《俺はショートヘア王が大嫌い》Episode9 前進よりも漸進

俺が部活を辭めた翌日。教室はざわついていた。何事かと思い、一緒に來ていた亜実に視線で問うが、亜実は首を橫に振る。俺は後ろの扉から靜かに教室へり、自分の機に向かった。カバンを下ろして座り、喧騒に耳を傾ける。しかし、聴こえてくるのは『ヤバい』だの『マジ?!』だのイマドキの語彙力の欠片もじられない言葉だけ。まったくなっとらんな!近頃の若いもんは!と心の中で叱咤をかましてみる。まあ俺もイマドキの若いもんだけどね。

とりあえず何についてかは分からないので、鳴かぬなら鳴くまで待とう神でいくことにする。俺は鞄を開け、放課後に絢幸あやさ先輩、通稱あやちゃん先輩に貸すニーチェの哲學書を取り出し、軽く読み直すことにした。タイトルは【ニーチェとの対話】。たしか、あやちゃん先輩が読んでいたのは【この人を見よ】だった気がする。そっちも持ってはいたが、そこまで容覚えてないんだよな〜。

その時俺の攜帯が震え、俺はポケットから取り出そうとすることに気を取られ、本を床に落としてしまった。結構な大きい音が教室に響く。やだ!さっきあんなザワザワしてたのに!自分のせいで急にしらけるとドキッとするよね。俺はし恥ずかしさをじながら本を拾って表面を払う。ふと、自分にまだ視線が集まっていることに気づく。さすがに違和を覚えたが、今さっきの攜帯の震えを思い出し、畫面を見た。震えの正は亜実からのラインだったのだが、その容に俺は唸ってしまった。

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『小林だかなんだかの噂が回ってるらしい』

『噂って?』

『海七渡の退部の話』

『なるほど』

そういうこと。それなら今の俺への視線も納得がいく。でもどうやって広まったんだ?広める奴の心當たりとかは特に……あ。いや、でもあいつに限ってそんなことはしないだろ。ただ可能としてはある。でも何の為に?理由は分からない。なら聞けばいい。あいつが言ってた言葉だな。

俺はHRホームルームが終わり、そいつがトイレに行くのを見て、後ろからついていくことにした。

「何で噂を流した?」

「何の話だ?」

「とぼけるなよ蒼月。同じクラスで知らないとか、そんなバレバレの噓通じねぇよ」

「それもそうだな。まあ噂というか真実だけどな」

「それでもだ。何の為にこんなことをした」

「何の為……か。正直、別に理由はないな」

「理由もなくするかこんなこと。んなことしても俺は戻らないし、かえってサッカー部に目が集まるだけだぞ」

「その通りだな。何でこんなことしたんだろうな」

蒼月は他人行儀な口調で窓の外の空を見ている。俺はそんな蒼月がどこか寂しそうで居た堪れなくなった。もし、仮にこれが俺のせいだとするならば、俺はまた失敗したことになる。やはり俺は選択を間違えたのだろうか。數學の問題は、間違えてもまた解き直すことができるが、人の生はそうとは限らない。間違えたものをやり直せず、さらに間違えてまた間違いを上塗りしていく。だから人間は後悔をたくさんするのだろう。俺はそれを目一杯じて、蒼月の目の奧に見えるものをじっと見た。蒼月は俺の鋭い目つきにし驚いたような顔をしたが、すぐに真顔に戻り、俺に視線を飛ばす。俺はのあたりにつっかえていた疑問を素直にぶつけた。

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「俺を憎んでるのか?」

「まさか。悔しい気持ちはあったけど、あの後よく考えて、たとえ俺でも同じことをするだろうと思ってな。いや、そうせざるを得なかっただろうな」

蒼月はし自分を攻めるような口調で言葉を連ねていく。

「そうか。でもこんなこと言うのはあれだが、俺は別に小林のことはもうどうでもいいと思ってる。どうせいつかこうなってたかもしれないしな。とりあえず、この噂はただの噂だったっつーことにしようぜ」

