《雪が降る世界》第63話 〜いつもと違う匂い〜

「はぁ?一般人呼ぶのか?馬鹿?」

うん…そうなるよなぁ。

「だから、沖縄で世話になったとこの人だって。」

「それにしてもだろ。お前モデルだよ?寫真撮られたらどうすんの。」

「撮影は止で…。」

「修學旅行なのに?」

「うぅ…。」

「…。まぁいいんじゃないか?家がバレなければ。」

「頑張るわ。」

病院で七海に話したところ、すんなりではなかったが一応いいらしい。

「七海はどうする?來る?」

「んー…。行く。こまだけじゃ頼りない。」

「時夏もいるぞ。」

「変わんねぇ。春瀬とか加は?」

「あいつらは普通に學校。」

「あ、そう。」

俺ら信用無さすぎじゃね?そんなにしょぼい?つか聞いた俺もアレだが七海大丈夫なのか?見たじ苦しそうだけど。

「退院はいつ?」

「明後日の予定。…あのさ、どっか時間空いてる日ある?結構大事な話があって。」

「ん?いいよ。來週なら。」

七海の大事な話は仕事か病気だから…悪い予がする。快方に向かってるとかなら嬉しいが。そんなでもなさそうだ。もともと白い顔がさらに白くなってる。

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「つーか七海、ドラマ出れない?」

「どんなやつ?」

「學園ライフ。」

「こまがやればいいじゃん。」

「えー、七海の方が日本人っぽいからさ。俺あんまり出たくないんだよ。」

「意味わかんねぇ。お前のが綺麗だろ。」

「それあんまり必要なくね?」

「そうか?…學園って的には?」

「そりゃだって。」

「余計嫌なんだが。」

「…俺も別の仕事あるからお願い。」

「それなら仕方ないか…。」

うん…七海ならやれるだろう。治療、というか延命は真面目にやってるし。お相手も七海だと気合いりまくるな、多分。

「じゃあまたな。」

「ん、ありがとう。」

それにしてもイケメンって奴は…。どんだけ悲壯漂っててもかっこいい。會った時より表らかくなっちゃってさらにかっこいい。なんて、俺が思い始めたら末期だないろいろと。

あんな風に、笑えるようになる頃には、俺はまた一人になる。

時夏がいても、春瀬加がいても、一緒に仕事する人はいなくなるわけで。ななこまなんて言われてるのに…。

「おかえり璃久。七海君、どうだった?」

「んー…。ちょっとだけ元気なくなってるよ。なんとなく。」

「そっか。じゃあ次ここ來る時はじゃが作ってあげよっかな。」

「ハンバーグじゃなくて?」

「俺の料理はじゃがが1番なんだって。で、璃久のはハンバーグ。」

「可いかよ。」

「ほんとそれ。意外に乙。」

「…まぁチョイスは完全に男だが。」

「彼が楽できるタイプだよね。」

「…確かに。」

よし、とりあえず七海を迎えに行ってそのまま駅に行けばいいのかな?

