《俺はショートヘア王が大嫌い》Episode11 ハジメテ

無事、亜実と付き合うことのできた俺は、その実のないまま、とりあえず亜実の夏服を見に行くということで、GUに行くことに。

は混んでもいなく、かといってガラガラでもない様子だ。亜実は店にると、片っ端から服を手にとり、鏡の前で合わせては首を傾げ、また次の服を手に取ったりしていた。正直、子のファッションはよく分からん。まあ男のファッションも分からないけど。

10分ぐらいう〜んと唸って、ようやく何セットかコーディネートを決めたらしく、試著室へっていく。

「じゃあ俺は適當にメンズの服見てるから」

そう言って試著室の前からこうとしたとき、服の袖をつままれ、

「試著するから確認してよ」

「いや、でも俺センスないぞ?」

「いいの!海七渡の好きな服が著たいんだから」

「んぐ……」

そういうこと平気で言うから。俺のライフが持たないっつーの。ていうか亜実なら何著ても畫になりそうだな。なんかの子が読む雑誌の表紙とかに載ってそうだわこいつ。

「あ〜もう、分かった。見ればいいんだな!でも過激なのはよしてくれよ?俺が死ぬから」

「なんで死んじゃうの……ってなんで見てんの!」

「い、いやー今のは仕方なく、だな……」

「………変態」

Oh…。自分の腕で自分を抱きながら顔を赤らめてそう言った。予想外の破壊力に俺は口角がつり上がり、ニヤニヤしてしまう。こいつ、無意識でやってるとしたらやばいな。天然たらしになりそうだ。まあそんなことさせないけど。

亜実がそのことばを捨て臺詞にして、試著室のカーテンを勢いよく閉めた。馬鹿野郎、そんな強く閉めたら壊れちまうだろ。

し経って、中かられの音が聞こえてきた。

俺の心臓はもう発寸前だ。このカーテンの向こう側には、下著姿の亜実がいる。そう考えたら、頭から湯気が出そうなくらい興するが、俺は首を橫に振って邪念を振り払い、試著室から距離を取った。

さすがにあのままあそこにいたら気が狂ってしまいそうだ。

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2、3分経って、亜実が出てきた。

そこには、いつもとは纏う雰囲気の違う亜実がいた。

トップスは、し大きめの白いYシャツ。柄はなく、シンプルなもの。

インナーは元を強調するVネックの黒いインナー。

トップスとのシンプルさも相まって、大人っぽさが表現されている。

そしてボトムスは、黒のスキニーパンツで、膝のあたりにダメージがっている。

そして右手には黒革のベルトが二重になっている腕時計。

を見ると、クールな大人のという雰囲気だ。格好良さの中に隠れたクールビューティーな亜実に見惚れてしまって、俺はぼうっとしていた。

「どう…かな…?」

「……あ、ああ!めっちゃ似合ってるな。思わず見惚れてたわ」

「そっか〜。ならこの服買おっかな!じゃあ次に著替えるね!」

「ああ」

「ジャジャーン!どう?似合う?」

「…………」

次のコーディネート。

トップスは、首周りが緩めのチェック柄のカットソー。袖は七部丈で、亜実の真っ白な腕をわにしている。その腕は、細くも太くもなく、人間のの一部とは思えないほど神的で、魅的だった。

ボトムスは、緑のミニスカートで、黒いベルトを腰に巻いている。そう、"ミニスカート"だ。ミニスカートを履くということは、當然、太ももがわになる。俺は恐る恐る目線を下にずらしていくと、そこにはユートピア。中の腕とは違い、付きのある純白の太ももがスカートから覗いていて、俺は変な気分になりそうだった。間一髪で理を留まらせたが、他の男ならやばかったかもしれない。こんな生足を曬していては他の男の視線が集まっちまう。やだなぁ、亜実の足を舐めるように見られるの。見てたら顔毆っちゃうかも。

ワンポイントとして、頭にミニスカートよりし濃い目の緑のリボンを結んでいる。

を見て、一言。可い……。

さっきのクールビューティーな可さに反して、王道のスタンダードキューティーなじのファッションだ。正直、どっちも似合いすぎてるし、こいつの完璧さを改めて思い知らされる。ほんと、俺なんかが彼氏で良いのだろうか。

