《スクールクエスト!》12話 『初陣の武功』
ガメラもどきが口から出した熱線は、極と呼んでしかるべきものだった。
それは意味通りであり、文字通りである。
正真正銘、尋常じゃないほどの太を甲羅の表面積いっぱいに浴びて、一本に収束させたレーザーの威力は消滅必至。
一直線にオレらの方向に向かってきたソレは通り過ぎただけの草原の大地を燃やし、一瞬にして草原一帯を火の海にしてしまうほどだった。
無論、そんなレーザーが直撃した日には人なんて脆もろいものは蒸発して影も殘らないだろう。
ただしーーー
「あーあ、ただでさえ激アツだってのに更に気溫高くしてくれやがって、イヅルハがブチ切れるっての」
オレのSOSは、そんな攻撃モノともしない。
オレ、そして近くのナタツカにはエメラルドのベールが展開されている。
『バリアを創る能力』、それこそがオレのSOSだ。
その力はこと防に於いて、他の追隨ついづいを許さない。
このSOSに補足説明するならば、『絶対破壊不能のバリア』、という言葉がふさわしい。
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オレのバリアは、それが例えば絶対零度の息吹だろうが、灼熱の獄炎だろうが、マントルまで穿うがつ強大な魔の爪撃そうげきだろうが消滅必至のレーザーだろうが関係ない。
赤ん坊の癇癪かんしゃくから世界滅亡レベルの隕石まで、皆等しくオレの前ではゼロになる。
さて、絶対無敵なオレのSOSだが、1つ欠點がある。
それは、バリアを張れる範囲がオレの周りだけ。數字にすれば半徑1メートルちょいだという事だ。
それはつまり、団で魔を討伐する前提のこの人事部に於いてはオレのSOSの「使えねぇ」は異常なのだ。
使い勝手の悪い十徳ナイフの方がまだマシだ。オレのSOSは、本當に防以外何1つとして出來ない。
それ故にイヅルハからは『プライベートバリア』と揶揄やゆされる事がしばしば。
「あざっス、ノブセン。また命を救われちゃいました」
隣立つナタツカは簡単にセットされた黒髪に指を差し込んで腰を軽く曲げた。
「こんくらいしか出來ないしな。それにーーー」
「ん?なんスか?」
「いや、何でもない。油斷すんなよ、とか言ったけど、手加減はしろよ。一発で魔が死にかねないからな」
ーーーそれにお前はオレのSOSで守らなくても大して効かないだろ、そんな言葉を咄嗟とっさに飲み込んで、何とかはぐらかせた。
とはいえ、ナタツカのSOSは必要以上に使わない方がいいのは重々承知している。
「何がダメなんスか?魔が早く倒れるならそれに越した事はないっスよね?」
「今、上空でイヅルハが文句吐きながら攻撃魔法を練ってる。一発で仕留められちまったらイヅルハの怒りが不発に終わってオレらにトバッチリが來るかもしれんだろ」
「なるほど!処世ってヤツっスね。さすがノブセン!」
ナタツカは爽やかな笑みで溌剌はつらつと笑い、いつの間にか両手に構えた大ナタをガチガチとぶつけた。
「そんじゃあ目一杯手加減してーーー『鬼颪おにおろし』!!!」
両手に持った大ナタの一本を地面に突き立てて、殘るもう一本は両手でしっかりと握る。
ナタツカは大ナタを下から上へ、虛空を逆袈裟斬りにして生まれた衝撃波は先のレーザーと同じような軌道で真っ直ぐガメラもどきへひた走る。
レーザーで燃え広がった草原は今度、衝撃波の風圧で炎が吹き飛び、真っ黒の焦土が大気に出した。
「ーーーッッ!!アァァァァァァーーーーッッ!!!!」
飛來する斬撃を避けられる訳なく、また、バリアを張れる訳でもないガメラもどきの首元に大きな傷創しょうそうが刻まれた。
ガメラもどきは大気をブルブル揺らす大聲でぶと再び甲羅が白熱する。
「またレーザーを撃つ気か・・・!」
「撃たせないわよ」
上空數十メートルで羽ばたいている彼の聲が、聞こえるはずのない聲が、しかし確かに耳朶じだを打った。
自信に満ちた聲音で、彼は超常を言霊にのせる。
「『巨軀なる雷神の千本槍アザカ・トンネッレ』ッッ!!!」
突如、上空に発生した巨大な魔法陣からは夥おびただしい數のイナズマが空気を裂いて、ガメラもどきに1つ殘らず的中した。
「ーーーーー!!?アァァァァァァーーーーーーーーーッッッッ!!!!」
次にイヅルハは、イナズマを作して1つに束ね、あろうことかガメラもどきの甲羅と表皮の間、一番らかいところに雷槍を直撃させた。
「うわ・・・、アイツいい格してるわ」
オレは若干引き気味にイヅルハの攻撃を見ていると傍かたわらのナタツカが両手に大ナタを持ち、前傾姿勢で構えていた。
「ナタツカ?何やってんのお前」
「いや、多分イヅルハ先輩の攻撃じゃオチないんで、雷が止やみ次第、突撃するつもりっス」
「マジで?アレでいったと思ったんだがなぁ」
イヅルハの魔法が途切れ、辺りに雷撃の弾ける音が消えたかわりに、荒い魔の息遣いが聞こえてきた。
「あ、ホントだ。まだ生きてる」
「って事で、行ってくるっスッ!!」
ナタツカは矢のごときスピードでガメラもどきとの距離數十メートルを數秒と経たず走破すると大質量生の重みで窪くぼんだ大地にクレーターが出來るほど踏み込んだ。
「『鬼哭きこく啾々しゅうしゅう』ッッッ!!」
振るわれた大ナタの煌めきが線になって見えるほどに常外の速度で斬滅されていくガメラもどきは、そしてコマ切れに斬り伏せられ、その姿を黒い霧へと変えていったーーー・・・。
悪魔の証明 R2
キャッチコピー:そして、小説最終ページ。想像もしなかった謎があなたの前で明かされる。 近未來。吹き荒れるテロにより飛行機への搭乗は富裕層に制限され、鉄橋が海を越え國家間に張り巡らされている時代。テロに絡み、日本政府、ラインハルト社私設警察、超常現象研究所、テロ組織ARK、トゥルーマン教団、様々な思惑が絡み合い、事態は思いもよらぬ展開へと誘われる。 謎が謎を呼ぶ群像活劇、全96話(元ナンバリンング換算、若干の前後有り) ※77話アップ前は、トリックを最大限生かすため34話以降76話以前の話の順番を入れ変える可能性があります。 また、完結時後書きとして、トリック解説を予定しております。 是非完結までお付き合いください。
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