えーと…ウィッグどこやったっけ…。あとパーカーと…。

「七海ー、準備出來たかー?」

「あぁ。毎度悪いな。」

「…別に。駅行こ。」

「了解。あ、これ著ていいのか?」

「うん。」

七海は退院を繰り返すようになったが一度も家族は見ていない。公園から運ばれて以來。やっぱあの時言い合っちゃったからか…?まぁ七海はまんざらでもなさそうだし…。

「そういやこのパーカーさ、こまには大きすぎないか?俺でもちょっとぶかいんだが。」

「あぁ、それなら時夏とか加も著れるだろ?」

「…。なるほどね。つーか加も著れんだ。サイズは?」

「2XL…。」

「こまは?」

「L…。」

「優しいなほんとに。」

「うるさい…。」

それ買う時店員さんに軽く笑われたんだよな。え、あんたが?みたいなじで。

うん…気持ちは分かる。実際俺も著る時ぶっかぶか。

「んー、人多いな。どこで待ち合わせてんだ?」

「出口にいろって言ったけど分かるかな。」

「分かりにく。電話してみろよ。」

「分かった。」

めっちゃ平日だけど時間的にはラッシュではないからなんとかなると思ったが…。七海にとっては多いんだな。

「お、あれだ。」

「よかった、このまま會えないかと…。」

「5人か…。ちょっと多いな。」

「アトリエ広いから大丈夫。」

俺ウィッグつけてて七海もフードしてたから向こうにはなかなか気づかれなかったが無事家に著いた。もちろん、撮影は止で…。

それから、グループの男の子は2人だったけど両方七海大好きらしい。…めっちゃ分かる。

「突然で悪いね。ここしか被らない場所なくて。」

「いや…生のななこますごい!綺麗!」

「あは…ありがとう。」

頑張って標準語喋ってるのがほっこりする。すまん、七海ほどスペック高くないんだ。

「ここでどんな仕事を?」

「一応、デザイナーやってるから。モデルとは別。」

「やばぁ…。服作れるんだ…。」

「どうだ?著てみるか?」

「はい!!!!」

嬉しそー…。そこまで人気じゃないのに…。これは完全にモデルの恩恵だ。

「こっちが男子用でこっちが子ね。いろいろあるから見てみなよ。」

「作ってるところは見せねぇの?」

「集中すると喋らなくなるから。」

「あ、そう。それであんなにたくさん用意したんだ?」

「うん…。手ぶらで帰すのも悪いなと思って。」

「え、あげるの?」

「?そのつもりだけど。」

「マジかよ。どんだけ良心振り回してんだ。」

「いやそんなことは…。」

「で、晝は?」

「あー…。時夏と作ってくるよ。相手してあげといて。」

「ん、分かった。」

さて…何作るかな…。全部時夏に任せてもいいような気もするがあいつは普通に家にいるだけだし…。俺も何かしといた方がいいもんな…。

「時夏ー、晝なんか決めてる?」

「え?璃久作らないの?」

「…。」

「…。買い出し行こっか。人多いし。」

「サンキュ。」

休ませといてよかったー…。こういうとこほんとに好き。

「じゃあせっかくだし普段食べないものにしよ。」

「あぁ。」

時夏には炊き込みご飯と焼き魚を提案された。さすが。確かにあんまり食べないな。

しかも俺炊き込みご飯とか作ったことない。あれだ、めんどいから白米的な。

この辺のスーパーしか行ってないから最近は落ち著いてたけど修學旅行の人にとってはやっぱり俺と時夏は珍しい。特に時夏は俺がブログに載せただけで活してないから…。し騒がしい。なんでこんな庶民の店に來てんだよ。いや別にいいけども。

「そういえば、駒井君のお母さんとかは?」

家に帰り、ご飯の準備をしていたところ、うちに來ていた男の子に痛い質問をされた。

「えっと…。今は二人暮し…。」

「ま?」

「ま。」

「…ごめん、なんか大勢で來ちゃって…。」

「は?俺がいいって言ったんだからいいんだよ。」

やべぇめちゃくちゃいい子じゃねぇか。加達にもその誠実さを教えてやってほしい。

「ところでさ、いつまで東京いるんだ?」

「明日もう帰るよ。今日が観の最終日。」

「そっか。」

「あの…それで…頼みが…。」

「何?」

「し、寫真を…。」

うん…そりゃそうだよね。

「家の場所、緒だからな。」

「ありがとう!!」

七海と時夏を含め8人でたくさん寫真を撮った。この俺がこんなに大勢の中で寫真撮るなんて…。自分に驚きだ。時夏もすげぇ嬉しそうだったし七海も笑ってたから…いいんじゃない?

そして俺は大変なことに気づいた。

「名前は?」

まじで頭になかった。我ながら…最低だ。

「…一関、遙緋…です…。」

「ん、ありがとう。」

「あの、駒井君、しだけいいかな。」

「?何?」

「────────────…!」

「…?!」

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