「わかった。悪いな迷かけて。し魔が差したのかもしれない」

「別にいいって。俺も迷かけちまってんだから」

とりあえずこっちの話はついた。これからが本題だ。俺は、トイレの扉に手を掛けかけて、後ろを振り返らずに言った。

「県大會」

「え?」

「準決勝で負けたんならベスト4だろ。なら県大會行けるじゃねーか。応援するから、頑張ってくれよ」

「……お、おう!初優勝お前に捧げてやるよ!」

俺はそれに手を挙げて返事をし、トイレを後にした。さすがにあんな終わり方じゃ俺もあいつも納得しない。なら納得するような答を求めるだけ、數學と同じだ。まあ俺、數學超嫌いなんだけどね。

授業の容を右から左へけ流していざ放課後。俺は図書室へ直行した。図書室までの廊下には、昨日と同じの眩いが差し込んでいる。俺の上履きの音だけが廊下に音を奏でている。コレも昨日と同じだ。そんなことを考えていたら、扉の前。ゆっくり扉を橫に開け、中を伺う。まだあやちゃん先輩は來てないみたいだ。ちょっと早く來すぎたか。先輩を待つ間、俺はニーチェの哲學書と一緒に持ってきていた読み途中のラノベを栞しおりの部分で開く。10分程読み耽ふけっていると、扉をスライドさせる音が聞こえた。俺はオトノナルホウヘ視線を向ける。そこには、急いで走ってきたのだろうと安易に予想できるぐらいれた髪型と、荒い息づかいでこちらに向かってくる先輩がいた。先輩は俺の向かいの椅子に腰掛け、

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「すみません。待ちました?」

「全然。俺も今來たとこです。」

「そうですか。よかった〜。」

「別に走らなくても良かったのに 。しぐらい遅れても気にしませんよ」

「いえいえ、貸してもらう立場で遅れるのは私のプライドが許しません」

「でもこうして俺の方が先に來てますけどね」

「うぐ……。でもほんのちょっとの差ですよ!」

「とりあえず、これどうぞ」

「む、無視ですか……」

そう言って俺は機の上にある例の本を手渡す。先輩はそれを両手で目を輝かせながらけ取った。

「よ、読んでもいいですか…」

「もちろん」

その一言を境に、先輩は自分の世界にっていった。この人、本読んでるとき周りの空間全部シャットアウトしちゃってんじゃないのってぐらいの集中っぷりだ。寧ろ怖いレベル。俺は先輩の顔をし眺めて、さっきの続きを読むことにした。同じ空間で違う本を読む。近いようで遠い距離。そんなものをじながら、時間を忘れてその覚を楽しんだ。

どのくらい経っただろうか。時計をちらりと見ると、6時手前である。もうすぐ亜実の部活が終わるし、図書室が閉まってしまう。そう思って先輩に聲を掛ける。

「先輩」

「………」

「先輩?」

「……………」

「ダメだこりゃ」

忘れてた、この人のめり込んだら帰ってこれない人だったわ。もうし粘ってみるか。

「せんぱーい、おーい」

「…………」

やっぱダメだわ。もう一度時計を見やると、同じ方向の司書室の窓からこちらを微笑ましそうに覗く司書さんがいた。あの人、この狀況楽しんでやがるな。なら俺も一がなきゃな。この技はへの負擔が半端ない(全く無い)し、相手のにも多大なダメージを與える(與えない)ことになるが、やむを得まい。くらえ!必殺!耳元で喋る!ウィスパーブラスト

「先輩」

「ひゃっ?!」

「先輩、どんだけハマってるんですか。時計見てくださいよ」

「え?あ……す、すいません。凄く面白くてハマってしまいました」

「全く。耳元で喋らないと気付かないなんて、ちょっと危ないですよ」

「そ、そうですよね。自分でも直したいんですけど無意識に……。そ、それより!耳元で囁くのはやめてください!は、恥ずかしい……です……」

最後の方になるにつれ、聲がどんどん小さくなっててかわいい。亜実と出會ってなかったら余裕で好きになって告白して余裕にフラレてる未來が見える。ここでフラレるのが俺クオリティーだな。妄想の中でも付き合えないってもう末期だろこれ。

