《俺はショートヘア王が大嫌い》Episode3 最初のステップは大事
次の日、俺は言われた通りあいつの家の前で待っている。あいつの言う通りにするのは癪に障るが、言う通りにしないと何されるか分かんないからな。昨日のあいつなら何をやらかすか予想できなくて怖い。んなことを考えていると、玄関のドアが開いた。
「おはよ〜」
「お、おう」
昨日のあれを見たからだろうか、いつも通りのかわいいコイツにドキッとした。いやいや、そんなことあるわけないだろ。だって悪魔だぞ悪魔。
「それじゃあ行こっか」
「そ、そうだな」
「ねぇ、後ろ乗せてよ」
「斷ったら?」
「あなたが変態ストーカーだって學校中に言いふらすわ」
「どうぞこちらにお座りください。座布団を用意しましょうか?」
「凄い切り替えの早さね」
「だってお前の発言力ヤバそうだし。學校での俺の居場所無くなっちまうだろ」
「あら、よく分かってるじゃない」
「じゃあ進むからな、しっかり摑まっとけよ」
「はーい!出発しんこ〜う!」
「お前も切り替え早いな」
ていうか、昨日みたいな雰囲気を男の前で出せば絶対近寄って來ないだろ。何でわざわざ俺を使うんだよコイツは。
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特に何事もなく學校へ著き、2人で教室へる。すると同じサッカー部の蒼月が走ってこっちへやってきて耳打ちした。
「お前、坂木と付き合ってるって本當か?」
おっと、早速壁にブチ當たったなこりゃ。でも表向きでは彼氏だからここはYesと答えるべきなのか、と迷っていると、亜実が俺を見て頷いた。これはOKサインってことか。ていうか何で耳打ちしてんのに聞こえてんの。地獄耳過ぎて怖いんですけど。
「お、おう。まあな」
「2年上がったばっかなのに〜、やるな〜海七渡!」
「そ、その話は後でするから、とりあえず座ろうぜ」
ここで目立つのはあまり得策じゃない。クラスの中ではじわじわと付き合っている雰囲気を出していけば良いだろう。まあどうせアイツが勝手に裏で回ししてるんだろうけどさ。てか今考えたらあいつの彼氏とか釣り合わな過ぎるよな、俺。
桜の花はとっくに散り、葉となりそのをピンクから緑に変え、中庭を彩っている。
現在、3時限目の現代文の授業中である。2時限目の育の後のせいか、5割ぐらいの生徒は寢てしまっている。現代文擔當の山中が宮沢賢治の【こころ】を読んでいる。すると急にポケットにれていた攜帯がブルリと震えた。亜実からのラインだ。え?俺追加してないけど、いつの間にか友達になってんだけど。もう…怖い!あいつ、いつ俺の攜帯いじったんだよ。とりあえずメッセージを開いてみる。
【この授業が終わったら、外來て】だそうだ。とりあえず、
【仰せのままにお姫様】とふざけて送ったら、
【死にたいの?笑】と返ってきた。何だよ"笑"って。アンバランスさが余計怖さを引き立たせてるんですけど。絶対あいつ今俺のこと見てるよ。怖すぎてそっち向けないよ。
3時限目が終わり、俺は今亜実(悪魔)と教室の外にいる。
「んで、何か用か?」
「朝言い忘れていたんだけど、今後人前では私とあなたは人同士だから。それを踏まえて行しなさい」
「了解」
「あと…」
「何だ?」
「私、今週の土曜日試合だから、応援に來なさい」
「バレーの試合か…分かったよ」
「何想像してるの、気持ち悪い」
「おい、今のは理不盡すぎるだろうが」
こいつ、俺と2人っきりだと人格変わりすぎだろ。
「時間とか場所は?」
「場所と時間は分かり次第連絡するわ」
「おっけー」
ってなことで俺は、亜実の試合の応援に行くことになった。
