《俺はショートヘア王が大嫌い》Episode12 再會
次の日、火曜日。
朝のHRで擔任の南が、7月中旬の球技大會について説明をしていた。
配られたプリントには、競技のルールなどが々書いてある。
ふむふむ。なるほどな。
今年のやり方は、去年のやり方と違うらしい。
去年は、男子、子で分かれてそれぞれ數種目をこなすという方式だった。
例えば、男子はサッカーとバレーボールとバスケットボールで、子が………みたいなじだった。
だが今年は、男子と子それぞれ2種目ずつ競技をこなして、男混合の種目を一つこなす、という方式に変わったらしい。
何の種目をやるのかは今日の6時限目で決めるらしい。競技ルールの冊子に書かれた競技の中から二種目選ぶ。そして全クラスの投票を生徒會が集計して決定するということだ。正直、去年何やったか覚えてないんだよな〜。
クラスは何の競技にするかで話題が持ちきりだ。
『え〜なににする〜?』『バレーならできそう!去年やってたから』
『私バスケ苦手でさ〜』『じゃあ私もバスケ以外にしようかな〜』『私球技全般が無理〜』
會話を聞く(盜み聞き)限り、子はそこまで乗り気じゃないっぽいな。乗り気じゃないというか、苦手な人が多そうだ。正直、子の誰が何部でとか全く知らないし、まず子と話さないからね。
対して、男子はというと………
『じゃあ一つ目の希はサッカーでいいな!』 『『『おう!』』』
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何これ?俺手挙げてないし、ボーッとしてる間に競技決まってんだけど。子に対して、男子やる気ありすぎだろ。まあ、無いよりはいいけどさ。
男子は岡田が中心に仕切ってるらしいな。
あ、ちなみに岡田はライブでドラムやってたやつだ。たしかバスケ部だったっけか。バスケ部ならバスケがやりたいだろうに、嫌な顔一つしないで仕切ってる。あいつ良い奴だな。結局男子は、朝のHRで
二つ目の希も決めてしまった。ちなみに二つ目の希はバスケだ。これが本當にやる競技になるかどうかはわからないが、サッカーはほぼ確定と見ていい。なんかすごい人気だし。男子ってサッカー好きだもんね。他人事みたいに言ってるけど、俺も元サッカー部だし。
そして6時限目。
子の競技は、一つ目の希がバレーボール、二つ目の希がサッカーになった。
え、ちょっと待て。子でサッカーって凄いな。
なんでも、海 友梨乃がサッカーをやってたらしく、自慢のカーストパワーで押し切ったらしい。てっきり文化祭の時みたいにやる気を出さないかと思ったが、そうでもないらしい。
まあバレーはね。うちには化けがいるから安心なんだけど。
その時、攜帯にLINEのメッセージが。確認すると…
『誰が化けだって?』
だからそうやって自然と俺の心を読むのはやめてください。思わず背中がゾッとしたわ。
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話を戻そう。とりあえず、男とも競技希は決定したから、次は男混合の競技を決めなきゃな。
教壇の上には、學級委員の二人が立って、一人が冊子の競技名を黒板に書いていく。もう一人が、多數決で決めま〜すみたいなことを言ってる。
ちなみに競技の一覧はこんなじだ。
•ドッチボール
•バドミントン
•テニス
冊子を見るに、バドミントンとテニスは、男混合というより男選抜ってじだな。
投票の結果、ドッチボールになった。
まあ無難といえば無難だな。
皆出れるし、苦手な人も參加できそうだし。
うちのクラスなら岡田が強いだろうな。背も高いし。
そんなこんなで、クラス全が球技大會ムードになり始めた。
放課後。
俺はいつも通り、図書室にいる。もちろんあーちゃん先輩もいる。
「先輩は、球技大會楽しみですか?」
「いいえ、全く」
「即答ですね……」
まあ、そんなじはしてたけど……。そんなにも嫌いかね、球技大會。
たしかに先輩はあまり運は得意ではなさそうだ。
