《俺は、電脳世界が好きなだけの一般人です》第八話 北山からの要

後輩たちがツールの作を始めた。

津川先生は、パソコン倶楽部を中心に見ることにして、パソコン実習室には顔を出さなくなった。

連絡事項は、俺にメールで知らせてくるようにしてもらった。

參加の応募が締め切られた。

4チームとパソコン倶楽部の、參加は承認された。

問題なのは、元パソコン倶楽部の面々を引率としていたが、許可がおりなかった。

各4チームの引率になるように振り分けたのだが、卻下されてしまった。

俺とユウキの引率は許可された。部屋もそれぞれで用意されるようだ。戸松先生も許可された。

連絡をけて、戸松先生と元パソコン倶楽部の子たちと打ち合わせを行うことになった。

打ち合わせの部屋に行ってみると、戸松先生と元パソコン倶楽部で最初の打ち合わせに居た二人のの一人だけが待っていた。

「他の子は?」

「スクリプトとツールを作っています。私は、4チームから話を聞く役割なので、話し合いは私に一任されました」

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「そう・・・。戸松先生も、問題は・・・。なさそうですね」

戸松先生は、津川先生からパソコン倶楽部の話を聞いていて、事を察しているのだ。

「引率が卻下されてしまいました」

「聞きました。行けないと思っていたので、殘念ではありますが、大丈夫です。來年に期待です」

後輩は、しっかりとした口調で、戸松先生の方を向いて話をしていた。

「引率できないのは、決まってしまったので、騒いでも決定は覆らないので、何が出來るのかを考えましょう」

戸松先生が話を進めてくれる。

俺は、津川先生から送られえきた厄介な問題をどうしようか頭の片隅に追いやって、簡単に片付けられる話から終わらせておく。

「篠崎先輩」

「ん?」

「先輩は、現地に行かれるのですよね?」

「そのつもり」

「現地から、私たちへの指示はどうしますか?」

「うーん。津川先生の話から、引率で現地にる人は、チームが作業を行う建にはられないらしいから、普通にパソコンを使って連絡は出來ると思う」

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「わかりました。チームとの連絡はどうしますか?」

「チームから俺には、ロビーで待機していて話を聞けばいいとは思っている。俺かユウキが待機していれば大丈夫だろう。どうしても、確認しなければならないときには、Skypeでもつなげよう。畫面を共有すればいい。最悪は、ノートパソコンのカメラで撮影して送ってもらえば解るだろう」

「そうですね。わかりました。私たちは、ツールとスクリプトとハニーポット用のハチミツ罠を作ります」

後輩たちとの連絡やチームとの連絡のオペレーションの問題はなさそうだ。

來週は、大會のシミュレーションをやって運用で問題がないか確認しよう。

「さて、戸松先生」

「解っています。もう一件の方ですね」

「もう一件?」

メールを見ると、俺と戸松先生宛てになっていた。

後輩には津川先生からの連絡が屆いていなかった。

容をもう一度、読んで、後輩に読ませても問題にはならないだろうと考えて、スマホの畫面を見せた。

メールの前半は問題ではない。

參加校と參加チームの概要だ。

25校。50チームが參加する。総勢300名にもなる。有名企業で、保養所が大きいと言っても、引率を部屋に割り當てたら、ほぼ満室になってしまう。そのために、チームを削らないで済むように引率の數を削ったのだ。それでも、引率する場合にはホテルを取ればいいとなっていたが、ホテルもそれほど多くはない。季節が伊豆に観客が集まる時期に重なり、できれば引率は各校4名までにしてほしいと通達が出されたという話だ。

50チームを多いと見るかないと見るか・・・。

俺は多いと見ている。ネットワークの帯域がそれほど確保出來ているのか心配になってしまう。集計するサーバがダウンした場合にはどうなるのか?それらの詳細なレギュレーションが書かれていないのだ。高校生が行う攻撃程度では、サーバは揺るがないとでも思っているのだろうか?

