《りんご》

意味がわからなかった。こんな便利な力があるというのに、なぜ天才的クズの先輩とを共有しなければいけないのだろう。

「理由はたったひとつです。」

まとわりつくような目付きで先輩は私の目をはっきりと見て言った。

「その力をしがる人間は力の正確さが確立すればするほど増えるでしょう。君を拐しようという輩まで現れるかもしれない。つまりそういうことですよ。」

あ、この人最後丸投げした。いつもの私ならそんな呑気なことを思って先輩を馬鹿にしていただろう。だが、今の狀況で私は何も思いつかなかった。ただただ先輩の目が、蛇のように蛙の私を直させた。

「まあ、僕は半分ほど信じてませんが、もしものときを考えましょう。もしもを考えずに白雪姫は怪しい魔からのリンゴを食し、眠りについてしまったのですから。」

らかい笑顔を見せられ、ようやく呪縛が解けた私は、先輩の言葉にハッとした。

「先輩、それです。私、こうなる前の夜にりんごを食べて、そこから記憶が無いんです。」

先輩は笑を零すのを止め、本當ですかと聞いた。心當たりはそれしかない。魔的に私の口へとおうとするあの造形、そしてかつてない異常な空腹。あのりんごは、イヴが私に持ってきたのだ。蛇が魔法をかけて。

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