《雪が降る世界》第59話 〜きらきらな海〜

「今日最終日だけど…何する?」

「いやぁ…聞いてみたんだよ何かいい場所ない?って…。」

「そしたら?」

「泳ぎなよだってさ。」

「まぁ…ぶっちゃけ水著なくてもいけるしね。でも俺と璃久と七海君は泳げないんだよね。」

「淺瀬くらいなら大丈夫だろうが…。嫌な予しかしない。」

水著の代わり…昨日のTシャツでいいか。

海…というか水が苦手。だから風呂だってシャワーですませてしまう。いくら淺瀬とはいえ、嫌いなもんは嫌いなんだ。

単純に泳げないだけならまだしも、な。

「こまー!気持ちいいよー!」

「ほら來てきて!」

「えっちょっと待って…。」

────パシャン…

あ…。

「璃久?」

「え、や…何?」

「向こうにサンゴ礁あるから行ってみよう?」

「無理…。やめて…。」

「?溺れないから大丈夫だよ?」

そういう問題じゃなくてだな…。別に言わなくてもいっかって放置してた俺も悪いけどさ。

「ごめん、浜にいる…。」

「見なくていいの?あんなに綺麗なのに。」

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「あぁ…。」

「サンゴ礁は描かないんだ?」

「っ、また気が向いたら。」

「そっか!」

焦った…すごく焦った…。

「昔なんかあったのか?」

うわ、空気読め七海…。

「ちょっといろいろな。」

「…俺はもうお前に全部話したよ。こまは?」

「それは…。言ってないことの方が多いけど…。七海は普通に見つけれるし。」

「俺は占い師じゃないんだからよ。」

「小學生の時溺れて…。」

「お前もう高校生なんだぞ…?浸かるくらいいけるだろ。」

「やだ。」

お風呂でさえ避けてるんだ俺は…。こんな大きい水たまりなんて無理に決まってる。

「俺もサンゴ礁見たいなー。」

…。酷い…。七海…。

「見てこいよ…。そこだろ?」

「いや俺今すっげぇ吐きそう。」

「は?!」

「気分的に。」

「なんだそれ。」

「明日の朝出発。家に、帰らないといけない…。」

「え、まだ同じことやらされてんの?」

「うん…。諦めが悪い人だから。手も、されたりすんのかなぁ。」

「それはさすがに…本人が決めることだし…。」

「どうせ俺は父さんのもの、じゃん?」

「馬鹿野郎かよ。」

「いいんだって。…あんまり乗り気じゃないさ。全力で斷るつもり。」

「ならいいか。…ねぇ、どんな小説書くんだ?」

「まだ聞く…。ん…。モデルはもちろん、こまとか加とかだよ?」

「あ、あれ?小説じゃねぇの?俺はてっきりそうかと…。」

「うん、多分そうなる。」

「俺いらなくね?」

「さぁ…どうだろうね。」

無駄に気になって仕方がない。こんなにっ気がなくても書けそう。

「こまをの子にすればいいのか…フィクションだし…。」

「何する気?」

「んーん、ちょっと想像したら可いなーって思っただけ。」

「意味わかんない。やめてよ。」

「これ1冊じゃ終わんねぇ。」

「楽しみって言っていいのか?普通の高校生にしてくれよ。」

「え?アルビノはそのままに決まってんだろ。」

「読者が秒で見抜くじゃん。せめて黒髪にしとけ。」

「あーそれもありか。候補にはれとくよ。」

「サンキュ。」

「それで?サンゴ礁は?」

「…。」

策士じゃねぇか七海。

水…。綺麗だけどそれがまたなんか…。いや死んでるよりはマシなんだが。

「あ、璃久來た。こっちこっち。」

早い早い…。もうしゆっくり行ってくれ。膝まで浸かるなんて何年ぶりのことか。気持ち悪い…。

「あぁ、これがサンゴ礁?」

「うん、中から見たらもっと綺麗だよ!」

?!

冗談じゃない…。そんなこと當たり前だけど潛れと?

「ほらゴーグル。」

…一瞬、一瞬…だけ…。

へぇ…やっぱネットとは違うな…。これさすがにレベル高い。あと。

「ちょっと璃久?!何溺れてるの?!」

「はぁ…!びっくりした…。」

「俺らの方がびっくりしたわ!普通に頭上げろよ!」

「じゃ、浜に戻る。もう無理。」

まさか、息継ぎ出來ないとは言えないよな…。何回も水に頭浸けるなんてごめんだし。

えーと…。形が結構難しい…。綺麗なことに変わりはないが俺が描いたら相當な自分絵になる。あのムーンロードは見てた時間が長くてしっかり記憶に殘ってて付け以外は複雑じゃない。