「だって、3年生は出ませんからね。まあ、出ることになっていたとしても楽しみじゃないです」
なるほど。3年生は出ないのか。普通に考えればわかるか。3年生にとっての夏は、"追い込みの夏"なんて言われるくらい験へのアクセルを全開にしていく時期だしな。あーちゃん先輩もそうなのかもな。
因ちなみに、うちの高校は結構頭が良い。
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だから殆どの生徒は進學を考える。
俺も一応進學を考えているが、もし何かあったら父さんの會社にそのまま就職しようと思っている。
高卒でもやっていけるか不安はあるが、たまに手伝ったりしてたし、多分大丈夫だろ。
でもこの話は萬が一だ。俺が萬が一、験に失敗したらの話だ。
今のところは、普通に験をしようと思ってる。
だって、大學生活送ってみたいし。
もし就職なんてしたら、亜実と會う時間も減ることになるしな。それは死活問題だ 。
「先輩はどこの大學をけるんですか?」
「えーっと……、一応、第一志はF大です」
「F大ですか?俺もそこ志なんですよ」
まさか先輩もF大志とは。
F大は、神奈川で一二を爭う學力レベルの國立大學だ。俺もそこを目指すつもりだ。決め手は、設備が十分に整っているのと、授業のカリキュラムがオリジナルで気にったから、という簡単な理由だ。
まあ進路なんてそんなもんだろ。大事なのは自の気持ちだ。とか言って大失敗を犯すのはまた別の話……、みたいになったら嫌だから皆はちゃんと進路を決めようね!
「え?そうだったんですか?!」
「でも僕は文系ですよ。先輩、多分理系ですよね?」
「そうだけど、なんで分かったんですか?」
「最近解いてる問題集が理系向けだったので」
以前の先輩は、俺の貸したニーチェについての書を読んでいたが、最近はずっと問題集を説いている。
そういう変化には嫌でも目に止まるからな。すぐに気づいたってだけだ。
「あと先輩、ここの問題違いますよ。公式を使う前にこの値をΧに代しないと解が出ません」
「あ、ほんとだ!ありがとうございます…。私、験の年なのに……。荒井くんに教えてもらうことになるなんて……。」
先輩はトホホ……みたいな擬音語が似合う雰囲気で問題を解き、今は次の問題を解き始めている。
めちゃくちゃ集中してるな。
邪魔したら悪いと思い、鞄からラノベを取り出して読み始める。
思えば、この関係が始まって、一ヶ月以上経った。
俺が部活を辭める辭めない問答を一人でしているあの日から一ヶ月。
振り返ってみれば、容の濃い一ヶ月だな。
先輩と出會い、俺が部活を辭め、亜実に料理を振る舞って、父さんが帰ってきて、亜実とやっと仲になって……。
一ヶ月でこれだけのことがあった。四月から振り返ればもっとたくさんのことがあったんだ。
亜実と出會って彼氏のふりをさせられ、バレーボール部の試合を見に行ったり、文化祭でバンドをやったり……。
今までにない程大変で、不思議で、楽しい三ヶ月だった。
もし、俺が、亜実が、二年八組じゃなかったら、出會うことはなかっただろう。
例えば、俺が文化祭実行委員に立候補しなければどうなっていただろうか。
亜実は、俺じゃない他の誰かに彼氏のフリをさせて、一緒に文化祭でバンドを組んで、最後は仲になったのだろうか。
こんな妄想に意味はないけれど。
考えてしまう。そんなこと、考えてもわかるわけないのに……。
誰かが言っていた……
【例えば、例えばの話である。もし、ゲームのように一つだけ前のセーブステージに戻って選択肢を選び直せたとしたら、人生は変わるだろうか。答えは否である。】
俺はそれを初めて聞いたとき、そうなのかもしれないと納得した。
人間は失敗したとき、『もっとこうしておけば』『こっちじゃなくてあっちを選んでおけば』と後悔する。けれど、違う選択肢を選んでも、また失敗するかもしれない。それは分からない。そりゃそうだ。現実になってないんだから。結局のところ後悔っていうのは、失敗した原因を、選択のミスだと決めつける楽な逃げ道なのかもしれない。たとえ失敗の原因が他にあったとしても、後悔の先には選択を誤ったという結末しかない。
