《僕はまた、あの鈴の音を聞く》No.29 間違いvol.3

事の結末を先に言うと、僕は無事だった。

無事というのは、どこまでの定義なのかと聞かれたら、いささか分かりづらいものではあるが、この場合特に何もなかったというのが正しいかも知れない。

何もなかったーーそう、不自然なほど何もなかったのである。

穂波も嬉野も朱莉も、みんな笑顔で帰って行った。

これぞ、ハッピーエンド

ーーとまぁ、ここまでが僕の理想.......。

そして理想と現実はいつも違うものである......。

その定義に乗っ取れば、今回の件の結末をしは予想できるのではないだろうか?

神崎が教室にってきて直ぐのこと。

その狀況は整ってしまった。

「しん君。今回の言い訳を聞いてあげる」

「そうだねー、私も聞いてみたいなー、言い訳」

穂波はしキレながら、嬉野に関しては完全に棒読みで、僕に詰め寄った。

「ふ、二人とも、いつからそんなに仲良くなられたのでしょうか?」

思わず敬語が出てしまうほどの

「そんなことはどうでもいいじゃない。それよりも......"ね"」

「はい、そうです"ね"」

(何だろう、たった一語にこれほどまでの恐怖を込められるのが不思議でたまらない)

が早くなり、汗が流れる。

そんな僕に助け舟を出したのは、この狀況を作り出した元兇、神崎冬夜だった。

元兇ーーそれを説明する為に、話を數十分程巻き戻す。

今からおよそ30分程前のこと僕は神崎とこんな會話をしていた。

『神崎、帰る前に頼みがあるんだがいいか?』

『お、どうした親友。出來ることならなんでも協力するぞ』

『実は.......』

僕は、それまでの経緯について斷片的に説明した。

『そんなの、自分で言えばいいんじゃないか?穂波ちゃんはともかく、紬ちゃんはこの教室に.......あ、いない』

『ともかく、これを見てくれ』

僕は自分の攜帯を見せた。

『充電がない......』

『あちゃー』

額に手を當て、笑い出す神崎。

『というわけで嬉野と穂波は、お前から説明しといてくれないか?』

『それで、どう説明すれば良いんだ?』

『用事が出來たと言っといてくれ』

『了解』

後になってからつくづく思うこととなるのだが、この時の神崎の言葉を信用したことこそが、僕の最大の間違いだった。

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