《雪が降る世界》第37話 〜知らない世界〜

日本だけしか見てなかった俺は、七海が持ってる寫真を見てどうしようもなかった。自分もこうなっていたかもしれないと。時に殘酷な現実を語る七海の眼には、一切のじられない。鮫みたいな、鋭い眼。それが何を意味するか、馬鹿な俺にはよく分からない。ただ、俺が生きてきたこの場所は平和でもなんでもなかった。その訴えだけは、痛いくらいに伝わった。相手が七海だという、それだけで。

'いつの時代も綺麗なものはそれなりの価値がある'

間違いだった。人間なんて、ただの金儲けの道にしかならない。なぜそれに早く気づけなかったんだろう。顔も覚えていない母親達が、人生かけて守ってくれていたのに。それだけぬくぬく育った、それ以外に例えようもない。

「見たことないのか…。」

「だって…。知りたくないじゃん。二次元好きな人が実寫化嫌がるようなモンだよ。」

「…一応頭の片隅に置いておけ。俺と関わってる以上、いやモデルになった以上、世間に知れ渡るスピードは跳ね上がる。言っただろ?普通の日本人でも事件まみれだと。」

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例あげてよ。その事件。」

「…嫌。」

「頭の片隅に置いとかないといけないんだろ?」

これは論破出來たんじゃないか?引用だぞ。

「…拐。」

何かいろいろ繋がった。あの祭りか。

「それにしてはずいぶんと冷靜だね。」

「慣れって怖いよな。」

「マジでか。」

あれに限らないのな。やっぱみんなしいんだよ全國一位…。それに形だし。

「俺は能力的に使われることが多いがお前は違う。頭もありえなく無いがまずは見た目。どこに行っても白は珍しい。それよかオッドアイだから。」

「へぇ…。黒染めしようかな。」

「…それやったら瑠璃さんがっかりするんじゃないの?」

「…瑠璃?」

「え?あぁ、俺品整理手伝ったじゃん?その時に見た日記に、璃久は白くて綺麗って書いてあったよ。…帰ったら渡す。」

…………。

「なんで、お前がそんなもん持ってんだよ…!」

「待て怒るな…。迷っただけさ。俺には、人のみたいなところは分からないから…。」

「七海は、迷わないからあの地位まで上がったんだろ?俺が瑠璃のこと好きだったなんて、お前が先に気づいてた!」

「そうだけど、俺に気持ちを求めちゃアウトだって。」

「何が、アウトなんだよ。國語得意だろ?文系も完璧なんだろ?じゃあ、俺が死にたくなるくらい瑠璃に依存してたなんて、分かるじゃん!」

語と現実は似ても似つかない。そんなこと、お前の方が心得てんじゃねぇのか?」

「…。」

返す言葉もない。そんなこと分かってる。夢見たことなんて所詮は夢。

だからこそじゃないか。俺が、父さん達を苦しめたなんて、知りたくなかった。

「まぁいい。とりあえず春瀬たちに連絡して合流しよう。きっと安心するから。」

そう言って髪をらかくでた七海の目は、さっきとは別人みたいで。相変わらず、切り替えの速さといったら。こっちは全然整理出來てないのによ。

「こま泣いたの?」

「え?!なんで?」

「顔赤いよ。」

「えー、俺現在進行形でこまの泣き顔見たかったー。七海だけ見たのかよ。絶対綺麗じゃん!」

「ふざけんな。」

「いや確かに綺麗だったがやっぱり笑ってる方が、俺は好きだけど。」

「やめて。」

ここにまで來て天然とかもう…。ツッコミどころが多すぎる。

「何見てたんだ?」

「んー?」

「そのファイル。布団の上の。」

あっ、七海片付けるの忘れてる。

「見たい?」

「見たい!!!」

ミナイホウガイイヨー。

──

「え、え?趣味悪くね?」

「こまがいつかこうなる。」

それは聞いてねーな…。腕取られんのか。別にどうということはないがこれ以上ものが無くなったら神的に參るわ。

「マジか!護衛つけねーと!」

「いいよ気にしないから。片腕なんてくれてやる。」

「…それ、本気で言ってんの?」

「そりゃ…。うん、本気。」

「もっと大事にしなよ。せっかくいろんな人が助けてくれてるんだから。ね?」

王子とは違うからなぁ。俺だって保護者しいわ…。いたらどんだけ楽だったことか。

「俺らも微妙な関係だし。友達ってことに変わりはないけど加以外はレッテルがあるわけさ。」

「ちょ、俺普通なん?」

「…何か特別なモン持ってんのか?」

「學力だな!」

「…。偏差値86。」

「やめろ!」

言ってやるなよ。七海と比べちゃアウトだろ。

「警戒はしておかねぇと…。」

「そんなに酷かったの?」

「傍から見れば酷いだろうな…。」

例。」

「またか。」

拐にもいろいろあるでしょ?」

「…。こまの手前あんまり言いたくないがまず系統違うだろうし…。1番分かりやすいのは服取られるくらいか…。そしたら逃げれないし。」

お前どうやって逃げたんだよ。そこ重要だろ。濁すんじゃねぇ。

「明日は青森に行くよ。」

「なんで?北海道の用事終わったのか?」

「あぁ。親にも會えたし、かたわれのことも聞けたから。」

「かたわれって?」

そうか春瀬達は知らないんだ。やらかしたな。

「こまの雙子の弟。どっかにいる。」

「こんな人まだいんの?!」

「まぁこまほどじゃないだろうが。どっちにしてもハーフだから。」

「こまハーフなの?!」

「めんどくせぇ黙れ。」

最初も知らないんだっけ…。そういえば確かに放ったらかしだったわ。

青森なら俺らは別々で引き取られた、と。そういう事だよな。どうせなら2人まとめてさ…。お金かかるけど。

「こまみたいな不思議ちゃんだったらどうするー?」

「変な世界に引き込まれるな。」

「やめて。」

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