《雪が降る世界》第42話 〜噓と事実の境界線〜
「じゃあ…ありがとな。風邪とかひいちゃったけど。楽しかった。」
あと三日で學年変わるし帰ることに。
「田舎もいいもんだね。結構好きかも。」
「今から都心に帰るのが億劫になるな!」
「…加だけ殘ってれば?時夏のこと大好きでしょ。」
「それは緒!いろいろまずいから!」
????
普通にのんびり過ごしてたから代償はかなりデカい。
「課題終わらねぇー!」
「なんで持ってってなかったの…。俺らもう終わったよ?」
加はあんだけある課題を置いていったらしく今全員で手首の運をしている。
「はぁ…。なんで俺が人の分まで書かなきゃいけねぇんだよ。ふざけんな。」
「ホントすいません!」
若干キレながら英文を書く七海。えーと…。それ長文…。そんなパッと見だけで答え書いたらバツばっかになるぞ。
「…合ってる。」
「なぁ…。どうしよう…。」
「?七海?」
「父さんから…メールが…。すぐ帰れって…。」
「そんなにまずいのか?」
「…ごめん、帰る。」
そう言うなり青ざめた顔で飛び出す七海。
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まぁ…家族いるもんな。
春瀬達はいいのか?
「お前ら大丈夫?」
「連絡はマメにしてたから。」
「親に宿題やれカスって言われて…。」
「そう…。」
一応七海にメールしとくか…。何かあんのかもしれないし。
あと、時夏にも。きっとわかってる事がある。
電話…がいいかな。
──
'もしもし?何?'
ふ、普通に出た。え、思いすぎ…?
「あ、ううん、急に帰ったからちょっと心配しただけ。大丈夫なら、良かった。」
'ごめん、それだけなら…切る。'
「えっ?」
…噓、マジで切れた。
ちょ、時夏に…。
'へぇ…そんなことが…。うーん…。あ、七海君、あんまり素見せないから、見せられないものがあるんじゃない?俺も傷だらけだから見せたくなくて。'
何それ。そんなの、聞いてない。
まぁ…。深く詮索しない方がいいだろうけど。ここまでいろいろやってもらったのに、後味悪いよなぁ。
ふと、脳裏で七海の言葉が繰り返される。
ー代償はかなり大きいー
まさか、ね。
気づけば七海の家まで走っていた。深夜2時に。我ながら馬鹿すぎる。
わぁ…こういうことか。危ない…。
と、首に生暖かいがはしる。摑まれてる…?
「キレイ…。」
「やだ、やめて…!」
ホント馬鹿だ。手ぶらで家出るなんて。
全力で七海の家まで走った。
ただただ申し訳なくて。ずっとこのことを、みんな言ってたんだ。
「はぁっ、はぁっ、ここまで來れば…。」
七海の家。初めて見るがさすが一流…。
まだ電気ついてるっぽい。起きてんのか?
あ、影…。七海、と…誰?
「ん…?」
あれ…いつのまに帰ってたんだ?
見慣れた景。昨日?今日の朝?は外にいたはずなんだが…。まぁいい。
もう1回七海の家行ってみて…。親も仕事だろうし。
あ、思い出した。俺ちゃんと自分の足で帰ってたわ。
「お、車がない。」
七海先生はいないはず。
怒られるのを承知の上でインターホンを押す。
中から結構若いの人が出てきて。いやモニターの意味…。
「…誰ですか?」
「あ、なな…違う、唯の友達です。今いますか?」
「…!ちょっと待って!」
「どうぞ。お父さんもお母さんもいないけど。ゆっくりしてね。」
「ありがとうございます。」
七海どこだよ。広すぎてわかんねぇ。
あ、でも部屋に名札があるのな。
唯…唯…。あれ?
見あたらない。他の人とは違う階なのか?そんなことある?かわいそうじゃね?
'葉希'
そう言えばさっきお姉さんが名前言ってたような…。なんかここっぽい。
「七海?この部屋で合ってるか?」
一瞬の沈黙の後。
「なんで來た?」
なんでと言われても。とりあえず適當な理由を…。
「今日、仕事あるよ?」
「ごめん出れないわ。」
「何かあった?」
「ちょっと怪我したから…。」
それがどうも引っかかる。だって七海だよ?加とか春瀬がコケたみたいなやつなら信じるが…。七海はどっちかというとカバー役だろ?
「っていいか?」
「駄目。」
「…俺の部屋れねぇぞ?」
「…しだけ、だからな。」
りたいんかい。あっさりすぎだろエリート…!
扉が見た目よりずっと重たい。これ木?
それから、散らかった部屋に言葉を失う。全部、高校生がやるような容じゃない。
「おはよう、七海。」
「ん、おはよ。」
…?
「なんでこっち向かねぇんだ?」
「だから、傷があるって、言ったじゃん。」
え、顔?
仕事どうする気?
傷があると言いながら一応しだけ振り返る七海の顔は、ひどく暗かった。
ー見せたくない何かがあるー
時夏が言ってたのはこのことか。
俺も疑っていないわけじゃなかった。自分だって経験したから。そんな子供が、最後どうなるか。おかしいと思ってたよ。
あのテスト勉強した日、英文訳してさ。テストよりこっちのが大事って。お前、まだ高校生だろう?
…待なら、筋が通る。
あの七海が顔に傷を付けるなんてことは絶対しない。
「…メイクの力でなんとかなる。とにかく出よう。」
「駄目、って言われてるから。新學期までは。」
直的に、このままだと七海は壊れてしまう。そう思った。
「モデルのこと…言ってないの?」
「昨日、バレてさ。」
「言えば良かったのに。」
「……言えなかった。また、派手に毆られると思うと。醫者以外の選択肢はもう俺にはない。だから。」
「…警察。」
「は?」
「行くよ。」
「え、ちょ、待って…!」
無理矢理七海の手をひく。
あまりにも細く、冷たかった。
「待って…痛い、離せ。」
摑みどころが悪かったのか、七海の顔が苦痛で歪む。
ちょうどお姉さんに會い、事を説明して。
「ありがとう…。私たちもどうにも出來なくて…。お願いね。」
「姉さん…!何言って…!俺がまた父さんに…!」
「いいから行くよ!!」
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