《僕はまた、あの鈴の音を聞く》No.23 May l cry ?
「で、朱莉。決まったところ悪いがいくつか聞いてもいいか?」
今日から居候する予定の......もとい従兄弟の木霊朱莉は、首を傾げた。 
「はい、何でしょう?」
「いつまで居候する予定なんだ? というか、何で居候?」
僕は、初めから抱えていた疑問を、ようやく口にした。
「実は僕、今日からそちらの學校に転校したのですが......冬夜さんから、聞いていませんでしたか?」
(......は?)
「何ですか、そのポカンとした表は」
朱莉が呆れたような仕草でそういった。
「ちょっと待ってくれ。転校?」
高校生にしては......背が
「はい、僕こう見えても高校生です」
「.......(見えない!)」
それよりも、先程朱莉は神崎冬夜から聞いてないかって言ったのか?
「そういえば、今朝、僕は信義さんと冬夜さんを見かけましたよ。信義さんは気づいてなかったようですが......」
そして僕は、今から半日程前のことを思い出す。
ーあの時だ!
神崎が不自然に笑ってた時。
あの時、木霊朱莉がいることを僕が気づかなかったから笑ってたのか......
そして他にも、いくつか思い當たる節がある。
「神崎......あいつは明日埋める」
「しん、何言ってんの?」
「あっ、茜さん。部屋はどうしましょう?」
「しんの部屋ならスペースあるよ」
「は?」
何を言ってんだこの妹は。
「分かりました。取り敢えず今日はそこで寢ます」
「おい!ちょっと待て」
この後、30分にも渡る口論が繰り広げられ、結果、木霊朱莉は茜の部屋行きとなった。
 
電話の音が鳴り響く。
電話を取る。
「もしもし。あっ、どうしたの?」
「........................」
「うん、ちゃんと話したよ」
「........................」
「言ってた通りだったね。辛いけど......」
「........................」
「勿論、分かってるよ。だからこそ、」
続きの言葉を、躊躇ためらった。
自分の意思とは無関係に、何かに押し潰されそうになったからだ。
何か......それは分かっている。
だからこそ、この躊躇いを自は憎んだ。
「頑張るよ」
それがどう聞こえたのかは知らない。
そして先に電話を切ろうとすると、向こうが先に切った。
意外と気の利く人である。
「頑張るよ......」
自分でも驚くほど頼りない、震えた聲でそう呟いた。
それでも進まないわけにはいかなかった。
誰かが泣いている。
それが誰なのか、自分には分からない。
ー今日は泣いてんだよ。
誰かに向けてそう言った......。
そう決めた。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
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