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でも気になったことが一つ……

「それにしても、スカート短くないか?」

「そう?もしかして、あんまり似合ってない?」

「いや、すげぇ似合ってて可いんだけど、その、出し過ぎというか、他の男とかに見られそうだな〜、なんて……」

正直、烏滸おこがましいとは思う。いまさっき付き合ったばかりなのに、急に彼氏面をされたら、不満に思うかもしれない。それでも、他の男に亜実を変な目で見られたくない気持ちの方が強くて、口に出してしまった。引かれた……だろうか……。

「海七渡、それって………嫉妬してくれてるの?」

「あ、當たり前だろ。こんな可の子、他の奴に絶対渡すもんかよ」

「そっか〜。ふふふ。海七渡って、そういうとこかわいいよね」

「だ、誰がかわいいだ!」

「まあ確かにし短いかも。なら、もうし長めのやつにしょっかな〜。太もも出すのは、海七渡と二人っきりのときだけにするね?」

そう言って、亜実は小悪魔的な笑みを浮かべて、楽しそうに俺を見ている。

いや、二人っきりのときでもなるべくやめてくれよ。俺が死ぬから。

結局、3セットほどの服を買って、その店を後にしようとしたら、

「待ってよ、折角付き合ってもらったんだから、海七渡の服も選ぶよ!」

「いいよ俺は別に。別に興味ないし、俺が似合う服なんて無いだろ」

「何言ってんの?海七渡は顔もかっこいいし、選び方さえ間違えなければ凄いかっこよく仕上がると思う!だから私に任せて!」

そう言われたら斷るのも酷だから、お言葉に甘えて、コーディネートしてもらうことにした。

亜実は俺の正面に立ち、俺の全をくまなくチェックしている。10秒ほどそうしたと思ったら、『なるほどね』と呟いて、上下のセットをあっという間に何セットも揃えてしまった。

どうなってんだあいつの観察眼は。俺の全見ただけでコーディネートできるなんて。まだ試著していないが、あいつが選んだものだから似合うのだと思う。

「見ただけでどれが似合うか分かるのか?」

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「まあ大雑把にはね。長とか肩幅、足の長さやウエスト、人によってそのバランスは様々でしょ?だから、それを確認して、全的にバランスのとれたコーディネートをしただけだよ」

「簡単に言うけど、それって相當ムズいんじゃないのか?普通の人なら著てみないと分からないだろ。そこまで行くと最早デザイナーの領域だぞ」

「確かに知り合いのデザイナーに教えてもらったりしたことは結構あったかも」

「知り合いにデザイナーがいるのかよ……」

亜実って亜実自も凄いけど、その人脈もえげつないな。どうやって知り合ったんだよ。気になったから聞いてみた。

「どうやって知り合ったんだ?知り合いにデザイナーなんて、なかなか無いだろ」

「え〜っと、私が東京に行ったときにスカウトされて、しだけファッションモデルの仕事もやってたのね。その時の擔當デザイナーの人のこと。今でも連絡は取り合ってるんだけどね」

「まじか。ファッションモデルとかもやってたのかよ。お前ほんとスペック高いのな」

「そんなことないよ。それより、早く試著してみてよ!多分似合うと思うから!」

「おう、分かった」

にしても亜実ってほんとに凄いよな。それに比べて俺は……いや、いかんいかん。自己嫌悪ほど慘めなものはないからな。

亜実に急かされて試著室へる。『まずこのセットね』と言われて渡された服を見る。

まず、トップスがデニムの襟なしシャツ。特に柄もなく、シンプルなものだ。既に袖はロールアップされていて、このまま著ればいいのだろうか。

インナーは、無地で長めの白いTシャツ。これも柄のないシンプルなもの。

ボトムスは、ロールアップされたピタッとしたデニム。

とりあえず鏡で変なところがないか確認し、カーテンを開けた。

「………どうだ?」

「うん。やっぱり似合ってる。簡単なことだけど、トップスが短めならインナーは長め、これはファッションの鉄則だからね。あえてそれを崩す人もいるけど、これを守るのが無難かな。夏だからってシャツ一枚でいいや、なんて考えもアウトだよ。最近の服は薄手だから二枚著てもそこまで暑くならないし、見映えも良くなるの。後は、ボトムスかな。デザインとかダメージは置いとくにしても、ゆったり目かスキニーみたいなピタッとしたものの二種類にわけられるし、當たり前だけどイメージは180度変わるんだよ。ある程度長がないと、ガウチョみたいなゆったりめのボトムスはかえってずんぐりむっくりにみえてマイナスになっちゃうから。それから………」

それから試著室の前でファッションの鉄則の數々を叩き込まれた。ダメだ、頭がパンクしちまう。

なに、ガウチョって。新種の鳥なの?