「分かりましたよ。特別に先輩のそれが直るまでにしときます」

「そ、それを言われると弱い……。とにかく!なるべくやめて!」

「は、はい。それより先輩。今、タメ語に…」

「あ……確かに……」

「ある意味一歩前進かもしんないですね。その調子ですよ」

「そうですね、頑張ります!」

「敬語だと、相手は距離を置かれてると思いますからね。頑張ってください。あと、それは持って帰っていいですよ。読み終わったら返してもらえれば」

「いいんですか!ならお言葉に甘えて」

「お楽しみのとこ悪いけど、もう閉めるわよ」

「あ、今出まーす」

「すみません、今出ます」

司書さんにし急かされて俺達は図書室を後にした。玄関に向かって上履きで曲を奏でながら足を進める。橫には鞄を肩に掛けて歩く先輩。窓から差し込むは、さっき見たときよりの濃さをわにしていて、橫を歩く先輩と合わさってしさのシナジーを存分に発揮している。知らない間に、目線は先輩を捉えていて、目が離せなくなっていた。吸い込まれるような、その真っ黒に艶めく黒髪、先を見據える円つぶらな瞳、先輩を構する全てがしさを生んでいて、しさの塊と言っても差し支えない人が、こちらを向く。

「どうしました?」

「い、いやー別に……」

「ん、何か隠してるような顔ですけど」

「だから何でもないですって」

見惚れてたなんて言えるわけないだろ。恥ずかしいし、亜実のことが好きな自分に噓をついている気がして厭だった。

生徒玄関までの會話は、本についての話題だった。本について話しているときの先輩は本當に楽しそうで目が輝いていた。そういうとこ皆の前で出せば絶対友達できるのにな〜。でも、先輩がぼっちじゃなくなったら會うこともなくなるかもしれない。それはそれでもの寂しい。うむ、なら今が一番だな。現狀維持、バンザイ!

玄関につき自分の下駄箱を開けて靴を履き替え、先輩と別れの挨拶をわした俺は、正門まで歩く。のんびり歩いていると、こちらに向かって小走りでとてとてしてるのが一人。

「何で私の方が早いの!」

「悪い悪い。図書室でのんびりしてたら時間忘れてて」

「へー」

そう言ってジト目を俺に食らわせてくる。う〜、そんな顔もイイ!なんてキモいことを考えて、新しい言い訳を口にした。

「いやー実は、ある人に本を貸しててさ。その人がのめり込んじゃって大変だったんだよ」

「なに、ある人って」

口を膨らませて不満げにしてる割に、しっかり詳細を聞いてくる亜実。口膨らませてるのもかわい……ゲフンゲフン、そんなことより今は説明だ。

「昨日どうするか図書室で悩んでたらその人がいてさ。その人に諭されて決心がついたんだけど、その人もニーチェが好きらしくてさ〜。だから俺の私貸したってわけ」

「ふ〜ん、なるほどね。ちなみに言っておくけど、の子じゃないよね?」

「く………の子です……3年の」

「へ〜。好きな人との待ち合わせ忘れといて、呑気に他のの子とイチャイチャしてたってことね。言い訳にしては上々ね」

「お、おい、ちょっと待て!お前誤解してるぞ!」

「誤解も何も、その人、絶対可いでしょ」

「確かに可いけど……って、待て!話を聞け!」

「はいはい。そんな調子で私を惚れさせるなんて夢のまた夢よ」

「たしかに……。でも俺はその人のことは別に好きでも何でもないぞ。好きなのはお前だけだっての」

「ふ、ふ〜ん。そ、そんな上辺だけの言葉で何とかなると思ったら大間違いだけどね」

「その割には々顔が赤いようですが?」

「う、うるさい!早く帰るよ!」

「はいはい」

最近はこいつの扱いにも慣れたもんだ。褒めて煽おだてたらこっちのもんよ。普段完璧なのにこういうところピュアなんだよな〜。

亜実を家まで送り、帰路に著く。玄関をガチャリと開けて軽くただいまを言う。返事がないってことは、今日、脩しゅうは塾なのか。まったく、まだ小4なのに大変だよな〜。あいつはいつか大になるな、うん。

