《りんご》帰還

図書室にある臺本を全て調べてもいいものは見つからなかった。日が暮れるまで子を殘すとは何事かと思ったが、作業を遅らせたのは私なのだ。目を通すだけのはずが深く読み込んでしまい、いつの間にか日が暮れてしまっていた。先輩はものすごい早さで読み飛ばして行ったため、今日中に作業を終えることが出來たことが幸いと言える。個人的にはもっと本を読んでいたかったが。

先輩が家まで送ってくれるというので、甘えることにした。

「先輩って彼いるんですか?」

「唐突に失禮なことを聞きますね。」

街燈のない住宅街では、先輩の顔を確認できないのが殘念だ。きっと面白い顔をしているだろうに。

「彼はいますよ。」

「……」

「臺本ですか。」

「はい。僕の大切な人、臺本さんです。」

一瞬思考を止めてしまった自分がけない。この先輩に彼などいるわけがないのに。暗くてよかった。

家に著くと、私の聲に母が返事をした。空腹が限界に達していた私は急いでリビングにり、食にたどり著こうとしたのだが。

「溫め直すとかいいから食べさせてよ。」

母が頑なに溫かいものを食べさせようとするため、腹に我慢を教えながら待つことにした。

ふと、テーブルの上のりんごに気がつく。

艶やかな赤しい曲線、全てが食をそそる形狀をしていた。

私の腹に我慢を教えるのは無理らしい。

私は母の許可を得る前に、りんごにかじりついた。

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