今時の人ってこんなこと考えながら服著てんのかよ。戦爭にでも行くのか。

「因みに、海七渡って長いくつ?」

「確か……177ぐらいだったかな」

「それだけあればゆったりめのボトムスはすごく合わせやすいよ。ガウチョとかも履いてみよっか」

「……はあ」

次のコーディネート。

トップスはダークブルーのプルオーバーシャツ。ゆったりめなサイズで、縦に薄くラインがっている。控えめな柄ってじだ。首元はそこまでゆったりしていないから、派手のインナーを著ても失敗しなさそうだな。

この知識はさっき亜実から教わったものだ。

案の定、インナーはオレンジのタンクトップ。これも亜実から教わったものだが、派手のインナーはトップスから出ないほうが良いらしい。これも、あえて崩す人はいるが、無難に考えるなら従ったほうが良いのだとか。

そして、ボトムス。

亜実がさっき言ってたガウチョパンツってやつだ。

は黒。

今気がついたが、足の太い俺にとってガウチョパンツはシルエットが隠すことができるのは凄いことだ。そこも考慮して俺にこれを履かせたとしたら、亜実の凄さに頭が上がらない。

とりあえず、鏡で自分の姿を確認する。

こんな格好したこと、初めてだ。なのに、不思議と違和はなくて、自分でも似合ってると思う。

今までファッションなんてそこまで考えてなかったけど、面白いかもしれない。

カーテンを開ける。

「……どうかな?」

「……いいね。さっきのも良かったけど、こっちもいいじゃん!」

「そ、そうか?でも選んだのは亜実だけどな」

「著こなしてるのは海七渡なんだから自信持ちなよ!それで、買うの?」

「ああ、これとさっきのやつ買おうかな。なんか、今までファッションとか興味なかったけど、見方が変わったかもしれない」

「そっか。よかった!」

結局、服に合う時計やアクセサリー、靴も買うことになった。時計はダニエルウェリントンの黒革、靴はドクターマーチンの黒いオーソドックスなものを買った。合計金額が大変なことになっていて、目玉が飛び出すほどびっくりした。実際、レジで『は?!』と聲を出してしまった。

おかげで財布の重力をじなくなってしまったが、まあ、いいだろう。

亜実の私服姿も見れたことだしな。

だけど、俺の本當の目的ここからだ。

「このあとどうする?」

「そうだな……」

この先を考えてないふりをしているが、めちゃくちゃ考えていた。

本當は、ネックレスかブレスレットを買おうと思っていたのだが、ここに來て付き合うことになってしまったから、何を買うのがいいだろうか。

う〜ん全然分からん。

まずの子と付き合ったことなんてないから、プレゼントなんてもってのほかだ。

どうすれば………

こういうときは聞くのが一番!

「なあ亜実、お前にアクセサリーとか買いたいんだけど、何かしいのあるか?」

ってなんで本人に聞いてんだ俺はぁぁぁぁ〜〜〜!

ばっかじゃねーの!こういうのは何も言わないでサプライズで渡すのが良いんじゃないの?!

早速その計畫は失敗に終わっちゃったよ?!

はぁ〜……こういうのに慣れてないせいだよな。

もっとちゃんと知らばておけば……いや、でも付き合うなんて想定外だったししょうがないかも………いやいや、言い訳はいくらでもできる。とにかく、俺は失敗したってことだ。もうこうなったら、思ってること全部言っちまおう。

「実はな、今日來た目的って、お前へのプレゼントを買うためだったんだ。亜実さ、ネックレスそれしか持ってないっぽいし……いや、別にお前の気持ちに何か言いたいわけじゃないし、ご両親との大切なものだってことは分かってるんだけど……俺は、もっと亜実に可くなってほしいから……いや、もう今の時點で天使の領域なんだけど……えっとー……その……」

ダメだ、考えがまとまらない。また失敗してしまった。これはさすがに引かれたかもな。そう思って亜実の方を見る。

「……なんでそんな恥ずかしいこと……ここで言うかな……」

デレてた。俺から見ても分かるくらい顔が真っ赤だし、耳まで赤い。右手は左肘を摑んでいて、目線は斜め下を向いている。口は口角が上がりそうなのを耐えようとしているのか、変な形になっている。

なんだこのかわいい生。おもわず抱きしめたくなっちゃったよ。あ、いかんいかん。

これは……功……でいいのか?まあ照れてるわけだからなくとも嫌がってはいない………よな?

