《りんご》一方的

「もしかしたら、なのですが。」

この現象が止まる方法を考えていると、先輩がゆっくり獨り言のように呟いた。

「そのりんごをもう一度食べたら治るということはないでしょうか。それとも治すための他のりんごがあるとか。『りんごの木』では確かそのような効力だったはず...」

私に向けられていると思ったその言葉は、本當に獨り言だったらしい。隣で座っている私にすら聞こえない聲でボソボソと呟くようになってきた。

「りんごの木ってどんなお話でしたっけ。」

1度読んだ気がするが、容がはっきりと出てこない。先輩は意外だという風な顔でこちらを見てきた。

「文學のことならなんでも知ってると豪語していたユキさんが知らないとは、世も末ですね。」

なんだこいつ。

「あー、すみませんでしたー。先輩みたいに頭良くないんでー。」

「いえ、僕も別に頭がいい方ではないのですが。リンゴが出てくる語が好きで、よく読んでいるというだけの話ですよ。」

謙遜が私の怒りに油を注いでくる。この先輩本當にクズだ。

「もういいです。帰ります。お疲れ様でしたー。」

先輩が何か言った気がするが記憶から消し、扉を暴に閉め、何故こんなにイライラするのか考えるのを放棄して、私は涙目で夜道を走った。

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