《俺は、電脳世界が好きなだけの一般人です》第五話 ハニーポット

全てのログを解析するのに時間がかかってしまった。

確かに、量も多かったが、それ以上に80番ポートと443番ポートへの攻撃を出して分類したので、考えていた以上に時間がかかってしまった。

もう2時を過ぎている。今日は、このまま殘りのログを解析にかけて寢よう。

寢室に戻って、ユウキの隣に潛り込んで目を閉じた。

「おはよう」

珍しく、ユウキに起こされる。

「おはよう」

ユウキが何を求めているのかわかるので、を引き寄せて軽くを合わせる。

「僕、お腹がへった」

「わかった。今日はバイクで行こう」

「うん!あっ」

「どうした?」

「僕、今日もママの所に行かないとダメだから・・・」

「ん?ユウキもバイクで行けばいいよな?俺の後ろじゃなくてもいいだろう?」

「う・・・。そうだけど・・・」

この顔に弱い。

自分の気持ちを認識してから、どんどんユウキに甘くなっていく。

時間割を確認する。

「ユウキ。今日は、何時限まである?」

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「僕?今日は、5時限だよ」

「5時限が終わったらすぐに出られるのか?」

「うん」

「俺も、5時限だから、大將の所で待ち合わせして、ユウキを家まで送るよ。俺も基地に用事があるからちょうど良かった」

噓ではないが本當でもない。

遠隔からでもログの解析結果を取り出せる。それでも、ユウキの喜ぶ顔が見られるのなら、この位の事は手間でもなんでもない。

「本當?」

「あぁ本當だ」

ユウキが抱きついてくる。

そんなに嬉しい事なのか?よくわからない。

「(タクミは、気がついていない。僕だけに優しいタクミがこんなにも好きなことを・・・)」

「ん?何か言ったか?」

「ううん。何も?タクミ。僕、お腹がへった」

「はい。はい。お姫様。何をご所ですか?」

「うむ。わらわは、パンケーキを所する。アイスとフルーツも忘れるでないぞ」

「かしこまりました。お姫様」

「・・・・」「・・・・」

二人でおでこをぶつけながら笑ってしまった。リビングに向かった。ユウキは上からワンピースを羽織っただけだ。椅子に座って、パンケーキが焼けるのを、キッチンを見ながら待っている。

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朝食を食べてから、時計を見るとまだ時間に余裕があった。

二人でシャワーを浴びてから著替えた。

今日も、大將の所にバイクを停めた。この前の事があるので、新しく買ったカバーをかけておく。大將に聲をかけてから學校に向かう。

5時限目が終わって、大將の店に行くと、ユウキはまだ來ていなかった。前の授業が育だという話だったから著替えで遅れているのだろう。

大將に、俺とユウキの分のヤキソバとたこ焼きを頼んだ。おでんは勝手に取って後で算するシステムだ。適當に串を取り出す。おでんを摘んでいると、ユウキがジャージ姿で店にってきた。授業が終わって著替えないで來たようだ。ちょうどヤキソバが出來上がってきたタイミングだ。

ユウキもおでんも食べながら、ヤキソバを頬張る。急がなくてもいいのにと思ったが、ユウキだからと思って諦める。たこ焼きも出來上がった。ユウキは、おでんの串を使ってたこ焼きを起用に3個ほど持ち上げて食べている。左手でたこ焼きを持って、右手でヤキソバを食べる。多分、背中に二本ほど腕をはやせれば、おでんとジュースも持つに違いない。

會計を済ませて、家に向かう。

ユウキは、シャワーを浴びてから著替えて森下家に向かう。俺は、基地で終了しているログをノートパソコンにコピーしてから學校に向かう。

し、寄り道をして學校に戻った。

遠回りだったが、セントラルスクエアの警備員室に連絡をれて、名前を伝えると、すんなりと中にれてもらえた。

北山が俺のバイクに何をしようとしていたのか知りたかったのだ。警備員は、津川先生から事を聞いていたので、すんなりと話してくれた。俺が、北山やセントラルスクエアに文句を言わないと宣言したことも影響しているのだろう。

どうやら、北山は俺がヘルメットを持って、マクドナルドでジュースを買ったのを見て、自分に気が付かなかった事が頭にきたようだ。それで、ヘルメットを持っていたからバイクで來ているのだろうと思って、休憩を取ってバイク乗り場で俺のバイクをパンクさせようとしたようだ。