とりあえず夕飯を作るために冷蔵庫の中を確認する。あ、やべ。卵切らしてるし、全然材料無いな。こりゃ買いに行かないとまずい。俺は自分の空腹とガチンコファイトクラブし、結局買いに行くことにした。財布を持って自転車をし飛ばしてお目當てのスーパーへ向かう。

最初に卵売り場へ向かう。一応2パック買っとくか。次はだ。お、豚のバラが安いな。なら今日は生姜焼きにでもするかな。あとはキャベツと……鮭も買っとくか。あとはジュースと…………………………

そんなこんなしてると2袋パンパンになるぐらいの量を買ってしまった。まあ買いに行く手間省けるしいいよね。

「あれ?海七渡みなと?」

袋を持ってスーパーを出ようとしたら、り口の方から聲をかけられた。聴きなれた聲。もちろんあいつで間違いない。

「お〜、亜実か。買いか?」

「そうだよ。……凄い量だね。お遣い?」

「あれもこれも買っとかなきゃってやってたら、ついな」

「持てるの?」

「まあ歩きだから……あ、チャリで來ちまった」

「なにやってんのよ。はぁ〜、私が半分持って上げる」

「いいのか?均等にれたから結構重いぞ?」

「いいよ。ただし、一つ條件!」

「何だ?條件って」

「夕飯ごちそうすること!」

「夕飯か、おっけー」

「別に。いつも作ってるしな。うち父さんアメリカにいるし、母さんは仕事で帰り遅いから」

「そうなんだ。寂しくないの?」

「辛くないわけじゃないけど、お前の方がもっと辛いだろ?だからそんなこと言わねーよ」

「そっか………ありがと」

「どういたしまして」

そんな話をしてたら本日2回目の帰宅。玄関の鍵を開け、一応ただいまを言う。家に誰もいないって分かっていても、ただいまは言いたくなるんだよな。冷蔵庫へ向かい、使わない食材を詰める。亜実も手伝ってくれて、なんか新婚みたいで凄くグーーーーーーーッと、きたーーーー!ゴホンゴホン、改めまして、俺の未來が前途洋洋ぜんとようようになりそうなじを匂わせて來ている。

「悪いな。適當に寛いでてくれ。今作るから」

「何か手伝おうか?」

「もう十分してもらったって。お客は座っといてくれ」

「ん、分かった」

その返事に軽く笑みを零しながら俺は調理を開始した。どうでもいいけどさ、『ん』って返事されるのめっちゃキュンとしたんですけど。危ない危ない。米は冷蔵庫にあるものをレンジでチン。略してレンチン。なんか鋼っぽいね。てか2文字しか略せてないし。