まあ何にせよ、好ではあるな。

なら次は……………どうするのが正解なんだ?

だけど、好でも何でもなかった。

亜実は顔から熱をスッと引き、真剣な面持ちになった。

「ありがとう……海七渡。親戚以外の人であの話を知ってるのは海七渡だけだし、それを知ったうえで一緒にいてくれるのも嬉しい。だけど、私の中ではケリはつけてるから心配しないでいいよ。でもアクセサリーか〜、別に気にしなくていいよ?それならまた料理作ってしいかな!私、海七渡の料理大好きだから!」

何か、思っていたのと違う答えが返ってきたな。

これは……失敗……だよな。なんか上手く躱かわされたみたいだし。亜実は非の打ち所の無い完璧な人間だと思っていたけど、こいつにも何か抱えているものはあるんだ。

馬鹿か俺は。あいつに気を遣わせて……無理させて……照れてたからって調子に乗って……。何してんだよ俺。亜実にとって両親は何よりも大切なものなのに。俺の気持ちを優先するようなことを言って……。

亜実は、軽蔑しただろうか。いや、されて當然なことをした。事を知っていないならまだしも、知っていてこんな無配慮なことをしてしまった。

でも亜実は直接の接を避けて話題を転換してくれた。こいつなりの優しさなんだと思う。

なら今はその優しさに素直に甘えるのが最善だ。

「……そっか、ならまた今度な!」

「うん!」

その時の笑顔は、告白の話のときの笑顔を見た後だったからだろうか、はたまた俺が原因なのか………

作りのような、表面的な笑顔に見えてしまった。

翌週の月曜日、放課後。

俺は図書室の機に突っ伏してだらーっとしていた。

まるでスライムだな。転生しなくても慣れちゃったりして。

すると、向かいで數學の問題集を解いてる絢幸あやさ先輩、通稱あーちゃん先輩が心配そうな顔で聞いてきた。

「坂木さんと何かあったんですか?」

「さすが絢幸先輩〜俺のことは何でもお見通しですね〜」

実は先週、付き合ったことは報告してある。やはり亜実を校で知らない人はいないらしく、絢幸先輩でも知っていた。

だから心底驚いていた。『あんな方とお付き合いをしていたなんて』って言われちゃったしね。実際、俺と亜実じゃ釣り合いとれてないっていうか、彼氏らしいことできる自信なんて全くないっていうか。

まあとりあえず、自信がないわけですよ。あと、この前の失言も加味すると、もうグダるしかないんじゃ〜〜〜。

「他にあると思えません。だって海七渡くん、友達ないじゃない……」

「先輩に言われたくはないです〜」

「あと、いい加減そのだらーってじのやめてください。こっちまでだらけてきちゃうので」

「それは無理ですよ〜。これが俺のステータスなんですから〜」

「はぁ……。ほんとに、どうしようもない後輩ですね。何があったのか話してください。そしたらしは気が晴れるかもしれません」

「まあ……そうですね……」

「き、急に元に戻りますね……」

俺は先週の亜実とのトラブルについて話した。

勿論、亜実の両親のことは話していない。伝わるように上手い合に言葉は濁した。

先輩はし考えて、さも當然のように言った。

「本人に聞けばいいじゃないですか?」

「それが出來たらこうなってませんって」

この人、結構馬鹿だ……。

「ん〜?私にはよく分かりません。どう思っているか気になるのなら聞けばいいじゃないですか。行を起こさないと、狀況は悪化していくかもしれませんよ?」

「確かにそうなんですけど………なんかイマイチ聞きづらいっつーか、俺のせいでこうなったから俺が変えなきゃいけないのは分かってるんですけどね。なんか行き違いがあるというか」

「聞かないから行き違いが生まれるんですよ。いいですか、海七渡くん。あなたの今日の任務ミッションは、坂木さんにどう思ってるか聞いて答えをもらってくる、いいですか?」

「は、はあ……」

「返事はイェス!マム!です!!」

「は、イ、イェス!マ厶……」

「聲が小さい!聞こえませんよ!!」

「イ、イェス!マム!!」

「よろしい!」

この人、こんなキャラだったか?どう考えても崩壊しとるだろうが。なんか鬼軍曹みたいになってるし。この人、興すると周りが見えなくなっちゃうんだよな〜。

忘れてるかもしれないけど、ここ……図書室だからね?