そして當日の土曜日。昨日亜実から送られた會場に時間通り到著した。外から見ても分かってたけど、結構でかいんだなこの育館。まあうちの高校ってスポーツはどれも盛んだしな。俺の所屬するサッカー部は、県大會で優勝もしてるなかなかのチームだが、子のバレー部は関東大會にも出場している。その部の部長をやっている亜実は本當に凄いのだと思う。お、試合が始まったみたいだ。結果から言うと、亜実って化けだな。まあ知ってたけどさ。まさかこれほどまでとは。だってそんな長高くないのにあの打點であんな真下にスパイク打てるか、普通。しかも勝った後俺に手振ってたし。俺も返したらチームメイトが何か盛り上がっちゃってるし。とりあえずラインしとくか。
【お疲れ様。外で待ってるから】と送っておいた。
育館の前のベンチで待っていると、亜実が部活仲間と一緒に出てきた。ニコニコと両手で手を振ってきたので、俺もさらりと返す。すると照れたような素振りを見せ斜め下を向く。流石演技派。人の前だとパーフェクトヒロインですね。それを見て、周りの子もキャーキャー言っちゃってるよ。とりあえずめっちゃ恥ずかしいから早く帰りたいんですけど。亜実は部活仲間とバイバイと挨拶をわしこちらへとてとてと小走りでやってきた。そして俺の期待の視線を送る。これはこの前と同じ合図の視線だ。ってことはちょっと彼氏っぽいことしろってことか。よし、めっちゃ恥ずかしいけどやってみるか。
「お疲れ様。かっこよかったよ」
と言って頭を軽くでた。どうだ、これが正解か。亜実の顔を伺っていると、嬉しい表をしながらも、しっかりウィンクをしていた。これはおみ通りの答えってことで良いのか?とりあえず後ろの子が騒ぎすぎて恥ずかしいので足早に帰ることにした。
「まあ及第點ね」
「そうですか」
「頭をでるのは案外ハードルが高いから、次からは控えてほしいわね」
「はぁ…」
「あ、そういえば」
「これ」
「ん?」
それはうちの高校の全學年クラスの文化祭の表だった。俺のクラス、2年8組は"発表"と書いてあった。
「ってことは俺達のクラスは、劇とかをやるのか?」
「まぁそうね」
なるほど。文化祭のテンプレってじだな、劇って。でも、何で今その話を持ち出すんだ。2人っきりのときに。ん、待てよ、すごい嫌な予がする。
「あなた、この劇で主役をやりなさい」
「………は?」
何言ってんのコイツ。俺が主役?いやいやいや、無理無理無理。主役ならイケメンの蒼月とかにやらせればいいだろ。さては、何か企んでるなコイツ。
「何が狙いだ?」
「あら、意外と鋭いのね」
「お前に褒められても嬉しくない」
「そうね。狙いはあるといえばあるわ」
「はっきりしない言い方だな」
「正直、そこまで考えていなかったから」
「早く本題にれよ」
「そうね……一つの狙いとしては、あなたの知名度を上げるのが目的よ」
「俺の…知名度?」
「そう。當初の目的は、あなたは私の彼氏として行するというものだったでしょ?」
「そうだな」
「だから、文化祭で私とあなたが主役をやれば、その手間が省けるんじゃないかと思ったのよ」
確かにそうだ。文化祭の劇で主役とヒロインをやれば、全校生徒からそういう風に意識される可能は高い。でも、わざわざ自分たちからそれを見せびらかすようなやり方は俺はあまり好きじゃない。けど、コイツとやるならまだマジだな、なんて思っちまってる自分がいる。
「とまぁそういうことだから、忘れないでね。送ってくれてありがと、さよなら。」
「おう、また明日な」
俺は軽く手を振ってあいつの玄関が閉まるまで待っていた。アイツのことは大嫌いだけど、なんか安心するんだよな、アイツといると。これが最初のステップってじだな。まぁ失敗ではなかったな、うん。文化祭か、また面倒くさくなりそうだな〜。と思いながらも、し楽しみになってしまっている俺は、やっぱりアイツの思い通りになってるのかもしれない。
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