《雪が降る世界》第34話 〜名前〜

かなり夜遅くになったが一応知床半島にはたどり著いた。言うまでもなく寒い。

「本當は、ダイヤモンドダストを見てしかったんだけど…。時期的に無理だな。代わりにあれ。綺麗だろう?」

いつか見た、満天の星。吸い込まれそうなほど深いくせに堂々と輝いてる。

ただそれが、例えようもなく嫌で。場違いだって、言われているようで。

「そう、だな…。」

「気にらねぇか?」

「いや別に、そういう訳じゃなくて。なんかこう…もどかしいというか…。」

「何が?」

「何って…。うーん…。足りない気がする。」

「意味わかんねぇ。」

まぁそうだろうよ。俺だってわかんねぇもん。

「しばらく待ってみよっか。ここ靜かだし。」

寒くない…?今夜なんですけど。俺だけ?

「わぁ、雪降ってきたよ!」

風邪ひく…。絶対誰か風邪ひく…。

「なんか、こまみたいだね。」

「はぁ?」

そんなに真っ白なのかと思って空を見上げ、はたときが止まる。

ずっとずっと前…まだ澪が、屋上に出れてた時…。あの夜に見た雪とそっくりだ…。

'あんな子、いらない。'

小學生の頃の家族の形が、走馬燈のように蘇る。あぁ、嫌なモン思い出しちゃった。

今降ってるこの雪が、忌々しいのに、俺みたいなのか…。分かってる。春瀬は何の悪気もなくそう言ったんだ。純粋に。

「やっぱ天気変わりやすいな…。そろそろ吹雪來るかもしれねぇ。」

「マジでか?!じゃあ早く宿に…。」

「待って。こま、本當に何もじないか?」

「え…。わかんねぇ。」

「そうか…。って、わっ!」

「急すぎるだろ…!七海、生きてるか?」

「ちょっと押されただけさ。大丈夫。」

こんな狀況で宿へ行けるのか超心配なんだけど。???!!?!!

何…?

「こま?どうした?」

「頭…痛い…。」

「と、とりあえず街に行こう。ホテルもそこにあるから。加、こま持って。」

宙に軽く浮き上がる。もうちょい優しめがよかったわ…。

どんどん気が遠くなる…。

遙か彼方からの人と、男の人の、らかい聲が聞こえた。

──ヴォール…──

あれがなんだったのかよく分からないが、どこか、懐かしい気がした…。

「おはよう。もう朝だけど…。まだ痛むか?」

…?

「あれ…。昨日の人は…?」

「え、誰のことだ…?」

「金髪の…。」

「気を失う前のことか。詳しく聞かせてくれ。ぼんやりでもいいから。」

「うーん…。びっくりするくらい広くて綺麗な草原っぽいところに人が2人立ってた。」

「他は?」

「オーロラ…見えたかも。」

草原じゃなかったかな…。どこだったんだ?牧場?

「ありがとう。その2人って、なんか言ってた?」

「ヴォールって。」

七海が直したかのように固まった。なんか意味あんのか?さっぱりなんだが。

「まさか…。」

「何?」

「ヴォール…。ドイツ語では幸せ、繁栄の意味なんだよ。それと、ノルウェー語では、春になる。本命は幸せなんだろうな。」

「それが?」

「まだ確信は持てないが…。ヴォール、それがこまの、本當の名前だ。」

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