俺は絢幸先輩に言われた通りに、亜実に直接聞くことにした。正門の前で、亜実の部活が終わるのを待つ。あ~張する。なんて聞けばいいんだろうか。『怒ってる?』かな。いや、違うか。別に怒ってないし、怒ってるって聞かれるのはあまり好きじゃないよね、皆。その言葉のせいで我慢してた怒りが発することってよくあるんだよな〜。しみじみ。

てことでこれは卻下。

それなら、『昨日はごめん』とかは?これならなんとか話題を掘り下げられるし、亜実の機嫌を直すことができるかもしれない。

いや待てよ。亜実って機嫌悪いのか?朝、一緒に來たときはいつも通りだったし、別に不機嫌ってわけじゃないのかもしれん。え?なんで朝聞かなかったって?スライムになってたからさ!外の暑さもあいまってドロッドロだったぜ!いや、自慢するようにうことじゃないな、うん。

まあとりあえず、プランBの『昨日はごめん』で行くか。大丈夫、落ち著いてきた。俺ならできる絶対できる諦めるなそこでもっとポジティブに積極的に熱くなれよ!と俺のリトル○造も応援してくれてるしな。やってやる。

しして、亜実が來た。

夏だから長袖のシャツを捲まくっていて、第二ボタンが空いてるため、元が見えそうで見えないギリギリを攻めている。

「ごめん!お待たせ」

近くに來ると気づく制汗剤の香り。し急いできたのか、顔や首元にはし汗をかいている。頬も火照っているし、可さの権化と言ってもいい。

「えっと……」

「ん?どうしたの?ボーッとしちゃって。もしかして、見惚れてた?」

「い、いや……その………そうだよ、悪いか……」

「ぜーんぜん!寧ろかわいいかも」

「なんか素直に喜べないな……」

男なのにかわいいって言われるのは、ちょっと複雑な気分になるんだよな。言われたことある人なら分かるよね。え?もしかして俺だけ?

「まあいいじゃん。それと、何か言いたいことがあるんじゃない?」

「は?なんでそれを……」

「なんとなくだよ。こう見えても、あなたの彼氏なんだから」

そう言って亜実はを張ってへへん、とポーズをとった。そんなにを張ると、強調されて目がそこから離れなくなっちゃうって。どこがとは言わない。

ただ、人前でそうやってを張るのはやめてほしいものだ。その2つの兇悪な何かが暴走したら大変だからな。まあこいつもその辺は分かってるか。こいつは八方人の完璧なの子パーフェクトヒロインだしな。いや、こいつも完璧ではないか。偶に失敗するし、ボロを出すこともある。亜実もの子だ。

彼氏の俺が亜実をの子扱いしないでどうする。こいつのことを一番分かってやらなきゃいけないのは俺なんだ。にしても、なんで表だけで考えてることがバレちゃうんだろうか。こいつの観察眼恐るべし。新たに、壁に耳あり障子に目あり背後に亜実あり、ということわざを提唱したいと思います。

「とりあえず、歩かないか」

「うん。そうだね」

俺は、帰り道を歩きながら話をしようと考えた。

さすがにここじゃ話しづらいしな。

し歩いて、俺は話を切り出した。

「その、昨日は悪かった。お前のこと、完璧な人間って思い込んでた。その……」

あ~思ってることが口に出ねぇ〜!言いたいことがあるのに、の手前で止まってもどかしい。なんで戸ってんだよ俺は。普通に聞けばいいんだよ、普通に。でも結局、俺のは拒否反応をし続けて、言葉が続くことはなかった。

そのかわりに………

「あー、昨日のことね!別に全然気にしてないし、寧ろありがとうだよ!」

「え?」

どういうこと?亜実は、俺のことを避けてたんじゃないのか?