「え・・・。アイツは何を考えているの?」

「それがわからないから、後輩だった人たちに話を聞いておこうと思ったのだけど・・・」

「先輩。ごめんなさい。私にもわかりません」

そうだよな。

北山の奴が、言い出したのは、”同じ學校なのだから、使うソフトを共有するのが當然だ”だそうだ。

「そうだよな。最初から言っていれば、協力したのに、この段階になって言い出しても無理だよな」

「はい。それに、私たちは、もうパソコン倶楽部ではありません。新しく、部を作ります」

「え?」

「戸松先生を顧問にした。『電脳部』です。4チームの皆さんも參加してくれるので、部員數は30名の予定です」

「え?顧問を、戸松先生?部長は?」

「攻撃チームの2年生の誰かが部長と副部長になります。部外顧問は、森下さんが擔當してくれます。篠崎くんもやってくれますよね?」

「・・・。先生。先に、ユウキを説得しましたね?」

「説得なんてしていませんよ。話をしたら、二つ返事で引きけてくれましたよ。毎月、晝の食券6枚だけで快く引きけてくれましたよ。あぁ森下さんが言うには、”タクミの分と一緒で”と言っていました」

「・・・。わかりました。部外ならそれほど時間は取られないでしょう。引きけます。何をするのかは、大會が終わってから話をしましょう」

「そうですね」

はめられたじがするが、諦めよう。

ユウキが承諾しているのなら、俺がやらないと言ってもダメだ。それに、部外ならそれほど時間も取られないだろうし、関わるのには丁度いい肩書だろう。

「それで、北山からの申し出だけど、けてもいいと思っている」

「え?」「・・・」

「なぜですか?篠崎先輩や、私たちが作ったを、ただで渡すのですよ。何も考えていないあの人に渡すのは反対です」

「篠崎くん。説明をしてくれますよね?」

「えぇ奴からの要を読むと、”ソフトを共有”と言ってきている。俺たちは、津川先生から是非お願いしますと言われたから、ツールのバイナリを提供する」

「え?」

「だって、奴がしがっているのは、ソフトでしょ?作戦をどこからか聞いたかも知れないけど、ソフトだけで今から何が出來る?」

「・・・。そうですね。ツールよりも、スクリプトが大事ですよね?」

「そうだ。結局、奴は俺たちが優秀なハッキングツールを使っていると思っているのだろう。自分たちもツールを使っているから出てくる発想なのだろう」

「そうですね。昔、何度か自慢されました。どこにでも侵出來るハッキングツールを使えると豪語していました」

「かわいそうに・・・」

戸松先生が一言だけ呟いたが、まさに”かわいそう”なのだ。発想が貧困だ。ハッキングツールで何でも出來ると思えるほど脆弱なサーバなんてまず存在しない。

偶然起し始めたばかりのサーバや、何かの設定ミスで外部に曬されてしまったクライアントパソコンくらいだろう。脆弱を調べたりするツールには使えるし、BOTとして考えて報収集ツールに使う程度だろう。中には、優秀なツールも存在しているが、どこにでもられるようなツールは存在しない。やはり、最終的には人の持っている発想力や閃きが必要になってくる。

「もちろん。ソースコードをコンパイルしてバイナリだけを渡しますよ。使い方がわからないとは、質問をしてこないだろう。質問してきても、無視しますけどね。津川先生には、悪いけど、出発の前日にセットアップファイルにして、ライセンスに問題にならないアセンブリを全部れた形にして渡しましょう」

「え・・・。あぁUSBにらないですね」

「そうだな。それで諦めてくれれば良いのですが、外部にサーバを作ってファイルを保存したり、ネットワークドライブを使ったり、その程度の知識はあるでしょう。セットアップは、俺が作ります。セットアップと同時にプログラムを常駐させます。北山は、英語が得意でしたか?」

後輩は首を橫にふる。

「そうですか、それならセットアップはそれらしく全部英語で書いておきます。俺たちが使うからと思って安心したら・・・」

「篠崎くん・・・」「先輩?」

「ん?俺は、かなり”イラッ”と來ている。直接、言ってくるなら、文句を言いつつ、正當にツールを渡してもいいと思うけど、津川先生に言わせた上に、自分が言っていることが間違っていないと思っているのですよ?」

二人が黙ってしまったが、俺は、何をやろうか考え始めている。

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