《僕はまた、あの鈴の音を聞く》No.28 思い込みの思い込み

「信義さん、お待たせしました」

放課後、僕は教室で木霊朱莉を待つことにした。

穂波と、嬉野には悪いが。

「それで、何か話したいことってなんだ?」

「.......はい、まず始めに信義さん。この前デパートで僕が言ってたこと、覚えてますか?」

「デパート.......?」

「僕が昔の貴方と際をしていましたということです」

「たしか、半分噓だって言ってたやつか......」

「実を言うと、際をしてたと言うよりもそう思い込んでいました」

(思い込んでいた?)

それから朱莉は言葉を続けた。

「今からおよそ一年前のことです。僕がこの街に引っ越してきたというのは、昨日お話しましたね.......」

僕は確かに、茜からその話は聞いていた。

その際に聞いた話をすると

朱莉は、既に両親ともに事故で亡くなっており、僕の父が朱莉の生活費を負擔していたらしい。

そして、実を言うと一年前から既に居候の提案はあったらしいのだが、何故か朱莉はそれを頑なに斷り続けていたそうだ。

「そちらの家に居候させて頂くまでは、僕は別の高校で、なんとか生活を送っていたのですが.......」

「その際、僕は信義さんと初めて出會いました」

(.......?)

「ちょっと待ってくれ。その時?従兄弟なのにか?」

「はい、確かに僕は一年前信義さんと出會いました• • • • • • • • • • • • • • 。」

ということは、朱莉が知っている僕は記憶がなくなる半年前に知り合ったということなのか。

「それで、思い込んでいたというのは......一

「それは.......」

ーガラガラガラ

「わりぃ、信義。まずいことになった......」

突然、教室のドアが開き神崎冬夜が現れた。

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