「い、いや、だって、骨に避けたじゃねーか。じゃあ、あれはどういうことだ?」

「私、アクセサリーに関しては全く分からなくてさ、アクセサリー買うなんてお金の無駄、って考える人なの」

「そうなのか……」

そうなのかよ。あんなにファッションセンスがあって、モデルの仕事とかもしてたのにか?隨分現実に欠ける話だけど、噓をついてるようには見えない。

でも、俺を避けてたわけじゃないと分かって良かった。これで問題は解決したな。

そんな安心から、心の底から聲がれる。

「良かった〜。亜実に避けられちまうかもって思ったわ。ほんとに安心した」

「そんなわけないって。確かに私は完璧じゃないけど、親のことはもう大丈夫だよ。もう何年も前のことだしさ!今は海七渡がいるし!」

そう言って俺の左腕にしがみついてきた。やめてくれ〜!!なんか當たってるから!ムニってなってるから!!さっきよりも匂いが近い。なんか制汗剤とは違う匂いもするし……って匂い嗅ぎすぎだろ!完全に変態になっちまうって。とりあえずこのままじゃ々とヤバいので、離そうとする。

「ち、近いって。その……々當たってるし……」

「ふふっ……変態」

いやいや、おかしいですよね。意図的に當ててるあなたの方がよっぽど変態ですよね?

「ていうか、亜実が俺の彼って信じられないな。自分にそんな魅力があるとは思えないんだけど」

「それ今言うかな〜。なに?私とは釣り合わないとか考えてるの?そんなこと承知だったんじゃないの?そんなこと関係ないぐらい、私のことを振り向かせたいって思ってたんじゃないの?」

確かにそうだ。俺はあの日、亜実に助けられて、こいつを好きになった。絶対に他の男に渡したくないって思った。あいつを振り向かせたい、好きって言わせたいって。

けど実際やってみたら、あいつの凄さを痛するばかりで、益々付き合える気はしなくなっていった。でもこいつはそんな俺に惹かれたのだ。俺には疑問だ。今まで一緒にいて、どこに惹かれたんだ?俺には心當たりが全く無い。それでも、亜実は俺を好きになってくれた。分からない。確かに長はまあまあ高いし、運や勉強はそこそこできるけど、顔は普通だし、何か特技があるわけでもない。こんな俺のどこが良いんだろうか。

「そうなんだけさ……。なんか一緒にいても、俺ができることって無いし、亜実の方が々できちゃうからかっこいいとこどころか、悪いとこばっか見せちまってるし。亜実は本當に俺の彼で良いのかなって考えちまって……。」

俺は、目を瞑って考える。俺の中でのイメージは、俺が亜実のそばにいたくて、亜実はそれをしょうがなくれてるようなじだ。

実際、亜実から何かしたいっていうのはあまりないし、借りを作ってばかりだし。俺が何か言って照れることはあっても、亜実が褒めることはそんなにない。上辺だけの言葉では言われたことはあるけど、本心で言われたことはないと思う。あくまで、俺の解釈だけど。正直、今も、あいつは俺をからかってるだけかもしれないと思ってしまっている。亜実の気持ちが本當なら、この考えは最低に値するが、俺はその可能じ得ない。

そうやって気持ちがマイナスのどん底に落ちかけたとき……

「んっ!」

に何からかいが……。

驚いて目を開ける。

そこには亜実がいた。文字通り目の前に。

の正は、亜実のだった。

俺はパニック狀態だ。

「お、おい!何してんだよ!」

「何って、キスだけど?」

「そういうことを聞いてんじゃねーんだよ!」

「これが私の気持ち。私がからかって海七渡の気持ちを弄もてあそんでるって思ってるのかもしれないけど、ファーストキスを好きじゃない人に捧げるなんて、なかなかできないでしょ?」

「ファッ、ファーストキス?!」

「そう。私の初めては、海七渡にあげたいって思ってたよ。どう?これでもまだ疑う?」

俺はまた………助けられてしまった。

全てを捨ててしまおうとしたときは、亜実に助けられ、部活を辭める勇気がないとき、絢幸先輩に鼓舞されて背中を押してもらって………、そして今も、亜実が気持ちを伝えてくれた。

