の聲だけ…。ねぇ、親は?

「瑠璃…!」

「璃久君…。會いたがってたよ。6分しいって言われてるから、しばらく出ておくよ。」

「ありがとう、ございます。」

もう起き上がれなさそうな瑠璃を見る。

なんでだよ…。

「あー…。俺はこの上ない程の疫病神だな…。」

「あはは…。気にしすぎ。」

「でも、じゃあ俺は…。」

俺にあってなかったら、こんな時間も取らずにあっさり死んでいけたかもしれない。

「もう最期だからさ、ひとつだけお願いしてもいい?」

「え?あぁ。できる範囲で、な。」

「キスしてほしい。」

………は?

そりゃ俺だって…。でも、瑠璃初めてだろ…?いや俺もだけど。

今からでも七海を連れてくるか?俺なんかより、ずっといい。

とか思うがお願い…。

ずっとずっと我慢し続けて、忘れかけていた覚に襲われる。

「あ、あれ…?何これ…。」

「わぁ…璃久でも泣くんだね…。綺麗…。でも、璃久はやっぱり余裕そうに笑ってた方がに合うよ。」

余裕そうにはいらねぇよ。綺麗じゃねぇよ…。

「わ、わかった…。」

この日、俺は人生の'初めて'を2つ、験した。けど、もっと遅くて良かったんだよ。

「ありがとう…。」

「こま、だから言っただろう?お前はそれで大丈夫かって。まぁ…ダメそうだけど。」

「あ…。あぁ…。」

「両想いね…。こまが泣く姿は、見たくなかったわ。でもいいよ、つらいだろ?とりあえず枯らしとけ。」

「ごめん…。」

「璃久君、この子のお母さんから。」

會ったことねぇ。瑠璃はよく知らないじだったが。手紙とか俺が読んでいいのか?

「なんて?」

「…品整理、お願いって。」

「なんつーか…無慈悲だな。」

「海外にいるからって。明日やる。」

「いや、明日はやるな。」

「え、なんで?」

「わかったな?」

「?うん…。」

──…

なぁ七海、お前分かってたのかよ。だから、明日はやるなって。なんでかと思ったじゃねぇか。

「澪…。」

瑠璃が死んだ次の日に、澪まで死んでしまった。

「まだいけるだろ?まだ、育祭も文化祭も來てないじゃん。早く起きてくれ…。」

澪の応答はなかった。ただこんこんと眠っていた。

見慣れたはずの白い布。居心地の悪い無音の空間。

やってられっかよ。これから、何を生きがいにすりゃいいんだ。もう俺が働く最大の理由がない。

「あ…そろそろかと思って來てみたけど…ごめん。」

「お前、知ってたのか?」

「んー…。昨日様子見ただけさ。」

「七海でも…助けられねぇんだ。」

「俺は、何があっても醫者にはならない。…父さんみたいには、絶対ならない。

澪のことは俺じゃ救えない。けど、今のこまなら、俺でも救える。し…真面目な話をしてやるよ。」

「?」

「お前のことと、俺のこと。」

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