「こんなじ?」

「おぉーさすがデザイナー。」

「うるさい…タオル貸して、俺のやつもうびしょ濡れ。」

「はい。…拭いてやるよ。」

「は?別に…うわっ。」

しだけ弱くなった七海の手が、なんとなく記憶にある。それはもちろん七海じゃないが。

「え、あ、痛かった?ちょ、こま?なんで泣く?!」

「な、泣いてない。」

「噓、泣いてる。どうした。」

「なんか懐かしいなって思っただけ。」

「…覚はしっかり覚えてんだね。」

「そうみたいだ…。」

「で?やっぱ帰るんだよな?両親と。時夏には言った?」

「ううん、まとまった時間がとれた時にしっかり話す。今は忙しい。」

「それもそうか。」

「楽しかったー!案外金槌でもいけるね。」

「だから水著持って來とけばもうちょい奧行けたのに。」

るなんて思ってなかったもん。」

ほんとだよ。あれで汚かったら絶対行かなかった。

「こまってやっぱ絵が神がかってるよなー。」

「勝手に見るな。」

「あっ、これ新しい服のデザイン?」

「だから勝手に見るなぁ!」

くっそ…恥ずかしい…。

「こんなんが好みなんだ…。意外。」

「やめて、それただのオーダー。」

「どんな人の?」

「ネットだからわかんねぇよ。ただいつも買ってくれるから作ってあげるだけ。」

「ふーん…。」

次に作るのは、ちょっとファンタジーよりのワンピース。あまり得意じゃないが…。

「現場見たいな…。」

「何言ってんの七海…。お前制作工程くらい知ってんだろ。」

「知ってるだけじゃ意味ないだろ?」

「はぁ…。」

これ普通に帰ったら俺ん家直行だな。

「つーかこまが告白されなかったのすごくね?今修學旅行だぜ?」

「うるさいな…。俺のどこに対象が」

「はっ倒すぞ。」

「はいはい、ゴリラは靜かにしとけ。」

別に…されなかったわけじゃなくて…。

お前らがずっと隣にいたから何気守られたんだよな。

ホテルに戻り、帰りの準備をし始めた。もともとそんなに散らかってなかったから時間もかからなかった。

當たり前のように七海と春瀬が來てきいつもと変わらず喋るという。

「こま自分の服は作らないの?」

「え…そんな時間ないし。」

「へー、じゃあ俺が買うって言ったらメンズも作るのか?」

「注文であれば。」

「そっか。いつか頼むわ。」

「採寸めんどくせー…。なんのためにMONDで買うのか…。」

「それ著て死ぬわ。」

「…絶対作りたくない。」

「いいだろ?」

何が…。作らなかったら死なないか?

「壽命なんて作できねぇよ?」

「う、また顔に…。」

「出てた出てた。」

「分かりやす…。璃久頑張れ…。」

「無理だろ。」

「七海の真似してみれば?」

「は?…こう?」

「目が閉じてる…。なんでそうなった。」

「俺ちゃんと目開けてるぞ。てかぱっちりだ。ドライアイもいいとこだ。」

「難しい卻下。」

「じゃあこまはずっといじられキャラだなぁ。」

何しみじみ言ってんの…。意味わかんない。俺は…そんなキャラじゃないことを勝手に信じるからな…!

「つーかお前らよくこの暑さに耐えれたな。初日は俺以外參ってたのに。」

「そりゃ慣れるし…。冷えピタいっぱい使ったし…。」

「半袖著たし。」

「まぁ普通に楽しめただけいいじゃん。こまなんての子とLINE換しちゃってさ。モテるくせに。」

「違…。くないけど!あれは七海の罠…。」

「んー?俺はお禮しなよ?って言ったが。」

「はーい自業自得ー。」

「うぅぅぅ…。恥ずかしさで潰れちゃう…。」

「可いなー。でもいいじゃねぇか瑠璃さんっぽかったし。」

「黙ってくれ。」

「でもさ、クラスの子とは換しないよね。なんで?」

「だって別に興味ないから。」

「辛辣。よかったー、一応興味は持ってもらえてんだー。」

「部活の業務連絡的にな?」

「酷い!」

ここに來てまでする會話じゃないが當たり前みたいで俺は…普通に嬉しい。

明日帰って…明後日からまた東京のスケジュールに。忙しい日々に戻る、か。仕事…だいぶ空いてるから気合いれないと…。七海のぶんもあるし。ファンにはほんとに申し訳ない。

「帰ったら父さん倒れてないかな…。」

「何騒なことを…。」

「過労でも病気でもいいから家にいないでほしい。」

「うわぁ、子供にそんなこと思われちゃいろいろ失格だな。」

「あ、こまの家に邪魔すれば…。」

「…また?」

「いい?」

「どうぞ。」

カウンターしやがった。斷れねぇじゃんかそんなの。ふざけんな…。

「じゃあ俺らも行くー。」

まぁそうだよな。なんとなく知ってた。

「こまの服作り見てみたい。」

「あ、俺は仕事するのな。」

「そうそう。」

「ご飯は時夏に頼むか。」

「うん、いいけど。何がいい?」

「今聞くのか。」

「材料買わないとだから。」

「こまが作らないやつ。」

「…?わかった。」

「あれ、七海そんなもん持ってたっけ?」

七海の腕にいつものリボンに隠れてる何かがあった。

「あーやっと気づいた。これね、浜に落ちてた貝殻集めて作ったんだよ。綺麗だろ?」

「うん…すごい。あの短時間で。」

「仕方ねぇからお前らのも作った、ほら、やるよ。」

「やったー!」

多才とはこの事か。んー…。これ何かに使えないか…?

「あ、そうだ…ぴったりだ。」

「何に?」

「何でもねーよ。」

やべぇ…絶対似合う…!

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