気持ちはだから、目に見えないし、じることはできない。そう思うのが當たり前だ。

でも俺は、亜実の気持ちをじた。

その気持ちは………らかくて。

優しくて。

大人で。

的だった。

「ごめん、ありがとな。お前の気持ち……伝わった」

「そっか。ならよかった。でも!」

そう言って、亜実は俺に向かって人差し指を立てて、

「これからはそういう発言は控えること!それと、もうし自分に自を持ちなさいよ!なんかさっきの海七渡、弱々しかったよ!」

「く………これからは気をつけます……」

答えたら、亜実はまた腰に手を當ててを張り……

「よろしい!」

だからさー、そういうことを平気でやられると困るんだよね。もう兵じゃねーか。別に韻踏んでるわけじゃないよ?

「あ、そういえばさ……」

「ん?なんだ?」

「海七渡は………その…………初めてだった?」

「はっ!………」

顔が熱くなっていくのをじる。亜実の方を見ると、亜実も顔が真っ赤だった。なんで言った本人が恥ずかしがってんだよ。余計恥ずかしいわ。

さっきの景が蘇る。

目の前に亜実がいて、2人のが重なる瞬間。

亜実は目を瞑っていたけど、俺は目を開けていたせいで、至近距離で亜実の顔をくらった。

その時の亜実は、可いというより"、綺麗"だった。

同い年とは思えない大人の気というか、そんなものがじられた。

「は、初めてに決まってるだろ………あんなこと」

「そっか〜、海七渡も初めてか〜」

亜実はそう言いながら、腕を後ろに組みながら俺の前に來ると、下から覗くようにして言った。

「海七渡の初めて、貰っちゃったね」

その時の俺は、亜実に魔法でもかけられたかのようにが固まってけなくなってしまった。

まただ。さっきと同じ覚。

あの、大人の雰囲気を漂わせている亜実だ。

目を細めて右手の人差し指を自分のに當て、ニヤリと笑う。

俺は、目が離せずにいた。亜実から視線が外せない。気づけば、亜実の艷やかなに目を奪われていた。落ち著け、理を保つんだ!このままだと飲み込まれちまう!

「何やってるんですか、こんなところで」

「うおっ!」

咄嗟に後ろから聞き覚えのある聲が聴こえて、を反転させた。

「あーちゃん先輩!」

「そのあだ名で呼ばないでと言ったはずですが?」

「あのー、この人が、この前話してた人?」

亜実が狀況を飲み込めず混してるようなので、俺が説明してやった。

「あー!そうだったんだ!初めまして、當あたり先輩!私、坂木 亜実っていいます!」

「勿論知ってますよ。あと名前でいいですよ」

「分かりました!じゃあ絢「あーちゃん先輩って呼んでやれ」

「その人、そうやって呼ばれたいんだってさ」

「な、何を言ってるんですか!私はそんな事、一言も言ってませんよ!!」

「あれー?そうでしたっけ?」

「と、とぼけるな!荒井くん、あんまり調子に乗っていると、痛い目に遭いますよ……」

ヤ、ヤバい。先輩めっちゃキレてる……。効果音がゴゴゴゴゴゴコってついてるよ!なんか後ろにスタ○ドみたいなのいるし!余裕で時とか止められそうなんですけど?!こうなったら亜実に助けを………

アイコンタクトで『助けて』と送るが、亜実は苦笑いを浮かべてた。

忍び寄る黒い影。そこにあるのは、死のみ……。

ギヤァァァァァァァァァァァ!!

めちゃくちゃ痛いけど、俺は正式に、亜実と付き合うことになった………のかな?まあそういうことにしておこう!

その………キスとかもしたしな。

とりあえず、俺の目的は達されたわけだ。

高校でショートヘアのと付き合って青春を送る。

高校に學して1年と約4ヶ月。遂にし遂げた。

でも、これで終わりじゃないんだよな。まだ青春を送っているわけじゃないし。いや、もう十分青春は送れてるんだけど……まあ細かいことは気にしない!

とにかく!亜実の計畫通り、俺は學園のスーパーアイドル、坂木 亜実さかのき あみと付き合うことができた。これから歩く通學路は、一人じゃない。実際、一緒に歩いてたけど、本當に2人に歩いていく。

絶対に寂しい思いはさせない。

絶対に幸せにしてやる。

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