《雪が降る世界》第41話 〜家族の証〜

ばあちゃんのけ売り、ね…。

いいな…。俺も、そんなセリフ言ってみたかった。

「…生まれつき聲出ないのか?」

枯れそうな聲で喋る七海。おとなしく寢とけばいいものを。

それから普通に答えるあたり…。つっこめよお前も。

「へぇ…。え、何?」

「あぁ…。あるよ。何回も。」

「んー…1回だけ。」

「…お前も苦労人だな。」

「ねぇ2人で會話立させないでよ。俺らわかんねぇ。」

「あ…。悪ぃ。」

「何話してたんだ?」

「えっと…。聲が出なくなった理由。ホントはこまだってなるかもしれなかったんだよ?」

「ごめん、よくわかんない。」

それっきり、勝手に七海は寢てしまった。なんつーか…自由人だな。

'昔ね、拐されたことがあって。'

こんな田舎なのに…。

いやでもそれだと筋が合わなくないか?

だって俺らがそうならないように母さん達が捕まったんだろ?

ちょっと七海起きてよさっきまで喋ってたじゃん。

「何…?」

「なんのために母さん達は…。」

「あぁ、それは國境の問題。」

出た、苦手分野。國境が…なんだって?

「こまが危なかったのはあくまでヨーロッパでの話。日本だと、そこまで治安は悪くない。」

「俺もあり得るくね?」

「お前外苦手だろ。秒で帰ってただろ。」

あー…言われてみれば。

拐されて聲出なくなるのもまぁすごい。どんだけ過激だったんだろうな。

「あ…。」

「じゃ、ちょっと寢る。」

いや、噓だ。俺もあったわ。拐規模じゃなかったけど。いつだったかな。中學生?

左腕の、切り傷。まだ治ってない。澪とか験とかですっかり記憶になかった。

今思えばよく逃げ切れたもんだ。つーかあれ未遂で解決したんだっけ。

あの時に、誰かが分厚い本を投げてくれてなかったら、俺は時夏みたいに、なっていたかもしれない。

いろいろ思い出したがお禮言ってねぇ…!思い切りダッシュした気がする。ちらっとは見たが…。難関校の、制服で。結構暗いじだったか。

気がつくと、もう夕方になっていた。時夏の畑仕事?手伝ったりご飯作ったり。

田舎での時間は…本當に大好きだ。季節に合わせて自分をかす。カレンダーに囚われることは無い。

薬とか何やらとかが効いたのか、七海の熱は下がってし元気になっていた。

これは俺の邪念だが…。弱ったイケメンは破壊力が尋常じゃない。男所帯様々だな。

'明日にはもう、出るんだろ?七海君もあと今晩寢たら回復しそうだし。'

「えー、あー…。どうだろ…。七海に聞いた方が…。」

「どっちでもいいよ。せっかく見つけたんだから。春休みもまだ終わらないし。」

それを聞くなり時夏はぱぁっと目を細める。

「時夏は素直だなー。こまと違って。」

「黙ってろゴリラ。」

いちいち皮を言ってくる加…。時夏お気にりか?

でもまぁ確かに時夏は可い、と思う。

そんなこと東京組は普通に思ってるわけさ。特に加はチャラいから。

「彼いるの?」

──

「え、時夏?!無視はきつい…!」

'言ったじゃん、聲出ないから必要ないって。'

「心のケアは大事だぞー?」

「加だっていないでしょ。」

「春瀬だっていねぇじゃん!」

「俺はもう婚約者決まってるから…。」

一瞬の沈黙の後。

「「「えー?!」」」

'誰?'

「フランスのお嬢。」

別格でしたー…。會ったことあんのか?

「そのことは置いといて。なんでいつもバナに行っちゃうかな。

…ずっと気になってたんだけど、そのネックレス、外さないの?」

春瀬の一言で、見もしなかった、時夏の首元を見る。

こんなに驚いたのは、いつぶりだろうか。

'これね、俺の記憶の中ではお風呂以外で外したことないよ。'

「それ…こまも付けてるくね?」

「え、うん…。俺は、緑っぽいけど…。なんか…びっくりしすぎて。」

「そう言えば母親達も同じようなの付けてたぞ。ほら。」

なぜ寫真がある。

とつっこみたいところだがそんな余裕はねぇ。

頭では分かっていた。でもそれが、形になると、こんなにも嬉しいものなんだ、と。

思わずにはいられない。

いつかまた、何年も前みたいに、一緒に──

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