《りんご》危機

放課後、家と真逆の方向へ迷いなく進んだ。街へ繰り出すパリピ達から距離を置いて、たった一人。虛しいことこの上ない。

見た事のある景が広がってきた。ビルに付屬したコンビニやお灑落な容室、ブランドばかりの服屋さん。そこは確かに落下中、目に焼き付けた景を下から見たものだった。しかし、ビニールシートで隠されていたり、通行止になっていたり、警察がいる様子もない。6時間以上経っているからだろうか。

「警の前で飛び降りてたからなあ、事件はないってことで早く片付けたのかな。」

コンビニの店員さんに話を聞いてみると、確かにここで飛び降り自殺が行われたらしい。店員さんは直接見ていないようで、気持ち悪そうな様子もなく、むしろ嬉々として話してくれた。たくさんの警察が、散らばった破片の回収や掃除、通行規制に追われていたらしい。つまり私は現実を見ていたということが証明された。お禮程度に飲みを買い、店を出る。

まとめよう。私が學校で見た自殺景は事実だった。他の飛んだ先も現実である可能が高い。しかし私はこの力を自由に使えるわけでは。

「ユキさん」

背後から聞こえたその聲に、心臓が止まった。この聲は、この呼び方で呼ぶのは、あの人しかいない。どうしたらいいだろうか。とりあえず謝ったらいいだろうか。考えたくない考えたくない。

私は逃げるように走っていた。

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