《雪が降る世界》第44話 〜心配事〜
七海が院?昏睡?して數日。始業式には間に合うはずがなかった。
校、全國トップがいなくて新生もがっかりしていたが仕方ないだろ?
「今日病院行くー?」
「あったりまえじゃん!」
もう関わることはないと思っていたこの病院に、また世話になった。
先生も、七海のについた大量の傷を見かね、家族にいろいろ聞いていた。もちろん、誰も本當のことは言わなかった。あの最低な男を許して。
正直、瑠璃達が羨ましいって言った七海は、心がくすんでた、と思ってた。
でもさすがだよな。その言葉には、底なしのような深みを持っていた。冷靜になってみれば、確かにそう思う環境にあった。
俺も、加も、春瀬も。…七海先生も。
七海にとっては、ただただ邪魔な存在なんじゃないかと。
學校帰りによってしばらく様子を見ていると、諸悪の源、七海先生がお見舞い?に來た。モデルのこともあってか、俺のことは知っていたようで。
でも今はそんなことどうでもいい。
素樸な疑問を、彼にぶつける。
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「七海の…。唯の幸せを、考えたことはありますか?」
「雑誌の子だね…。葉希を振り回さないでくれるかい?」
貓をかぶった言い方で笑いかける人間は実に気味が悪く、それでいて生きている。
俺には合わねぇや。
「質問に、答えてくれないんですね。
…頭だけがれた、つまらない人間。」
「この子が自分で選んだ道だよ?友達の家族を見つけたいから手伝ってくれと。…醫者になるから、と。」
「公民は使わせない気ですね…。
けど、あなたほどのエリートが、昏睡までさせてしまうほど手を出し続けた。それに変わりはない。」
「他人に口出しされることではない。」
「ちょっとこま、その辺にしとけよ…!刺激しない方がいい。」
ヒートアップする口論にストッパーをかけようとする春瀬を差し置き追い討ちをかける。
だって普通いないじゃん。病気の人見て、余命がある人見て羨ましいなんて。それだけ、クールに見せていた顔の裏側に、人一倍の辛さがあった。
「あなたの子供でしょう…!ほら、あの顔、もっと見てくださいよ。起きると思いますか?」
「うるさい。」
「唯が、あなたに一度だって、謝の言葉を言いましたか?あなたは唯に、勉強以外、何を教えたんですか?去年の育祭のリレー後の表は何だったんですか?初めて見た唯の笑顔は、目が笑っていなかった。あなたが、唯から、人との繋がりを絶ってしまったから!」
「うるさい!」
七海が寢てる前で、謎の喧嘩をしている。我ながら馬鹿馬鹿しい。
エリートに喧嘩を売る高校生、高校生に怒鳴るエリート…。
この上なく稚拙な口喧嘩を橫で見ていた加が、
「七海の前でなんてことしてんだよ。こまの馬鹿野郎!」
俺だけかいとか軽くつっこんだが黙っておく。加の言う通りだ。
と、頭に強い衝撃が走り、みっともなくもちをついた。…加?
「帰ろう。頭冷やせ。」
「…分かった。」
「ん…。ん?あれ…。」
「うおぁあぁ七海?!起きた?!」
「え、あぁ…。助かったか…。診察結果的なやつ、あるか?」
ぶれない所がまたおかしいというか…。
「はい、気分悪くないか?」
「やっぱそうか…。」
俺の気遣いを完全に無視しやがった。
「なんかあんのか?」
「ごめん、こま。」
いや急に謝られても…。俺その紙見ても何も分かんなかったし。
「何?」
「腫瘍。これくらいだと…んー、あと2年かな。」
え…?今、なんて?
「し、腫瘍って…摘出できるだろ?」
「馬鹿。脳だよ。見てわかんだろ理系さんよ。…殘念だったね父さん。」
七海はそう言って嘲った。
もう誰も、いなくなってしくなかった。
まだ、生きててしい。
こんなに、頑張ったのに。虛しいじゃん。
「七海、お前死ぬのか?」
この辺で馬鹿発揮すんのはやめた方がいい気もするが加らしくておかしかったのか、七海は力なく笑った。が消えても。
「だろうな。まぁ、人間なんてそんなもんだろ?いいんだよこれで。高校行けなくなりそうでちょっと嫌だけど。クラスの人も、きっと來てくれるよな?」
「これがブサイクだとわかんねぇがお前イケメンだかんな。絶対來るさ。」
七海があと余命2年…。それを聞いた時點で、俺は思考回路が停止していた。
隣で弓なんてひけない。走れない。
「七海先生でも、不可能なんですか。頭を切るのは。」
「…リスクが、大きい。」
「やめてよ、せっかく自由になれるんだから。」
「そんな…。」
「もう、楽にしてくれよ…。」
初めて、七海が俺らの前で泣いた。解放される喜びだったのか、ただ辛かったのか。俺には分からない。
こんなに見る目がない俺でも何かをじた。
七海先生もびっくりしているようで。
あぁ、家でも泣かなかったんだ、と。
でもだからって、俺は容赦しねぇよ?
覚悟しとけ七海。こんなとこでくたばってんじゃねぇ。
「ねぇ、世界史教えて。去年やった、全範囲。」
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