30分程度で夕飯は完した。お盆に二人分の食事を乗せてテーブルへ運ぶ。メインは豚の生姜焼き。橫にキャベツを添えて。あとは味噌と煮、昨日の殘りだ。

「ほい。出來たぞ」

「ほんとに料理できるんだ」

「疑ってたのかよ」

「そういうわけじゃなくてさ」

「とりあえず食おうぜ。腹減りすぎてやばい」

「そうね」

「「いただきます」」

「このお米、が違う」

「あー、それな。生姜焼きのタレをちょっと塗ってあるんだよ。弟が好きでな。しょっぱいか?」

「ううん、味しい。あんな短時間で3品も。もしかしたら私よりも料理上手いんじゃないの?」

「煮と味噌は殘りだ。多めに作って冷蔵庫にれとくと、し楽になるからな」

「手際も良くて主夫力も高い。専業主夫にでもなったら?」

「それただのヒモじゃねーか」

「まあそうとも言うね」

「働くのは嫌だけど、自墮落な生活はもっと嫌なんだよ」

「……変なプライド」

「こらそこ、ちゃんと聞こえてるぞー」

「にしてもほんとに上手よね。また食べに來てもいい?」

「まあ一人分増えても変わらないしな。いいぞ」

「やった。でも料理できるところは彼氏になる人としてポイント高いかもね〜」

「まじか?!」

まじかよ!なら今日のこれって結構大きな一歩なんじゃないの?いいじにポイント稼げてるんじゃね?実際はどうか分からないが、確信に近いものはじてきている。頑張れ俺!あいつの完璧鎧をぶっ壊す日はそう遠くない!………かも……………しれない(NO自信)。

食事を済ませ、俺は読み途中のラノベの頁ページをつらつらと目で追っている。あのあと食を洗おうとしたら、どうしても洗いたいと亜実が言うから、仕方なく洗ってもらっている。俺はすることがないので、手元にあったラノベを読んでいる。

洗いが終わったらしく、亜実がソファにぽふっと座った。

「悪いな、洗ってもらって」

「いいの。私がしたかったんだから。でもまだ返し足りないわ」

「いやいや、元々はお前が買い袋を持ってくれたことからはじまってんだけど」

「細かいことは気にしないの。ねぇ、耳掃除はどう?今なら膝枕付きだよ?」

「う〜ん、俺ほぼ毎日してるから取れないと思うけどな」

「心配無用!私上手いから凄い取れるのよ。従妹にもよくしてたから」

「そうか、ならお願いするけど、膝枕はしハードルが高すぎやしませんかね」

「膝枕なんかでドギマギするような子供とは付き合えないかな〜」

「まあ膝枕なんてただの枕だし?余裕っちゃ余裕だわ〜」

「フッ、ちょろい。それじゃあ正座するから、ここにどうぞ」

そう言って、亜実は自分の太をぽんぽんしている。ていうか膝枕って実質太枕だろ。オレからしたら、棒高跳びレベルのハードルなんですが。とにかくじたら終わりだ。これは枕これは枕これは枕。

「は〜い、いらっしゃい。じゃあ、左から始めるね」

「よ、よろしくお願いしまひゅ」

張してるの?大丈夫、痛くしないから。じゃあ、れるよ〜」

「は、はい」

綿棒が俺の耳を侵蝕している。うぉぉぉぉぉぉ!脳が震える震える震える、ふぅぅるえるぅぅぅ!!

なんだこりゃ、自分でやるのと段違いに気持ちいい。全然痛くないし、いところに手が屆くってじだ。やばい、クセになりそう。

「ふふっ、気持ちいいでしょ」

「やばいなこれ」

「どうどう?ハマりそう?」

「ハマるかも」

「そっか〜。あ、待って、大きいのがあるから。かないでね」

耳の奧にある耳垢を亜実が丁寧に剝がしているのをじる。ふわぁぁぁぁぁ。やばいぃぃぃ溶けるぅぅぅぅ。

逆も同じように開拓されて、俺はスライムみたいにどろどろに溶かされてしまった。にしても上手すぎて怖いわ。俺もうこれ無しじゃ生きていけないにされちゃうよ〜。

「あなた、ちゃんと耳掃除できてないわよ?耳垢って耳のの中間あたりに溜まりやすいから、奧をると耳垢が奧に行っちゃうの。これからは注意しないとね」

「はいぃ〜」

「そんなに気持ちよかった?また今度してあげるね」

これはマズイぞ。非常にマズイ。このままだと完全に手玉に取られちまう。早くなんとかしないと。

俺が強い決意を固めているとき、インターホンが鳴った。時間を考えたら、多分脩しゅうだろう。インターホンを覗いてみたら、やっぱり脩だ。

「おかえり。今開けるわ〜」

「うん!!」

「?なんか今日テンション高いな。何かあったのか?」

だよ〜!」

「とりあえずおかえり、脩」

「ただいま!と、おかえり!」

「何でおかえり?」

「ただいま〜」

「………………親父?」

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