そう考えたら、一つ前のセーブデータに戻っても人生は変わらないのかもしれない。
だからたとえ、俺と亜実が同じクラスじゃなくとも、どこかで出會い、今の関係を築いているかもしれない。
こんな考えた方、他の人はしないだろうな。
だって、人間が後悔するのは逃げているからだ、なんて言ってるんだから。人間が當たり前にすることを真っ向から否定するなんて、普通はしない。
俺って捻くれてるな〜。しみじみ。
本を開いていたはずなのに、気付いたら図書室の天井をじっと見ていた 。
先輩は相も変わらず問題集とにらめっこ。
あ~、暇だ。読書にも集中できないし。
悩んだ末、音楽を聴くことにして、イヤホンを耳につけた。
「荒井くん、荒井くん、起きてください」
自分の名前が呼ばれて、目を覚ます。あれ、いつの間にか寢てしまっていたらしい。
「すいません、寢ちゃってましたか」
「寢不足ですか?しっかり寢ないとに悪いよ」
「いや、別にそういうわけじゃないんですけどね……」
一ヶ月しか経ってないのにというべきか、一ヶ月も経ったのにというべきか、絢幸先輩は會話でたまに標準語をはさむようになってきた。
やっぱり年上の人に敬語を使われるのはなんか違和をじるしな。
ちらりと時計を見たら、もう図書室が閉まる時間ギリギリだ。
「もうこんな時間…。すいません先輩、時間取らせちゃって」
「別にいいよ。荒井くんが靜かなおかげで集中できたから」
「あれ?俺別に褒められてないような……」
まあいい。とりあえず亜実を待たせるのは嫌なので、早足で図書室をあとにする。
「あ、海七渡!何してたの?いつもは私より早いのに」
オー、マイ、グッネス!亜実を待たせるなんて、俺としたことが。とりあえず理由を報告。
「悪い悪い、図書室で居眠りしちゃって」
「なに、寢不足?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど、なんか考え事して音楽聴いてたら寢ちゃってて」
「考え事?」
「えーっとな……」
これは、言うべきなのか。歩きながら話そうと思い、俺は歩き出した。亜実もそれについてくる。
校門からだいぶ離れてから、俺は話を始めた。
「さっきの話なんだけどさ」
「うん?」
「亜実は、もし俺と出會ってなかったら、他の人に彼氏のふりをさせたのかなってさ」
「……なるほどね〜。」
亜実は頷きながらそう言った。そして、し考えて俺の方を向いて言い放った。
「……それは絶対にないよ」
「何でだ?あのときのお前、誰でもいいみたいな言い方だったけど」
「はぁ……」
亜実は大きくため息を吐いた。え?どういうこと?俺何か間違ったこと聞いたか?
「ほんとに覚えてないんだ。じゃあ聞くけど、そのピアス、いつから付けてる?似たようなの昔から付けてない?」
「え?え、えっと……。保育園生ぐらいの時から似たようなのは付けてたな。その、父さんの仕事の関係であちこち移してたからな。俺はアメリカで産まれて、それで日本に來たんだ」
アメリカだと子供のうちにピアスホールを開けるのはそんなに珍しいことじゃないからな。
要するに俺は帰國子ってことにならなくもないな、うん。
そう言うと、亜実は『やっぱりね』と呟いて……。
「私、あなたと同じ保育園にいたんだよ。いつも一人でさ、そしたらもう一人、一人で本を読んでる男の子がいたんだ。それが海七渡だった。いやー、名前聞いてなかったから二度と會えないと思ってたけど、まさか同じ高校で同じクラスとはね。その鋭い目つきとピアスですぐ気付いたよ。あ、あの人だ、ってね。どう?これでも思い出せない?」
「……うそだろ………」
思い出した……。俺が一人で本を読んでるときに、しつこく話しかけてきたあのめんどくさいの子。
かと思ったら今度は俺を突き放して孤獨になったの子。長くて綺麗な黒髪の子だった。
