《雪が降る世界》第40話 〜俺の弟〜

ずっとずっと、俺の雙子のかたわれは、澪だと思ってた。七海に事実を聞かされるまでは。でもそれでも信じたくはなかった。あんなに素直でかわいい澪が、自分と同じ縁じゃないなんて。

澪に、大嫌いだと言われた時は頭が真っ白になっちゃって。我ながらブラコンだよな。もちろん記憶が飛んでるのはそれがあったからじゃない。分かってるんだよ。

思い出した。

俺は、父さんと母さんの喧嘩を、止めようとして。

二人とも、自分を見失ってて、歯止めが効かなかった。間にった結果、強く毆られたんだ。

ただでさえ他人の子供だってのに。そんな奴が、可いわけないじゃないか。

母さんが本當に嫌いだったのは、澪じゃなくて俺…。あの家に行かなければ、澪はもっと、'家族'との時間を過ごせたかもしれない。

そもそも、俺がここに來たのも母さん達が裏社會から俺を守るため。この悲劇の発端は、全部、俺だった。

「こま…。起きたみたいだな。お前、夢見て泣くとかまじでアニメかよ。」

倒れたらしく、今は時夏の家の中で橫になっていた。目が覚めると加しかいなくて。

「他の2人は?」

「あぁ、時夏といろいろ話してくるって。呼んでくるわ。」

時夏──…

何を思ってそんな名前を付けたんだろうな…。

「よかった、このまま寢てるつもりかと思ったぜ。」

相変わらず真顔で七海は告げる。表すぎ…。

「何話してたんだ?」

「んー…。家族の事とか。」

「なんでそんなことを?」

「お前が記憶飛ばしてるからだよ。」

「あ…その事なんだけど…。思い出した、と思う。」

「こりゃ長くなりそうだ…。ん?どうした時夏?」

今度は手じゃねぇ…!口パクになってる。

「え、泊めてくれるのか?」

今なんて?

「ありがと。ちょうど困ってたから。」

「なんつーか…こまは絶対拒否型なのに、こいつ超優しくね?」

「うるさい。」

その夜、だだっ広い部屋に案されて、人生初の敷き布団で寢ることに…。大地との一がすごい。平屋だし。

「あ、時夏もまだ聞きたいこといっぱいあるからここにいてくれねぇか?」

七海が言ったら斷れねぇだろ…。つーかここにいてくれとかもう…。深い意味はないけどさ。それ絶対子には言うなよ?

案の定、時夏はめちゃくちゃ焦った様子で。それがまた、加のツボにハマってしまった。

「なんか…!こまが悶絶してるみたい可い!!」

「?!なんで俺?」

「そっくりなんだもん。素直なこま。」

「素直とかやめて。俺は俺。」

「分かってるってー。」

5人で橫になって談笑してるうちに、日付けは変わっていた。そして珍しく。

「待って、七海の寢顔綺麗すぎね?」

俺より先に、七海が寢た。こんな気持ちなんだ…。悪い気はしない。むしろ得したみたいだ。

まぁ1番頑張ってくれたし無理もない。ここは謝するべきなんだろう。でもやっぱり。

「これで彼いないとかふざけてる。」

「なんで作らねぇのかな?一発でいけるのに。」

「俺も寢る。」

ただならぬバナの雰囲気をじ、早々に寢ることにした。

それから朝になると、時夏が靜かに起こしてくれた。その手があまりにもあたたかくて。しだけ、甘えたくなってしまったのは、俺だけのにしておく。

もっと不思議だったのは。

「七海起きねぇな…。」

昨日まで一番早く起きてた七海が、7時になってもまだ起きない。調不良か?

「あれ…みんな起きてたのか。」

「お前珍しいなー。」

「あ…いや、久しぶりに、夢見たから。」

「へぇー…どんな?」

「こまが、殺される夢。」

「勝手に殺さないでよ。」

驚くような設定にすかさずつっこむ。まだ生かしてくれよな。

「七海…?顔悪くない?」

「え、そうか?」

「なんか…いつもに増して白い。」

「なんでだろうな。」

そんなに変わんねぇと思うが…。春瀬が言うならそうなんだろう。

そう言ってると、時夏に呼ばれてようやくまた1日が始まる。予定だった。

まだ會って日は淺いのに。俺のかたわれの観察力に驚かされた。

…七海のポーカーフェイスをサラッと見破って、薬まで。

「風邪ひいてたんなら普通に言えよ…!」

「えー…。だってこれくらいで參ってたら春休み終わるっつの…。」

「だからって熱出したままうろうろすんじゃねぇ。」

時夏は本當に面倒見がよく、同じDNAを持っている人とは思えない。

どうやってそんなに優しくなったんだよ。

でもやっぱり雙子なんだなって。時夏は紙にこう書いた。

'俺、ばあちゃんのけ売りしてるだけだから。'

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