それから、バイトも首になったようだ。高校生だと噓を言っていたというのが表向きの理由だ。

話を聞いてスッキリした。今回のハッキングは奴である可能は低い。俺へのヘイトが高すぎる。電脳倶楽部では、役者不足だと思っているのだろう。

學校に辿り著いた時には、ちょうど6時限目の終了を知らせるチャイムがなった。

生徒會室に移しないで、戸松先生の研究室に向かう。生徒會のメンバーにも聞かせたくない話だ。

「篠崎。なにか解ったのか?」

戸松先生には、昨晩メールを送信している。

「話は聞けたのですか?」

「聞いてきた。かなり嫌悪を持っていて、辭めてくれて清々していると言っていた」

「それならよかった」

「最後には、顔が同じだから、どちらでもいいとか言ったようだぞ、俺が思わず謝ってしまった」

「・・・。それは、なんというか・・・。バカなのですね」

「そうだな。それで?罠を張るのだろう?」

「はい。二人は、以前に”詐欺メール”を踏んでから慎重になっていて、SNSも知っている人しか見られない狀況にしているようです」

「ほぉ・・・。それで?」

「試験的に、外部から、各學生の報にアクセスしたり、授業の様子を確認したり、急連絡を伝えたり、先生への相談を行えるサイトを作して公開します。建前は、保護者からの連絡を本人に伝えるのがメインとします」

「・・・。えげつないな」

「そうですか?」

「それで、ログインにはプロキシは使えなくして、スマホだけにするのか?」

「そうですね。ドメインを、絞ります。試験運用ですから、それで問題はありません」

「あぁ彼たち二人のアカウントを作るのだろう?」

「もちろんです。生徒全員の”アカウント”を作りますよ」

「わかった。大筋は、その提案で、詳細は電脳倶楽部で詰める。篠崎は、スマホだけがアクセスが可能になる方法を提示してくれ、あとは電脳倶楽部で作する」

「わかりました。いくつかのプランは考えてあります」

提案書を戸松先生に渡す。

スマホだけのアクセスを絞り込む方法も提示してある。將來的に使うかわからないので、まずはプロバイダーで區切る方法を提案した。

このまま本當に利用するのなら、アプリにしたほうが面倒な設計を省略できる。

戸松先生は、俺の提案をれて、電脳倶楽部が使っている部屋に移する。

俺は、生徒會室に顔を出してから、電脳倶楽部に顔を出す。電脳倶楽部の面々には、ハニーポットだと説明しない。俺と戸松先生がテストデータを作るとだけ説明した。打ち合わせには參加するが、助言はもとめられない限りはしない。電脳倶楽部の面々も、ハッキング対策の一環だと解ったようだが、戸松先生がハッキング対策は別に考えるから大丈夫だと説明する。

荒い作りにはなるがテストだから大丈夫だと言い聞かせて、1週間で仕上げるようにお願いする。

1週間後に、無事にテストサイトは立ち上がって、公開前テストが行われた。

大きな問題はなさそうなので、翌日に公開すると決定された。マリとエリの二人のアカウントに登録されているデータはでたらめだ。他のアカウントも同じく適當なのだが、それらしく見えるデータを戸松先生と二人で作した。

罠の準備は終わった。

公開から、3日後に”彼”はサイトにアクセスしてきた。

予想通りの行をしている。最初は、プロキシで何度もアクセスしてきたが、不正なアクセスとだけ表示されるページにリダイレクトされた。まずは、家のパソコンなのだろう、市のプロバイダーからのアクセスが數回確認される。その時點でエラーメッセージは、”テストサイトの為に、スマホ、又は タブレットからのアクセスをお願いします”となった。エージェントを誤魔化してきたがキャリアからのアクセスではない為にエラーページにリダイレクトされる。

何度もエージェントを変えて試してきていたが、5日後に自分のスマホかわからないが、スマホからアクセスが行われた。マリとエリの名前や名字や名前と苗字の組み合わせでアクセスして來た。そんなことを、1日中やっている。パスワードの組み合わせを考えれば、気が遠くなるのだが、”彼”は諦めなかった。

俺がしびれを切らして、”彼”にヒントを出す。何度か、エラーしたら、アカウント名のヒントと、パスワードのヒントを出すページにリダイレクトするようにした。

面白いくらいに罠にはまった。

に手を出してから、攻撃は止まった。サイトが落ちては困ると思ったのだろう。

そして、通知機能を使って、二人にメッセージを送り続けた。もちろん、二人には屆いていない。俺と戸松先生が管理しているアカウントに送信されるようにしている。気持ち悪いメッセージのオンパレードだ。

二人の最近の寫真が送られてきた事で、対処を急ぐことにした。二人を呼び出して、両親を連れてきてもらう。そして、學校に対して報開示を求めてもらった。學校は、報開示をけて、送られてきたメッセージの送信元をオープンにする。弁護士に連絡をして、利用者の開示請求を行う。

學校のサイトの不正利用と、生徒に対するストーキングだ。

”彼”は無事逮捕された。部屋から、違法な薬が出てきて、大きな問題になったが、彼の証言で學校を退學したストレスを解消するために使い始めたと言われて、學校側には質問と部調査の徹底だけで終わった。

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