《スクールクエスト!》11話 『ガメラもどき』

ーーー修整世界は不思議な所だ。その容かたちは魔によって異なる。

その在り様は、例えば払暁ふつぎょうのが注がれる黎明れいめいの世界。

例えば太が西の地平線に溶ける黃昏たそがれの世界。

例えば灰の雲に空が塞がれて重くった空気に包まれる曇天どんてんの世界。

の能力にとって最も都合が良い環境に『修整』されるから、修整世界と言うのだと聞いた。

ーーーーーーーーーーー

修整世界が展開されてから、辺りは大きく様変わりしてしまっていた。

ビルやら電柱やらごちゃごちゃした配線なんかはもはや見當たらず、眼前の草原にはおよそ人が生活していた跡はどこにも見當たらない。

ただ直上の太のみがギラギラと地上を照らし、青くさい若草のにおいに鼻をヒクつかせた。

「うわ、アレが魔っスか・・・。初めて見たっス」

「一年は部から今まで座學しかやってないもんな。見たところデカいだけの亀だが、あんま油斷すんなよ」

地平線まで続く草原の真ん中、オレらとの距離は數十メートル。

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そこに魔は居た。姿はめちゃくちゃデカくなったミドリガメ。首をばせばビルの4階分の大きさだ。

甲羅の中からヌッと出てきた顔は案外兇悪な表で、なんだか一段階くらい退化させたガメラみたいだった。

「最悪」

ウンザリした様な聲が後ろから響き、振り返ると日焼け止めクリームを顔や腕に塗りたくっているイヅルハが居る。

「なんだよご機嫌ナナメだな。てか顔に日焼け止め塗って大丈夫か?メイクとか落ちない?」

「どうせ現実の世界に戻れば元通りだから良いわよ。それよりこの暑さ、ホンット最悪よね」

たしかに、太は普段よりずっと近い位置にある。必然、気溫もそれ相応に高く、サウナの中の様な暑さだ。

「んー、あれ?イヅルハ。元の世界に戻ればこの世界でけた全てがなくなる訳だし、日焼け止め塗る必要なくね?」

が焼ける覚が嫌なのよ。だから今日限り、自分のSOSを呪うわ・・・」

イヅルハは顔を苦味走らせながら魔力を集約させて、言霊にのせる。

「『蒼に染まる翼ガルーダ』」

イヅルハの背中に淡い燐りんこうが発生し、結合する。

顕現けんげんしたのは明に輝くの翼だ。

「これがイヅルハ先輩のSOS。『奇跡をる能力』っスか・・・」

ナタツカが嘆の聲をらすのを聞いて僅かに口角を上げると同時、イヅルハは天高く飛翔した。

「さて、ナタツカも準備しとけよ。今はかないあのガメラもどきだが、ずっと沈黙してるとも限んないしな」

「了解っス!!」

威勢のいい応答の聲とともに、ナタツカの姿はみるみる変貌を遂げていく。

指先から上腕にかけて漆黒の、ゴツゴツした鎧に覆われていく。否、正確には鎧ではない。これは皮だ。

「『黒鬼に化ける能力』」

現世には存在し得ない伝説上の生き。暴の化とも呼ばれ、人々に恐怖と絶を振りまく存在。形のある厄災。それこそが、鬼だ。

「準備萬端っスよ!いつでも攻撃可能っス」

「まぁ待て。ガメラもどきの様子がおかしいぞ。何してんだアイツ」

寥寥りょうりょうとした草原の中で圧倒的な質量を持つ生はあからさまに異質だ。

そしてその異質が、今、太を甲羅に浴びて、そして白熱してきている。

「參った。あのガメラ、昭和版かよ・・・!」

やくたいもない言葉をつぶやいて、オレたちはガメラもどきが口から放出した熱線をモロに食らった。

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