別れるときは、"強くなりたい"と言ってたっけ。
思い出そうとしてみると、ポロポロ思い出せる。
実際、俺が保育園にいた頃は、あの子ぐらいとしか話していなかった。
先生に『みんなと一緒に遊びましょ』と言われても、嫌だと言ってずっと本を読んでいた。
俺は人付き合いが苦手だったから、すぐ他の子と喧嘩して、仲間外れになっていた。
知らないうちに、俺は獨りぼっちだった。
でも、本はいつでも俺の近くにいてくれる。喧嘩なんてしないし、いつも同じ態度で俺と遊んでくれるから。
それが、一日だけ変わった。
ある一人のの子が、聲をかけてきた。
俺は心驚いた。保育園の中じゃ、自分は仲間外れにされて浮いてるやつなのに。
その子はそんなこと気にせず、話しかけてきた。
嬉しかった。
友達になれるかもしれないと思った。
ただ問題があった。
他の子とは、喧嘩はたくさんしてきたけど、面と向かって話すことなんて殆ど無かったせいで。
自然と口調がぶっきらぼうになってしまう。
でもこの子はそんなこと気にしない。
名前を聞いてきた。本當は言いたい。
荒井 海七渡みなとっていうんだ、って……。
けど口から出たのは真反対の言葉で、自分のバカさ加減がイヤになる。
それでもその子は、楽しそうに話してた。
こういうのが、友達なのかな。
これからも、こうやって話したい………話しかけられたい、そう思ってた。
でも、この関係が続くことは無かった。
次の日、昨日とは全く違う態度で言い放たれた言葉は、俺の心にグサリと刺さった。
なんでだよ。昨日はあんなに楽しそうにしてたのに。
もしかして、俺がそっけない態度だったから嫌になったとか……。絶対そうだ。
だとしたら、俺が全部悪い。
謝ろう。謝って、もう一回一緒に話したい。
そう伝えれば良かったのに。
そこでも、俺は自分のバカさ加減を改めて悔やんだ。
結局、卒園式まで話すことはなかったんだよな。
卒園式の日、聲をかけられた。
後ろを振り返ると、知らない子だった。
「久しぶりだね」
久しぶり。そう言われて記憶に殘っている子はあの子だけだ。長い綺麗な黒髪が特徴のあの子だけ。
その子の顔をよく見て、気付いた。
ほんとに久しぶりだ。
もう二度と、話せないと思ってた。
この子ともう一度話せる。それだけで、俺は嬉しかった。
「……話しかけないんじゃなかったのか」
うまく気持ちが出せない。自分が伝えたいのはそんな言葉じゃないのに。まるで自分が自分じゃないみたいだ。
でもこの子は、なぜか謝ってきた。
違う、謝らなきゃいけないのは俺なのに……。
ちゃんと自分の思ってることを伝えようと、言葉を選んで、頭の中に文章を創って、よし。
ちゃんと出來た。これで仲直りできる。
頭の中で創った文章を聲に出そうとしたとき……
「もう小學生だね」
急に言われて、頭が真っ白になった。どうしよう、とりあえず返事をしなきゃ。
なんとか、「そうだな」と返事をして、もう一度さっきの文章を言おうとするけど………
「私、強くなりたいんだ。そのためには何でもするって決めたの」
またも言葉を邪魔されて、しかも"強くなりたい"だなんて言われて、意味がわからなかった。
だからそっけない返事しかできなかった。
そしたらあの子はまたそれを楽しそうに怒ってくれて。
だから、俺も「頑張れば」って言えた。
あの子は笑って、「バイバイ」と言いながら手を振る。
俺はその手にも言葉にも、何も返せなかった。
俺はそのまま小學校へ學して、自分の思ってることを言えない、という弱點を克服して、中學も卒業した。
それで高校に上がって。
亜実と出會って。
でも………初めてじゃなかったんだ。
「亜実……その………」
おかしいな、弱點は小學校、中學校で克服したはずなのに……。うまく言葉が出なくて。
言いたいことはわかってる。言わなきゃいけないこともわかってる。だけどが言うことを聞かない。
【やるときは、命張れ!】
頭の中でこの言葉が鳴り響いた。
そうだよな。命張らなきゃな。言うんだよ。
