《僕はまた、あの鈴の音を聞く》No.2 家族
茜が部屋から出て行った後、僕は部屋の窓を眺めた。
「もう冬か、やっぱ寒いな......」
窓越しに伝わる冷気が今日の気溫の低さをものがたっている。
思わず、もう一度布団に潛りかけたが、また茜に落とされることが目に見えているので、僕はぐっと我慢した。
そして、今日もあの人• • •がいないことを、殘念に思い、僕は朝食を食べにリビングへと向かった。
リビングに著くと、父さんが新聞を読んでいた。
基本無口な僕の父。そんな父は僕のことをどう思っているのか、僕はまだ分からない。
「あっ、やっと來た。もう、朝食冷めちゃってるよ」
僕がようやく、食べに來たことに気づいた茜が、腰に手を當て不満気にそう言った。
「大丈夫だ。冷めてても、上手いものは上手い」
「そ、そう.......は、早く食べてね」
なんだか茜の頬が赤くなったような気がするが......?
今日は父さんが朝食擔當だった筈......。
そんな事を気にしながら、僕は朝食を手短に済ませた。
「それじゃ、行ってきます」
「ん?しん、何処に行くの?もしかして、部活?」
「妹よ、僕は帰宅部だ。家に帰ることはあっても、出かけることはない」
「分かってるよ。ほんの冗談だって。でも、しんが學校以外で、出かけるなんてめづらしいね。ほら、今日は日曜だし」
「ちょっと、人に會ってくるだけだ」
「それって、の人?」
茜が不思議そうに尋ねてくる。
「そうだけど、よく分かったな」
特に隠すような事ではないので、僕は、普通に答えた。
「えっ!?お、の人?じょ、冗談だよね?」
「本當だ」
「えええええええ!? お、お父さん、しんが、の人と!」
口を大きく開き、驚きの聲を上げる茜。
それに対し、父さんは相変わらずのだんまりだった。
「それじゃあ、行ってきます」
茜に追求されると面倒なので、僕が、素早く出て行こうとすると、
「信義しんぎ」
と聲が聞こえた。聲の主は、僕と茜の父である。
そして父さんは、たった一言だけ、僕に言った。
「気、つけろよ......」
僕は、その一言に返答することが、出來なかった。
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