《スクールクエスト!》13話 『苛を司る巨塔』

世界が俄にわかに決壊して、元の世界のを取り戻してゆく。

ハッと気づくと、オレたちはビルとビルの隙間、あの薄暗い場所に立ち盡くしていた。

修整世界の太で汗ばんだも、いつの間にかすっかり乾いていた。元どおりになった、と言ったほうが正しいのかも知れないが。

「ん、これでよーやく、クエスト完了か」

オレは多分に空気を吐き出し、道の脇に倒れ伏している男に目を向けた。

二十代半ばくらいの、不自然な茶髪にどこかチャラチャラした服裝の男だ。

吹っ飛ばされた頭も傷1つなく、イビキをかいて寢ている。

「魔もちゃんと抜けてるな。あとはこの近くにーーー。お、あった」

男の近くに落ちていた消しゴムくらいの大きさの石ころを拾い上げ、ナタツカに投げる。

「ナタツカ。これが本の魔晶石ましょうせきだ。人事部はこいつを集めて専門の人に売る事で実利を得てる」

「おお・・・。なんか綺麗っスね。黒曜石をもっと寶石っぽくしたみたいな」

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「魔晶石ましょうせきのや形、大きさなんかは魔によって違うけどな。そんくらいの大きさだとせいぜい15萬円ちょい」

「これが・・・15萬円・・・」

ナタツカは魔晶石を顔の前に持ってきてゴクリと唾を飲んだ。

「まぁ、今回は部員たちには言ってない、いわゆる非公式のクエストだからね。売れないわよ」

「・・・・・・なんか、もったいないっスね」

「決まりだからな。しゃーない。ーーーとにかく、無事クエストが功して良かった!」

「あー、忘れてた。結局、マホッチ見なかったわね。嫌な予がしないでも無いけど」

イヅルハは怪訝けげんに眉を寄せたあと、「ま、いいか」と言って踵きびすを返した。

「なんにせよ、この気な所から出るわよ。早くしないとその男が起きちゃうかも知れないし」

「おう」

オレとナタツカもイヅルハに追隨ついずいしながらビルの隙間を出た。太は既にだいぶ傾いており町中を紅あかく染めている。

「あー、そうだ。オレ買い頼まれてたんだったわ。ナタツカ、手伝ってくれね?」

「いいっスよ。荷持ちならいくらでも。あ、腹減ったんでどっかで軽く食べてきません?」

「ここら辺に飲食店無いなぁ。そういやこの前この商店街のメンチカツがテレビに出てたぞ。それ買うか。イヅルハもどうだ?奢るぞ」

「パス。ーーーってか部活でやる事はまだ殘ってるからね。アンタらもあんま遊んでないで早く戻ってきなさいよ」

「うーい」

オレたちはイヅルハと一旦別れて、商店街に向かう。隣り合うナタツカはオレよりもだいぶ背が高いので自然、わずかに顎を引いた狀態でナタツカは口を開いた。

「マホッチ先輩に會ったら、謝らなきゃいけないすっスね」

どこか諭さとす様な、落ち著いた聲音だった。ナタツカが言わなければ、オレが言っていただろうセリフだった。

後輩に先んじて言われてしまった言葉に、オレはどこかバツの悪さ、というかけなくなった。

「ーーーそうだな。いや、ナタツカはマホがヘソ曲げたらああなるって知らなかっただろ。これは完全にオレの落ち度だよ。すまなかった」

「そんな、滅相も無いっス。ノブセンにはいつも世話になってるっスから。あ、つってメンチくらいなら奢ってくれていいっスよ」

ナタツカは冗談じりに笑ってみせた。オレとしては最初から奢るつもりだったのだが、ナタツカの心遣いに野暮な事は言わず、ただ笑みをこぼすばかりだ。

「・・・マホの分も買ってくか。お詫びの品として」

既に、商店街目の前までやって來ていた。

この時間ともなればやはり買いを終えた主婦たちの談笑する聲があちこちに満ちていて、大変な喧騒けんそうと賑わいが予想されたがーーー。

「え・・・。誰も、居ない・・・?」

商店街のり口で、オレは息を詰めた。

眼前には、人っ子一人居ない、靜寂せいじゃくに満ちた店々が軒のきを並べていた。

俄かに鳥が立ち、瞬間、ここに來るまでの景が全てフラッシュバックした。

「ナタツカ、イヅルハと別れてから、人を見たか・・・?」

「見てないっス。ていうか今確信しました。ここ、間違いなく修整世界っスよ。だって・・・あれ」

戦慄せんりつを孕んだナタツカの言葉、指し示す先には天をまするほどに大きな塔がそびえていた。

距離は1キロ程だろうか。それでも、その巨塔の大きさに思わず遠近が狂いそうになる。

巨塔は、間違いなく魔だ。魔を橫側から見ていたから塔の様に見えただけで、よく見ると人の形をしている。

「なんだよ・・・。あれ・・・、デカいっつーか、見たことなーーーーー」

巨塔が大仰な作で手を橫に振るった。それだけで、ただそれだけで空間が苛かぎゃく的に、そして扇型に破壊が推及すいきゅうしていった。

「ナタツカ!!オレにつかまれッ!!!」

とっさにナタツカを引っ摑むとバリアを展開。無論、オレのバリアが壊れる事は決してないが、それ以外、周りの景は、一瞬にして様変わりしてしまった。

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