俺は、から、心から、言いたい言葉を吐き出した。
「久しぶりだな」
言えた。あのとき言えなかった言葉とは違うけど、自分の言いたいことを、俺は言えた。
が軽くなるのをじる。
あの時の蟠わだかまりがなくなったからかな。
「ほんと久しぶりだね。海七渡、凄い背びてるし、顔も変わってるけど、その目つきは変わってないよね」
「大きなお世話だ。この目は俺のステータスなんだよ。お前こそ、髪切ったんだな。ロングも似合ってたしどっちも似合うとかすげーなおい」
「それ褒めちゃってるし……」
目が合った。
自然と、笑みが溢れる。
なんでだろう、すごい楽しい。
今までだってこんな會話はしてたはずなのに。
でもこの會話、出會ってばかりのときはよくしてたけど、最近はしてなかった。
なんか、懐かしいな。
この懐かしさは、4月のときか、それとも……もっと昔のときか。
いずれにせよ、"俺達"はやっと出會えたんだ。
俺は、あのとき言うべきだった言葉を言う。
「荒井 海七渡です。よろしく」
「坂木 亜実です。こちらこそ、よろしくね」
あの日から、13年。
俺達は、"再會"した。
【完結&感謝】親に夜逃げされた美少女姉妹を助けたら、やたらグイグイくる
※完結済み(2022/05/22) ボロアパートに住むしがない28歳のサラリーマン、尼子陽介。ある日、隣に住む姉妹が借金取りに詰め寄られているところを目撃してしまう。 姉妹の両親は、夜逃げを行い、二人をおいてどこか遠くに行ってしまったようだ。 自分に関係のないことと思っていたが、あまりにも不憫な様子で見てられずに助けてしまい、姉妹に死ぬほど感謝されることとなる。 そこから、尼子陽介の人生は大きく変わることになるのだった――。
8 105じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
【2022年6月1日 本作が角川スニーカー文庫様より冬頃発売決定です!!】 「オーリン・ジョナゴールド君。悪いんだけど、今日づけでギルドを辭めてほしいの」 「わ――わのどごばまねんだすか!?」 巨大冒険者ギルド『イーストウィンド』の新米お茶汲み冒険者レジーナ・マイルズは、先輩であった中堅魔導士オーリン・ジョナゴールドがクビを言い渡される現場に遭遇する。 原因はオーリンの酷い訛り――何年経っても取れない訛り言葉では他の冒険者と意思疎通が取れず、パーティを危険に曬しかねないとのギルドマスター判斷だった。追放されることとなったオーリンは絶望し、意気消沈してイーストウィンドを出ていく。だがこの突然の追放劇の裏には、美貌のギルドマスター・マティルダの、なにか深い目論見があるようだった。 その後、ギルマス直々にオーリンへの隨行を命じられたレジーナは、クズスキルと言われていた【通訳】のスキルで、王都で唯一オーリンと意思疎通のできる人間となる。追放されたことを恨みに思い、腐って捨て鉢になるオーリンを必死になだめて勵ましているうちに、レジーナたちは同じイーストウィンドに所屬する評判の悪いS級冒険者・ヴァロンに絡まれてしまう。 小競り合いから激昂したヴァロンがレジーナを毆りつけようとした、その瞬間。 「【拒絶(マネ)】――」 オーリンの魔法が発動し、S級冒険者であるヴァロンを圧倒し始める。それは凄まじい研鑽を積んだ大魔導士でなければ扱うことの出來ない絶技・無詠唱魔法だった。何が起こっているの? この人は一體――!? 驚いているレジーナの前で、オーリンの非常識的かつ超人的な魔法が次々と炸裂し始めて――。 「アオモリの星コさなる」と心に決めて仮想世界アオモリから都會に出てきた、ズーズー弁丸出しで何言ってるかわからない田舎者青年魔導士と、クズスキル【通訳】で彼のパートナー兼通訳を務める都會系新米回復術士の、ギルドを追い出されてから始まるノレソレ痛快なみちのく冒険ファンタジー。
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